二十一号室に住まう霊《もの》
決着がついたかのように思えたが、しっかりと立っている姿を目の当たりにした光と力声。
それでも少しは弱っているかと思われたが、二人は追い込まれていく。
「嘘……だろ」
「あいつ……」
力声がぽつりと呟いた言葉に続くように、光も口から溢れた。
霊がまだ動いている。それも確かに驚いたことだ。
だが、もう一つ。
(刺さってんじゃねーか)
二人は確かにこの目に映していた。
(壁に……さっき俺が撃ったのが、ぐっさり!)
確かに避けきれない。そのはずだ。
実際、霊の体には数本刺さっている。
もちろん、壁にも。
だが、壁を壊せば消えはしないが、意識を失う。
それに、壁は確かに魂を守るものだが、それほど頑丈ではない。
あれほどの威力があったものが、刺さるだけで壊しきれないなんて。
実際、刺さった部分からひび割れてきている。もうひと押しといったところだろう。
「しぶといな……どんだけ未練を残してやがる!」
煙がほとんど消えて、姿が完全に見えるようになった。
もう手間取ることはない。
銃なんてなまぬるいこと考えず、最初からこれにすればよかった。
力声は腰につけたホルダーからナイフを取り出す。
右手にナイフを持ち替えて銃を左手に収めた。
光も力声と同時に走り出す。
「うぅッ!ぐぅッ……!」
霊はギリギリと歯を鳴らしながらこちらに迫る。
光も牽制でギリギリの位置に撃つも、怯む様子はない。
力声は後ろに回り込み、壁に向かって横に切り込んだ。すると——
(消えた?)
前にいたはずの霊が、ナイフで切り込んだ裂け目から、まるで先程の煙のように消えた。
すると後ろから強い殺気を感じる。
素早く後ろを向いて、同時にナイフを振った。
すると、今度は避けられることはなかった。なかったが、想定外のことが起こった。
力声の手をがしりと掴んだのだ。
「!」
そして霊が上に乗る形で、押し倒されるように、力声の背中は床をついた。
霊は全身の力を力声に注ぐ。
ナイフの刃先が力声の喉元を捉える。
「ぐっ……!」
思った以上に力が強い。
ギンッ!と見開かれた目は、不気味なほど黒く、色を失っていた。
光も銃を構えたが、近くにいる力声の頭に当たる可能性があり撃てない。
なら、壁をぶっ叩けば。
ふとそんな考えがよぎった光は、自力で壊そうと前に出た。が、その時だった。
ドカァァァァンッ!
「「!」」
ものすごい音とともに、何かがぶっ飛んできた。
すると、ダダダダダッとあのギシギシした床だということを感じさせないほどの足音が鳴り響く。
誰か入ってきた?
その誰かはすぐに姿を現した。
シュッ!
と力声の顔スレスレに何か通ったと思ったら——
バリンッ!
いつもと勢いの違う音を立てて、目の前で壁が破壊された。
一体何がと、横目で見ると、白い棒らしきものからガラス片のようなものが飛び散っている。
どうやらあれが壁を破壊した正体のようだ。
勝手に棒が動くはずもない。なら誰かがこの棒を振るったことになる。
ゆっくり上を見上げると、そこには二人もよく知る人物がそこにいた。
黒いタンクトップにダボッとしたズボン、この服装の組み合わせ。何度も見たことがある。
この人物は——
「晶子?!」
「晶子さん?!」
二人に名を呼ばれた人物。『萩待晶子』は棒をサッと振るってその棒を肩に乗せた。
どこかの海賊にいそうな雰囲気を醸し出す晶子は、フッと笑った。
「相変わらず仲がいいな、お前らは」
なんかいろいろごっちゃになってきている自分がいます。変なとこがあれば、スルーか指摘していただいても構いません。直せるよう努力します!