ずっと一緒にいられるのかな?
「ご馳走様でした!」
両手を合わせるリオ。見よう見まねで同じく手を合わせるギーシュ。
2人とも腹が大きく膨らんでいた。
骨や葉っぱを片付けている最中、手伝いながらウトウトし始めるリオ。
「木の実採るの疲れたろ?
昼寝でもしとけ。」
ギーシュは彼女を抱き上げ、木陰にあるつるのハンモックに寝かせてやった。
リオは眠いのを我慢し、ムスッとした顔で彼の手をギュッと握る。
「大丈夫だ。何処にも行かない。
そこで片付けしてるだけだ。」
「……本当?ギーシュ。
何処にも行かない……?」
「ああ。」
ギーシュは彼女の身を切るような眼差しに、唯ならぬ物を感じていた。
(時々、俺から離れるのを凄く嫌がる時があるのは、単に俺に懐いているからなのか、それとも誰かから離れる事に強いトラウマがあるからなのか……。)
やがてリオはこっくりこっくりしているうちに、睡魔に負けて眠りに入っていった。
ギーシュは寝冷えしないよう彼女の腹に植物繊維のタオルをかけ、ハンモックを揺り籠のように揺らしてやった。
安らかな寝顔から、時々うなされ、涙が溢れるのが見える。
(森の近くの荒野を彷徨っていたこの子を保護してから暫く経つが……、この子は何があったかを話してはくれない。
分かっているのは『親はいるが、きっともう会えない』と言っている事。
『地球から無理矢理連れて来られ、貨物トラックに紛れて逃げた』事。
そして、この首に巻いた青いリボンで隠してはいるが、『首に外せない地球製の奴隷首輪がある』事。
察するに、この子は地球の過激派国家が母星から連れて来た奴隷。
厄介ごとの種になるだろうし、最初は軍へ引き渡そうと考えたが、つい流れで世話しちまって今に至る……。聞き分けが良くて、人懐っこいからな。
あとは……俺自身がぬくもりに飢えているからかもしれない。)
***
その日の夜。
ギーシュは火の始末や見回りをしてから、タバコで一服し、寝床に入る。
丸太の簀板の上に乾燥した大きな葉と獣の皮を敷いたベッド。
そこで先に毛布に包まって寝ているリオ。
彼女を起こさないように、彼は彼女の隣で横になった。
すると、毛布の中からモゾモゾと芋虫の挙動で這い寄るリオ。
黙って腕にキュッと縋り付く。
「おいおい、そんなに赤ちゃんなのか?オメエはさ。
そんなに密着したら俺があっちくてね寝れねえだろ。」
「……。」
リオは甘え過ぎは恥ずかしい事だと理解し、照れ臭そうにしながらも、彼から離れない
ギーシュもそれ以上拒否しなかった。
(……この先どうすんだよ?俺。
そんなに痩せた心を、この子を養う事で癒したいのか……?
親友や恋人……戦争で沢山の大切なものを失って自暴自棄になった心を……。)
***
次の日の朝。
リオはギーシュの腕からの居なくなっていた。
「リオ……!?」
ギーシュは少々焦って外に出ようとする。
しかしリオは直ぐに見つかった。
住処の入り口で。
しかも、膝を抱えた状態で仰向けになって寝ていた。
ちなみに便秘やガスでお腹が苦しい時、オナラが出やすいポーズである。
「どういう寝相だ?!
そうはならんだろ!?」
一方彼は自分のある異変に気付く。
腰巻きの紐が外れて、股間がオープン・ザ・ワールドになっていた。異星人にもちゃんと雌雄の証があるようだ。
「えっ!?やだぁん!?
こんなん誰かに見られたら俺お巡りさんに捕まっちゃうし!!
何で外れた……って、アアっっっ?!」
見るとリオの足の指に腰巻きの紐が絡まっていた。
「リオが寝ぼけて紐を引いて、脱げた……?
って!!だからそうはならんだろ?!」
ギーシュは溜息を吐くと、腰巻きを着直し、股間を安全な閉鎖社会にした。
「はぁ……。
毎日退屈しねえな。こりゃ。」
孤独な異星の鬼と、その心を癒す地球人の少女。
鬼は少女を大人になるまで育てるのか?
少女は何故カーネリオスにやって来たのか?
それはまたのお話。
<終>
<おまけ 昔描いたイラスト>
<他サイトでの表紙>