不気味な解決
突然の大きな音。そして目の前で破壊された壁。
それらを行ったのは、二人もよく知る人物、萩待晶子だった。
突如この場に現れたのは、我らがSpirit隊員、萩待晶子だった。
平然と笑みを浮かべる晶子に、力声は声を上げた。
「なんでお前がここに?!ていうか、ここお前の案件じゃないよな?」
光も同じことを聞こうとして、口を開いたが、力声が言ってくれたので口を閉じた。
すると晶子は、白い棒を持ってない方の手を見せた。
「ああ、それは、これだよ」
その手には、白いビニール袋が持たれていた。中にはいろいろ入ってるらしく、どうやら買い物か何かの帰りのようだった。
「爆大から買い出しを頼まれてしまってね。全く困ったものだよ」
困った顔をしながら晶子は爆大との会話を思い出しながら言った。
あれは、数時間前。
『お疲れ様でした!』
隊員からの言葉とともに、自動ドアから部屋を出た。
そこで休憩に入った晶子だったが、そこで運悪く爆大に見つかってしまった。
『ん?今、終わったのか?』
前を通りかかった爆大こと爆大飛翔がそう問いかけてきた。
『ああ、意外と早く片付いたからな』
そう答えると、ふーんと声を漏らして、その後、あっと声を上げた。
『なあ、ならちょっと、おつかいを頼まれてくれねーか?』
『おつかい?』
『ああ。今お前の武器の修理してんだけど、部品が足りなくて、持ち手と刃の部分が接合できねーんだ』
困ったように頭をかいて、そう説明する。
『なるほど……それは困ったね……』
ふうむと顎に手を当てて考える。
爆大はパーンと両手を叩き合わせると、晶子に頼んだ。
『頼む!ちょっと遠いんだけど、行ってきてくれねーか?その部品、そこの店しか置いてねーから』
そう頼み込んできた。確かに今日の分の仕事は終えたが、ここを抜けて、いざという時に対応できなくても困る。
考えに葛藤していると、爆大はさらに追い討ちをかける。
『俺、まだやることあって、他の隊員の分もあと何個かあるから、手が回らねーんだ。だから頼む!『晶子』の部品だけだから!』
と、やたらと晶子を強調してきて、他の隊員にも影響が出ると言われれば、行くしかあるまい。
「よくわかったな」
力声かそう言うと、ああ、と思い出しながら答えた。
「いやーね?買い出し帰りに前通ったら、ものすごく嫌な霊気が溢れてるなぁと寄ってみたんだが、様子を見ようと思ったら、ドアが開かなくてね。それで仕方なく、少々手荒な方法で中に入ったわけだが、中もややこしいことになってたもんで、手近なもので、対応させてもらったわけさ」
ご丁寧に説明し終えると、晶子は床に目を向けた。
「さて、話は後にして、まずはこの霊だ。早く入れなければ」
入れるというのは、いつもの瓶のことだろう。
その言葉を聞いて、光はそれを取り出した。
「はい!ここに」
そう言ってフタを外すと、少々赤みが強いオレンジ色の魂は、ヒューと静かに中に吸い込まれていった。
フタをしっかり閉めて、いつものように専用のポケットに納めた。
そして晶子はパンッと手を叩くと言った。
「よし!これでこの案件は終了だ。私は他に怪しい部分がないか調べてから行くから、先に外に出ていてくれ」
「俺も手伝うぞ」
力声がそう名乗りをあげたが、晶子は首を横に振った。
「いや、ここは思っていたよりも空気が悪い。私よりも長い間ここにいた二人は、できるだけ早く外に出ておいた方がいい」
そう言う晶子に、二人は大人しく外へ出た。
「早くしろよー」
力声のその声と共に扉はパタンと閉まった。
「さて……」
晶子は目を細めて、辺りを見回した。
「この嫌な雰囲気の出どころは、一体どこか……」
そう言いながら、横に、上に、下にと見回すと、何かを見つける。
さらさらと粉になり、散りかけている、黒い何かがあった。
しゃがんでそれを見てみるとそれはあるものの形に似ている。
(鎖……?)
まだ手に持っていた棒を握りしめると、大きく上に振って、突き刺すように鎖に向かって振り下ろした。
カーンッ!
そんな音を立てた後、サッと棒を床から離した。だが——
(壊れてない……だと……?)
確かに当てたはずの鎖は、先程と全く変わらぬ姿だった。
さらさらと粉のようになっていっているが、それは見つけた時からそうだ。
晶子は携帯を取り出して、素早く写真を撮った。
そしてそれをすぐにしまうと、ゆっくりと手を近づけて、鎖を手に持ってみた。
なんの変哲もない、ただの鎖。
ただ一つ、強い霊気を纏っていること以外は。
(ここは先程、霊がいた場所か)
畳も床を指先で撫でるが、床に何か細工がしてあるわけでもなさそうだ。
(ではこれは、霊がつけていたのか?なんでそんなこと……)
すると、いつの間にかほとんど消えかけていた鎖が、完全に実体を失った。
晶子は、手から消えていく感覚の不気味さを感じながら、立ち上がった。
少しずつ進めていくので、わからない部分があれば、みなさんも少しずつ理解していってくださると嬉しいです。今後ともよろしくお願いします!