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辺獄の羽根編 第十二話

著者:ハトリユツキ 様

企画・原案:mirai(mirama)

「こう言った患者がどうやって死んでいくか、わかるか?」

セバスがウイリアムに尋ねた。ウイリアムは痛み悶える患者から目を離すことが出来なかった。そこにはハリスがいた。真っ赤な顔でストレッチャーの上に寝かせられ、瞳はぼうっと上空を見つめていた。

「肌が黒く、壊死していくんだ。苦しみながら、うめき声とともに」

セバスの手がひどく震えている。

「それなのに、俺たちは少しも助けられない。ただ死んでいくのを眺めていることしかできない……っ」

ウイリアムには、セバスの気持ちが少しは理解ができた。あの日、自分がメアリに対して感じていた感情。虚無感とやり切れなさを抱えて、それでもセバスは今も現場に立っている。逃げた自分が何か口を出せる立場にはないことも理解しているつもりだった。

「……いつから、増えだしたんだ?」

「数ヶ月くらい前からだよ。ぽつぽつと患者が運ばれるようになった。症状は、高熱、倦怠感、嘔吐、身体に膨隆した出血班、リンパ節の腫れ、咳や血痰。だんだんと悪化して、ほとんどが数日で亡くなる。発症したら90%の患者が亡くなっている。そんな患者が毎日毎日増えていくんだ。運ばれてくる人数もどんどん増えている。このままじゃ……うちの医院はもう……」

ぽつり——と頰に何かがあたる感覚。

二人が顔を上げると、空から降ってくる真白い綿のような何かが落ちた。それが雪だと気付いたのは、数秒がたった後だった。セバスが瞳を丸くして、呆然と空を見つめている。

「そんな——今は夏だぞ?」

思えば、今年の気温が異常だった。

温度が激しく下降と上昇を繰り返し、咲き乱れた花がすぐに枯れてしまった。その天気がこの疫病を運んだのだろうか。

「神が……見捨てたのだろうか。我々人間を」

セバスが震えながら胸元の十字架を握り、そう言った。

ウイリアムはぼそりと「神なんていないさ」とこぼす。神がいるのであれば、あの聖母のようなメアリに痛みと苦しみを与えることはしないはずだ。

「セバス先生……! お願いします、急変です!」

看護師が走ってきて、セバスに声をかけると、彼はひどく絶望したその顔を上げて走り出す。その瞳は確かに医者としてのプライドが感じられた。神が見捨てたとしても、それでも彼は医者として前を向き、患者にできる限りのことをするのだ。その先に死を待っているとしても。それに比べて、自分は——いったい。

「ウイリアム先生、戻ってきてくれないだろうか」

セバスが振り返り、ウイリアムの瞳をじっと見つめた。

返事を返すことは——できなかった。自分が白衣を羽織っている姿を想像するだけで身体がひどく震える。

セバスは「すぐじゃなくていい、いつでも歓迎するよ」と無理に頬に笑みを作り、去っていった。


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