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Spirit  作者: まもる
7/36

勉強

光にとって、大きな一件が片付き、抜けかけていた疲れもまた戻って来そうな雰囲気を醸し出していた。

自転車がない以外、いつも通りの日常を送っていた光に、知らない番号から電話がかかってくる。

一方、暗い一室で何やらヒソヒソと話す人影が二つあった。

 薄暗い部屋の中、こそこそと誰かの声が途切れ途切れに聞こえてくる。

 その中に、一人の少年は居た。

 少年が一人で、他に人らしき人は、見当たらない。

 だが、よく見てみると何かに話しかけている。少年のその奥に、薄っすらと白く、軽く透けた体を持った人影が、小さな輝きを見せている。

「あいつは、やべえよ」

 そう小声で発したのは、その謎の人影だった。

「何が?」

 その声に同じように小声で応えたのは、その人影の手前に居た少年だった。

「何がって、お前もわかってんだろ?あいつは、やべえ」

 耳打ちするように、口を手で覆い隠しながら、言う。

「だから、あいつって誰?」

 その人影の言葉に、腕を組みながらほぼ聞き流し気味に聞く。

「あいつだよ!あの……青いやつ!」

 人差し指を立てながら、思い出したように言うが。

「いや、それでわかるやついるかよ……!もっとなんかねぇのか」

「ああ?うーーじゃあ……あ!最近お前が連れてるやつ!」

 それだけ言うと、しばし考えたのち、なぜかそれで伝わったようで、ああ……と納得しながら言った。

「もしかして、光?」

「そう、多分そいつだ」

 と、今度は、人差し指をこちらに向けながら言った。

「光の何がやばいんだよ?確かに少し口は悪いけど……」

「そうそう確かにあいつは生意気——ってちがーーーう!」

「うるっさ……」

 少年は、両耳を軽く塞ぎながら、大声を出した相手に言う。

「そうじゃねぇ」

「じゃあなんだよ」

 わかりづらい説明を聞きながら、さっさと本題に入るよう言う。

「この前お前が、あいつにオイらを貸したろ?」

「うん」

 軽く相づちしながら聞く。

「そん時は、周りの霊気だと思ったんだ。でも違ったんだ」

「ほう?」

「確かに周りの霊気もだが、あいつ自身の霊気が半端じゃなかった……」

「つまり?」

「……あいつがやばいってことなんだよ……」

 その答えに呆れ顔をしながら言った。

「もう帰っていい?」

 と、帰ろうと歩みを進めたが、腕を引っ張られそれは静止させられる。

「っ、なんだよ……」

「最後まで聞け!」

「お前の説明が下手なんだ!」

 そう言って無理矢理にでも帰ろうと、力を込める。

「とりあえずっ……聞けって……」

 それを必死に静止しながら、続ける。

「あいつ……霊に……触れないって……言ってたろ……?それで、思ったんだ……あの時、霊に触れたのは、あいつ自身の霊気が……いつもより、数倍大きくなってたからじゃないかって……」

 一通り話終えたが、まだ葛藤は続く。

「そんなもん……今、気にしたって……どうにも……ならねえーだろ……!それに、あいつはまだ……入ってきたばかりの……新人、だし……『覚醒』だって、まだ先だろうし……それからでも、遅くはねぇーんじゃ、ねぇの……」

 そう言うと、「……それもそうか」と手を離す。ずっと力を入れていたせいで、急に解放された腕から、勢いよく落ちる。

「っ……てぇ……」

 そう言いながら、落ちた床に手をつき、起き上がりながら続ける。

「ほら、こんなんしてないで、はやく行くぞ」

 そう言うと、その人影は、素直に姿を変える。淡く輝くと少しずつ縮み、銃のような形に変形する。

 それを確認すると、少年は銃——ラムを手に取って、腰に差し込んだ。

(にしても、光がねぇ……)

 そう心の中で呟きながら、少年——力声は、部屋を出るために歩みを進めた。

 

 

 授業終わりで、ざわざわと皆の声が飛び交う中、一人の机に集まって話をしている3人組が居た。

「やっっっぱ国語無理ーーー!」

「まあ眠くはなるよね」

「今日のは特にな」

 そう話していたのは、坂本ハジメ、花咲和也、波河光である。

 それぞれ、集まりやすい光の机に体を向け話していた。光の席から見て、ハジメは前の席、和也は右隣の席に位置していた。

「ハジメが国語苦手なのは知ってるけど、まず、家でちゃんと寝てるの?」

 ハジメに向けてそう声をかけたのは、和也である。それにハジメは、元気よく答える。

「もっちろん!寝るのは当然、ご飯もモリモリ食っとります!」

「そう……」

 誇らしげな表情に少し呆れた顔を覗かせながらも和也は答えた。そして、あっ!と思い出したように、光に問いかける。

「寝れてるといえば、光は最近ちゃんと寝れてる?結構疲れ気味だったよね」

 ハジメの話から急にこちらに向けられ、机にうつ伏せになっていた光は「えっ」と軽く声を上げたが、その後ちゃんとした返事を答える。

「まあ、最近は前より寝れるようにはなった……かも」

「そうなんだ、ならよかったよ」

 優しく微笑みながらそう言ってきた。その笑顔は相変わらずのイケメンぶりと言っていいだろう。

「寝れなくなったら、俺も頼れよ!とっておきの方法教えてやるから!」

 そう胸を張って言ったハジメに光は問いかける。

「とっておきの方法?」

 軽く首を傾げながら、聞くとハジメは答えた。

「ああ!俺特製、ちょー眠れる爆寝うたを伝授してしんぜよう!」

「え、なにそれ……」

 名前からして、あまり寝れなさそう、むしろ目が覚めそうな感じだった。

「なんか逆に目が覚めそうな名前だね」

 光の心の中をそのまま和也が言った。

「いや、ほんとに寝れるって!いいか?まず——」

 とハジメが歌い出そうとすると。

 キーンコーンカーンコーン。

 授業開始の合図である鐘の音が響く。

「ああ!今からってとこで!」

「また今度だな」

「だね」

 そう言って、話を切り上げ、それぞれ自分の机に向き直っていった。

 帰りのホームルームを終え、あっという間の放課後。帰り支度を済ませ、それぞれに向かう。帰り、部活、委員会。その他など、それぞれの役割に向かって歩みを進める。

 光は、部活には所属してはいないし、委員会もそこまで忙しくない。もちろん帰りである。

 この後、特に用事もないはず。まっすぐ帰路を歩き、家に向かう。

(あー……マジで自転車……)

 なんだか、ずっと歩いてばっかで慣れてはきたが、こうして何も考えることなくひたすら歩いていると、自分の自転車が恋しくなる。思い出したくもないことを考えながら、光は家に向かって着実に歩みを進めていった。

 家に帰ると、スイッチをカチッと押す。すると、真っ暗な部屋に明かりが灯る。

 手洗いを済ませると、やるべきことをテキパキやっていく。洗濯、軽い掃除、食事の準備など、家に誰かいるわけではないので、一人でコツコツこなしていく。

 食事は作り置きしてある軽いおかずに、白米と簡単なものである。

 いつものように、テレビをつけ、特に見るものがあるわけではないが、目を通す。

 机にある食事を口に運びながら、見ていると、あるニュースが目に留まる。

『数ヶ月前に起こった女子中学生が、事故死した件について——』

 そのニュースに何か思い入れがあるわけではないが、何故か自然と目がいった。

『——事故死と見られていましたが、殺人の可能性があることが明らかになりました」

 なんとそれは、事故死ではなかったらしい。

「うへー……なんでそんなことすんだろ……やったっていいことないのに……」

 などと口にしていると、構わずテレビは続ける。

「——それにより、疑いの可能性のあるとして、被害者の同級生である、女子中学生の身柄を確保しました——」

 そう言って、一瞬だけ、ちらっと顔が見えた気がした。その顔を見て、光は思った。

(あれ?なんか見覚えあるような……?)

 なんと、確保された少女に見覚えがある気がしたのだ。しばし、箸を止め考えたが、深くは考えず。

(まっ、気のせいか……)

 と、無理矢理完結させた。それに、犯罪の疑いがかかってる人と知り合いだったとわかったら、気持ち的にあれだろうと思った。

 その後いくつかのニュースを見たが、思ったことは、なんか危ないことが多いな。だった。

 食事を済ませると、食器を洗い、お風呂に入り、歯磨きし。その他諸々をスラスラとこなしていった。

 そして後は、布団に入るだけ。すると——。

 ヴゥー、ヴゥー。

 布団の横に置いてある携帯が揺れる。こんな時間に誰からと思って見ると、電話だった。

(知らない番号……)

 こんな時間だからか、少々不気味なので無視しようと、ヴゥーヴゥーうるさい携帯の横で、枕に頭を埋めた。

 やがて留守番電話に切り替わると、とてつもない声が聞こえた。

『こーーーーーーう!生きてるのかーーー⁉︎』

 携帯のすぐ横にいた光は、びっくりして、思わず起き上がる。

 再び画面を見るが、やはり知らない番号。でも電話越しとはいえ、謎に聞き覚えがあるような声。確信が持てるまで様子を見ていると。

『前ので力尽きたのか⁉︎びょ、病院っ⁉︎病院い——」

 そう言い終わる前に、光は留守番電話から通話に切り替え、声を上げる。

「うるっせぇーーな!なんなんだよ!早く要件を言え!」

 と、声を荒げた。それを聞いた相手は。

『え、生きてる?生きてんの?よかった——』

「早くしろ!」

 本当にどうでもいいので、早くと急かす。

『まあまあそんなに急ぐなって』

「お前がかけてきたんだろ……!」

 そのような会話を続けながら、相手は言ってきた。

『んじゃまぁ、言うけど。光、明日暇?』

 そう言われて、はぁーとため息をつくと、当然のことながら言った。

「暇なわけねーだろ。学校ある」

 そう言って、引き下がると思いきや、もう一声かけてくる。

『んじゃ、学校終わった後はなんかある?』

「……なんでそんなこと聞く?」

 なんだか片っ端から聞いてきそうな雰囲気に、疑問をぶつける。

『まあまあ』

 そうとしか返ってこないことに、少し不満を覚えたが答えた。

「…………特に、ないけど……」

『ふーん』

 光の答えに、そんなふうに答えた相手は、続けた。

『そっか、ありがとう!じゃあ!』

「おいちょ——」

 プープー。

 そうやって一方的に切られてしまった。

「はあー……なんなんだよ……あいつは」

 と、額を押さえながらため息をつくと、チラリと携帯を見たのち、枕に顔を埋めた。

 深く考えるだけ無駄だと思い、頭の片隅に置いておくことにして、眠りについた。

 

 ——次の日——。

 光は、昨日のことを片隅に置きながら、学校へ行った。

 少々気がかりになりながらも一日を過ごし、無事に学校を終えた。

 いつも通り、家へ帰るべく歩みを進めた。廊下を歩き、下駄箱から靴を取り、校門へと歩く。

(そういえば、もうすぐ期末か……)

 などと、軽く頭で考えながら校門を出ると、自然と足が止まった。なぜなら、軽く流した横目で見たのは、ありえない光景を映していたからだ。

 改めて、後ろを振り向き、しっかりとその光景を映すと、真っ先に思ったのは。

(なんかいる……⁉︎)

 だった。やがて、こちらに気づいたようで、人がこちらに向かってくる。

「光!」

 その名を呼んだのは、まさしく力声だった。

「お疲れー、今帰り?」

 と当たり前のように聞いてくる。

「……え、なんでいんの……?」

 力声の質問は、耳に入って来ず、単純な疑問をぶつける。

「え、なんでって、向かいに来た」

「なぜに⁉︎」

 力声の返答に思わず声が出る。

「え、昨日言ってたよな?学校の後は暇だって……」

「はぁ?」

 昨日といえば、確かに言った。電話越しだったが、あれは力声だったのだ。だが。

「……いや確かに言ったけども、わざわざ高校にまでくるか?ていうか俺の高校言ったっけ?」

「まあまあそこは気にせず」

「なんでだよ」

 そう軽く流されて、光は、本題に入る。

「ていうか、なんで向かいに来たわけ?頼んでねーよ?」

「いや俺も頼まれてないし。俺は、用事があって来たの」

「用事?」

 そう言う力声に、首を傾げる。

「そ、だから——」

 そう言うと、家から反対方向の道を指差しながら言った。

「いつもんとこ、行こ」

「はぁ……」

 言われた言葉に、そんな短い言葉しか口にできない光であった。

 

 光が連れて行かれたのは、一つのカフェであった。『TEAティーMainメイン』確かに、光たちにとっては、いつもの場所であるだろう。

 店内は、相変わらず落ち着いた雰囲気。結局、力声に連れられる以外行ったことないなと考えながら進んだ。

 そして、いつもと同じな気がする席に腰掛ける。そのタイミングで、水も机に運ばれる。軽く会釈すると、乾いた喉を潤すため、口に運んだ。すると、それと同時に、力声が口を開いた。

「というわけで……勉強しよっか」

 と、ニコリと笑いながら言った。

「…………」

 何をどうしたらそうなるのか、言葉の意味が分からず、沈黙の末出た答えは——

「…………なんで?」

 そりゃそうだ。自身もそう思う。というか、そうとしか言えまい。

「まあまあ」

「まあまあて、お前それしか言わないじゃん」

 思わず、思ってたことを突っ込む。

「いや、光にいろいろ知ってもらうと……」

「だから何がだよ……」

「俺たちの今後について」

「いや、どこの新婚夫婦だよ」

 と、半端冗談気味の返答に、光は呆れながら突っ込む。

「いやいや、真面目な話だって」

 と、どこかのおばちゃんが世間話でもする時のような具合に言う。

「今まで、お前と話すことの八割は、だいたいどうでもいい話だよ」

「いやそれもうほとんどじゃん!」

 力声が悲しげな声を上げるが、光は、お構いなしに話す。

「まあ、この話は置いといて」

「いや、俺が置いとけない」

 力声は相変わらず悲しそうに返した。

「で?わざわざ連れて来て、何を話したいわけ?」

 光は、はぁーとため息をつきながら、疲れ気味に言った。

「だから言ったじゃん、今後についてって」

「それじゃあわかんないから聞いてんの」

 いつまでも続くこの状況を脱するために、光が聞くと、力声は少し言いづらそうに口を開いた。

「あー、うーん。えっとさ……俺、この前結構あれだったじゃん……?」

「?あれって何、あれって……」

 数秒の気まずい空気の末に、力声は口を開く。

「この前の、一件……『西輪にしわ 風花ふうか』さんの件があったじゃないですか……」

「……ああ……」

 その件については、よく覚えている。最近あったのもあるが、光自身にとっても、印象深いことだったのだ。知り合って間もなかったが、あの数時間でいろんな姿を知れた気がする。だが、事件は起こる。まさか風花があんなことになってしまうとは。

「あの時はなんとかなったけど、ああやって突然何か起こることもあること、光の身の安全を第一に考えるべきだった。あの時、俺一人として考えてたと思う。まだ慣れない時期で、危険な目に遭わせてごめん……」

 急に真面目な話をして来たかと思えば、そう言って頭を下げた。なんとも力声らしくないというか、真面目に言ってるんだろうけど、いつもの姿を考えると、なんだか別人のようで、逆に気持ちが落ち着かない。

「…………」

 そんな姿に一瞬光は呆然としたが、すぐに口を開いた。

「……はぁー……急に何を言うかと思えば、そんなことか……」

 謝ってくれたのに申し訳ないが、光にとっては、大したことには思えなかった。

「そんなことってなぁ……!」

「それに、力声が勝手なことくらい知ってるし。まあ……ちょっと考えてほしいところもあるけど……。それに……俺自身、それくらい承知で決めたことだ。力声だって、そんなことで毎回謝ってちゃキリないだろ」

「ぐっ…………」

 言い返したいが言い返せない顔をしているとみた。いつも振り回されている光としては、ちょっと楽しい。すると——

「——ご注文はお決まりですか?」

 と力声でも光でもない、明らかに女性の声が横から聞こえてくる。ふいに横を見ると、そこには、店員と思われる女性が居た。どうやらずっと注文を済ませていなかったので聞きに来たようだ。

 すると力声がしばし考えたのち、声を上げた。

「俺はまだ大丈夫です」

 そう言った力声に続いて、光も店員に向かって声をかける。

「えっと、俺もまだ決まってないんで……」

「あ、そうですか……。ではお決まりになったらお呼びください」

 そう言って、ぺこりと頭を下げると、光たちの席から離れていった。

 そういえばここはお店だったことを改めて思い出す。店員をきっかけにその話はそこで区切りをつけ、改めて初心に帰る。

「んで、勉強って何?」

 いつのまにか忘れ去られていたことを光は改めて聞いた。

「そう、そこだよ!俺大事なとこを完全に忘れててさ」

 言っていることがわからぬまま話を聞く。

「実は、光に仕事内容とか霊への対処の仕方とか、肝心なこと全く教えてなかったから、言おうと思って」

(え、今更……⁉︎)

 と心の中で突っ込んだ。

「あーだから勉強……」

 やっと今日のモヤモヤが整理されて、スッキリした光の頭で思った。

「それなら最初からそう言えよ!」

 すごいいろんな話を間に盛り込まれたが、それならそうと言って欲しかった。

「言ったじゃん!最初に!俺たちの今後のことだって!一応俺たちの先にも関わることだろ⁉︎」

「わかるかそんなもん!」

 といつものような口喧嘩が勃発し、数分で少しは落ち着いたような二人は口を開く。

「ほんっとお前は言葉が足りん……」

 両腕を組み、そっぽを向いた状態で呆れた具合に光は言った。

「そっちがちゃんと聞かないからだろ……」

 とぶつぶつ文句を言っていると——

「お前らは本当に仲がいいんだな」

 とどこからか声が聞こえて来た。すると、向こうから誰かが歩いてくる。

「あ、あなたは……」

 と光が声を上げると、軽く挨拶を交わした。

「やぁ、久しぶり、かな?光君。改めておめでとうと言っておこう」

 そう言って、ニコリと笑みを見せたのは、『萩待晶子』光と同じくSpiritに所属する隊員である。いつもの寒そうな服装かと思いきや、今は、相変わらず黒い服だが、長袖に変わっていて、エプロンを羽織っている。ダボッとしたズボンは、スッキリとした長ズボンに代わり、スラリとした足なのだとわかる。

「あ、お久しぶりです……。えっと……」

「晶子で構わない」

 呼び方に困っているのを察したのか、そう言ってきた。

「じゃあ……その、晶子さん……」

 あまり他人と関わるのを得意とは言えない光は、このような女性の名前を呼ぶのに、少し気恥ずかしさを感じる。

「あれ?今日シフトの日だっけ?」

 そう声を発したのは、力声だった。

「いや、今日はたまたまヘルプを頼まれてしまってね。この時間帯は子供が帰る時間だろうし、ついでだよ」

「ふーん」

「というか、力声はもう少し慎みを持て。仮にも先輩だぞ」

 と少々呆れ気味に言う晶子に対し、力声は気だるげに言った。

「うちはそういうのないでしょ」

 などと話している。この二人の話し方からして、結構親しいのだろうか。というか——

「え、晶子さん、お店手伝ったりするんですか?」

 決して働かなそうとかそういうのではないが、なんだかこういうお店で働いてるのが意外だった。

「ああ、まあ大したことはしてないけどね。意外かい?」

 と図星を突かれてビクッとしたが、すぐに言葉を返す。

「は、はい……」

 弱々しく言う光に、笑いながら晶子は言う。

「はははは、素直だな君は。どこかの誰かとは大違いだ」

 と言って力声の方に視線を向ける。それに気づいた力声は、言った。

「は?俺だって言いたいの?」

 ギロっと晶子を見つめて言うと、晶子は、それに答える。

「他に誰がいるんだい?」

 と言ったのち、改めて光に向き直ると言った。目の前で暴れそうな力声は置いといて。

「まあ、光君も加入したからには、いつかここの手伝いを頼まれる時が来るだろうから、その時はよろしく」

「あ、はい」

 そう言って、一通りの会話を終了させると、改めて晶子が口を開く。

「と、そうだ光君。君に少しやってもらいたいことがあるんだ、いいかな?」

 話題が急に変わり、さらにはこの人からの頼まれごと。少々緊張が走る。

「な、なんでしょう……」

 少し声にもその緊張が伝わる。

「君に一つ、仕事を頼みたい」

「しごと……」

 緊張の解けぬ状態でそのまま聞く。

「——君に、ある霊の捕獲を頼みたいんだ」

 晶子の口から出た言葉に、光は一言漏らした。

「……え」

更新が遅れて申し訳ありません!

そして、また中途半端なところで終わらせて、すみません!

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