始まり
暗い暗い部屋の中。
ただ聞こえるのは何かに耐えるような声と、もう一人の残酷な声。
ほぼ真っ暗と言っていいほどの部屋の中。
ゆっくりと暗闇の中を動き回る光があった。
その光の正体は、真っ白な服を纏った人間だった。
「あーあ、これも失敗か」
まるで慣れているかのような声でそう口にする。
そして、真っ白な人間の前に、ぼんやりと輝く光がもう一つ。
だが、だんだんとその光は、黒く染まり、光という光は、真っ白な人間のみとなった。
ジャラジャラと鳴る金属音。まるで、誰かがその場から逃れようと必死にもがいているような、必死な音だ。
「おっお!まだいける?」
少し期待を含ませた声で、黒く染まった塊に近づいた。
「う……ぐが、が」
やっとの思いで出た声は、そんな声で、言葉にはならない。
「頑張れ頑張れ!いけるいける!」
煽りとも取れるような、頭に来るような声援に、応えられるわけもなく、黒い塊を繋げていた鎖が、バキバキとひび割れ始める。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」
パキンっ!
完全に鎖が壊れ、目の前にいた真っ白な人間に襲い掛かる。
「あれま、残念……」
そんな声を漏らすと、後ろに軽く飛び、黒い塊の攻撃をひょいと避ける。
ひたすら突進し続ける黒い塊に、真っ白な人間は、黒い塊に向かって前に手をかざすと、ジャラジャラッとした金属音が鳴り響く。
すると黒い塊に向かって一直線に、左右二箇所から鎖が塊の手を巻きつけた。
吊られるような体勢になった塊は、また壊そうと暴れ回る。
「うがっ!がっがぁぁぁ!」
まるで理性を失った獣のような行動に、人間は再び手を軽く振ると、もう一本の鎖が出現する。
「あぁぁぁぁ——ぐぅぅぅぅっ!」
うるさい塊の口を塞ぐように鎖を突っ込み黙らせる。
すると、人間は塊に歩み寄る。観察するように塊の周りをうろうろ一周する。
「今回は何がダメだったのかな。やっぱりもうちょっとキツくすべきだったかな……でもあんまりいじめすぎると、悪霊化以前に壊れちゃうからなぁ〜」
むぅーと唇を尖らせながら、見ていると、塊は先程よりも強く抵抗を示した。
顔を思い切り振り、噛みつこうと口を開く。
だが、それは口に入った鎖をより深くするだけだった。
それでも許すまいと、ぐいぐいと少しずつ距離を詰めてくる。
それを見ていた人間は目を細くして言う。
「ふーん……襲う気力はあるわけだ」
そう呟くと、自ら塊に手を近づけ、パチンっと指を鳴らした。
すると、繋いでいた鎖が粉が舞うように消え、塊は勢いよく床に倒れ込んだ。
起き上がる隙を与えず、倒れ込んだ体を人間は足で踏んで起きるのを阻止した。
もちろん暴れ回るが、ぐりぐりと足の力を強くして、その体にめり込んでいく。
「よし、ならチャンスやろう」
人間は声色を明るくして言う。今の行動は全く明るいものではないが、それを感じさせないほどの声だった。
「その状態でどれだけのことができるか、君の力を見たくなった」
いまだに抵抗を示している塊——霊は歯をギリギリと鳴らしながら上を睨んでいた。
「なぁに、ボクが欲しいのは結果だよ。ボクに利用されるか、それとも消えるか」
真っ白な人間は再び手を軽く振ると、鎖出した。
先程とは違い、一本だけだ。霊の片腕だけに巻きつけ、ギリギリ地面に足がつかない高さに吊り上げた。
「まあ、なんとなく結果はわかるけど……」
ポツリとその場にその言葉だけを残し、軽い足音を鳴らしながら、暗闇に消えた。
いつの間にか数ヶ月経ってましたね、遅くなり申し訳ないです。今回はまた新しい話の始まりなので、めちゃ短いです。主人公出てきません、すみません。
できるだけ続いている話は間を空けないように頑張りますが、また空く可能性があることを頭の片隅に入れておいてもらえると助かります。今回のお話もよろしくお願いします。




