9話-1(分岐)
※この先は分岐となります。
物語の本筋を追う場合は、第10話へ。
シリウスが去った後、フィアは留め具の外れた装衣を脱ぎ、先程まで装衣のうえに着ていた服を着直す。
毎日侍女たちに着ることも脱ぐことも任せていたそれを、自分で着替える事が出来たのが誇らしかった。
しかし、華奢な彼女には一回りほど大きい新たな服は、体よりも気持ちのほうを不安にさせた。
フィアは寝台に横になり、毛布にくるまる。
その時、部屋にノックの音が響く。
「シリウス?」
思ったよりも早い帰還に、フィアは安堵の息をつき、寝台から身体を起こす。
しかし、そこで違和感を覚えた。
ノックの音が繰り返される。
そればかりか、激しくなるノックの音。
「おーい、鍵を忘れちまったんだよ、あけてくれ〜」
「なんだ寝てんのか?もう朝になってるだろ〜!」
聞き覚えのない男達の声、恐らく部屋を間違った酔っ払い。
そのうち諦めるだろうと、フィアは毛布に包まり、耳を押さえる。
ドンドンとドアを叩き、ガチャガチャとノブを回す音、そしてバキッ、という破壊音。
その扉を守るはずの人は、今、この場にいない。
「お、開いたじゃねえか」
「ひゃはは、さすがボロ宿」
ドタドタと部屋に入りこむ足音。
小さなその部屋では隠れることも出来ずに、フィアはその招かれざる客と目が合う。
「あ、の……部屋、を」
間違っていますよ、と言いたいが声が震える。
一瞬の間。
「お嬢ちゃん、どうしたんだ?俺たちの部屋に入り込んで」
「ああそうだ、泥棒なら捕まえなきゃなぁ」
ニタニタと嗤う男達は、ここが自分達の部屋ではないと、とうに気がついている。
「違い、ます……」
か細い声で否定し、部屋の隅へ後ずさる。
「盗んだものがないか調べさせて貰うぜ」
「ああ、よく確かめねえとなあ」
フィアはその言葉にただ首を振り、否定した。
「違います、それ、に……もうすぐ連れが部屋に戻ってきます……」
その言葉に、男達は手をとめ、
男たちは顔を見合わせ、意味ありげに笑った。
視線が絡みつく。
酒と汗の匂いが、距離を詰めてくる。
助けを呼ぼうとしても、声が出ない。
その瞬間――
視界が恐怖に塗りつぶされた。
そして、鍵の壊された部屋だけが、
虚しくシリウスの帰りを待っていた。
bad end.
連れ去り




