仲良くいただきます
さて、2人は汗を流しながら夢中で串に齧り付く。
外はカリカリサクサク。そのまま噛めば、しつこくないサラリとした脂が舌を包み、次に柔らかい肉の食感が待っている。
間に挟んだ果実も、香りで肉の臭みを消し、酸味によって脂をサラサラにしている。
そして椀のソースを付ければ、よりさっぱりした味になり、森の蒸し暑さをスッと何処かへ流してくれる。
「程良い肉の弾力と脂……。若い雄だったが、良く動き回って身が引き締まってるな。」
ギーシュはギザギザの歯を見せながら貪る。
一方リオは肉が大きいのか、食べにくそうだった。肉が柔らかいので食い千切れはするものの、噛む時に溢れる脂で口や服を汚してしまう。
「ん〜。」
「ああ、肉デカかったか。ちょっと貸してみろ。」
彼は肉から串を抜いてバラすと、食べやすいように小さくダガーで切ってやった。
彼女の口を拭いて、首にエプロン代わりの麻布を巻く。
「ギーシュ、ありがとう!
リオのお母さんもね、よくお肉を小さく食べやすくしてくれたよ。」
「へえ、いい母ちゃんじゃねえか。」
ギーシュは自分が親の真似事をする度に彼女が見せてくれる、素直さと無垢な笑顔が愛おしく思えた。
途中、「あっ」と、リオ。
「そういえば、これ、地球で食べた事ある!」
「あぁん?!な訳ないだろ。地球にバフティースはいね筈だ。」
「えっとね……」と暫く考え、そして叫んだ。
「『酢豚』だ!!これ『酢豚』に似てる!!」
慣れない異星の単語に、反応が遅れるギーシュ。
「『すぶた』?!……って何。」
「酢豚の中でも、パイナップル入ってる酢豚!」
「ぱい、なっぷる?!何ですか……それ?!」
「あ、シャキシャキしてるからパイナップル味のキャベツを使った回鍋肉かな?」
「ホイ……何ぃ?!
リオさん頼むからオジサンの分かる言葉で喋ってくれる?!
兎に角、それらのス……何とかは地球で美味い食い物なんだな?」
「美味しいよ!
ギーシュって凄いね!戦いも、お料理も上手だね!」
リオは飛び切りの笑顔で褒めちぎる。
ソースまで指で取ってしっかり綺麗に食べようとしていた。
無垢な子供に褒められるというのは、人生の先輩に相応しいと認められたようで、なかなか嬉しいものだ。
「なあリオよ。
俺はそんなに凄えか?」
「凄いよ!どんな獲物にも負けないもん!」
手をパチパチして称えるリオ。
「そんなに天才か?」
「うん!とっても物知りで、お利口さんだよ!」
頭をヨシヨシしてくれるリオ。
「そんなに男前か?」
「うん、カッコいいよ!とってもオシャレだよ!」
彼のビーズの髪飾りや骨のアクセサリーを指差す。
ギーシュは幼い少女に自尊心を撫でられ、その心地良さで、顔がうにょんと緩んだ。異星人でもにやけ顔は出来るらしい。
「幾ら何でも、そんなに褒められたら照れるじゃねえか♡
ぬへへへ……♡
あ、そうだ!デザートに滝で冷やした果実で甘ぁいジュースでも搾ってやるか?♪」
彼はリオの前では実にチョロかった。チョロ甘だった。
(※この後、無茶苦茶ジュース搾ってあげた)