表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Spirit  作者: まもる
31/38

返事《こたえ》を聞かせて

光が学校の校門から出ると、なぜかお馴染みなってきた力声の待ち伏せが待ち構えていた。

何かしらの用があることが察せられるが、それはとあるお返事が来たとのことだった。

 仕事帰り。今日は特に疲れてしまったので、風呂はサッとシャワーで済ませ、ご飯も、買い込んでおいたインスタントで済ませた。

 ペラペラな布団に身を沈める。

 すぐに寝入ってしまったので、この日のことは、ほぼ何も覚えていないに等しい。

 だが、眠りに入る直前、スッと体が軽くなる感覚があった。まるで、何かが抜けていったような、そんな感覚が。

 ああ、そうか。これは——

 

 ざわざわと一斉に、校門に向かって多くの生徒たちが歩く。

 その中に一人、波河光はゆったりと歩いていた。人を避けながら、ポケットに手を入れて、携帯を抜こうと腕を持ち上げたところで、ピタッと足を止めた。

 校門をくぐってすぐ横に目を向けると、そこには見覚えありまくりの人物が立っていた。

 抜きかけた携帯をスッと戻すと、うんざりしたような顔をして、その人物の横顔に声をかけた。

「はぁ……いい加減連絡することを覚えろよ……力声りせ

 その人物の名を呼ぶと、その声でこちらを向いた力声が「おお」と声を上げた。

「お疲れさん」

 いつも通りの明るい口調でそう言ってくる。

「お疲れさん、じゃねーよ。お前もうここの常連じゃねーか。生徒でもないのに……」

 やれやれと言った様子で力声に言う。

 そんな光の様子を見て、少々考えるような仕草をすると、力声が口を開く。

「……生徒ならいいのか?」

 そんな恐ろしい事を口にするので、すぐさま制止させる。

「やめてくれ。それだけはマジで……」

 額に手を当てながら、手を前にして力声を止める。

 意外と真面目に言ってきたので、余計恐ろしい。というか、力声ならやりかねない感じがあるので、本人の口から聞くだけで寒気がする。

「なんで?」

 きょとんとした反応をして首を傾げる力声。

「なんでもだよ」

 曖昧に話を切り上げ、別の話題に変えた。

「それより、ここに来たってことは、俺に用だろ?どうした」

「え?ああ、そうだった……」

 力声は考えていたことを一旦切り替えて、本題へ戻る。

「お返事、来たぞ」

「返事?」

 当然首を傾げると、光は数秒でそれがなんなのか察した。

「……ああ!って……もう来たのか!?まだ三日くらいだぞ?」

 予想よりも早かったので、少々驚いた。

「まあ、時間がないってこともあるんじゃないか?そもそも、あれを言った時点で、答えはなんとなくまとまってたっぽいし」

 力声は驚いた光を前にして言った。

 はあ……と落ち着いたように息を吐いて、光は口を開いた。

「それで……どうするんだ?あの霊は何もやってないし、憑いてた人も嫌々って感じでもなかったし……」

「ああ、それは、ちゃんと居るべき場所へ行かせるよ」

「居るべき場所?」

 光がそう呟くと、力声は向こうを指差して言った。

「とにかく、行くぞ!」

「行くってどこ」

 そう質問したが、力声はずんずんと前へ進むだけだった。

 

 力声に手を引かれるがまま、着いたのは、小島の家……ではなく、そこから少し距離を置いたスーパーの近くだった。相手が指定した場所らしい。

 人通りが多いので、少し迷ったが、その近くの空き倉庫でならと、承諾した。

 そこへ着くと、もう相手は到着していた。

 淡いオレンジの光を放ち、薄ぼんやりと人影が浮かぶ。

 力声はその姿を見ると、少し歩調を速めて言った。

「すまん、待たせたか?」

 目の前の人影は静かに首を振った。

「いや、そんな待っとらんで。時間ぴったりやわ」

 明るく聞こえるが、内心はそうではないことが、聞かなくてもわかる。

「いいのか?本当に」

 力声がそう聞くと、笑って答える。

「何言うてんのーそっちがそうさせたんやで?」

「まあ、そうだけど」

「認めるんかいなー」

 楽しそうに笑顔を浮かべた後、はぁーと息を吐いた。

「正直言うと、まだまだここにいたい……せやけど、おいのわがままであいつに迷惑かけたない……どっちを取っても、おいにとって悪いことばっかしやねん……」

 今にも泣きそうな顔を必死に抑える。熱くなる目に力を入れて、拳に力を入れて……少しでも気を抜いたら全部崩れてしまいそうだ。

「……もう死んだ命や言うのに、いつまでダラダラしとんのやな……あんなに楽しかったんは、久々で、盛り上がってしもたんやろな……」

 二人はただ無言で聞くしかできなかった。

 今何か言ったところで、何を言われるのか、大体想像ができたから。

「長々とすまんな!さ、おまえさん方のすきにせい!」

 両手をバッと広げてニカっと笑った。

 力声は俯いていた顔を上げて言った。

「最後に……一つ聞きたい」

「なんや?」

「人間に取り憑く以外で、何か……したいこととか、ないのか?」

 これは人間に取り憑いていたということの問題。それ以外、犯罪や悪事を働かなければ、うちではできる限りのサポートをして、願いを叶えてやれる。

 何か心残りがありそうなのは、光から見てもわかる。

 それを見越しての質問だったのだろう。

「したいことか……」

 眉間にしわを寄せて考えている。十秒ほど経った後、ようやく口を開く。

「したいことは…………ないで」

「!ない、のか……?」

「せや!やることは、やらせてもろたしな。悔いをはない!」

 腰手を当てて自信満々に言ってくる。

「そ、か……」

 ニコニコの笑顔を向けられ、力声は呆然とした。

「仕切り直しや!なんでもしぃ」

 また両手を勢いよく広げる。

「どうした?やらへんのかいな……」

「えっと——」

 バンッ!

 重い扉が勢いよく開いた。その音が倉庫中に響き、誰しもを注目させた。

「——置多田おいただ!」

最近中々出せなくてすみません!

ここをお借りして申し訳ありませんが、もう一つのFake Real Gameという作品の更新も遅れており本当に申し訳ありません!早ければ今週、遅ければ来週になるかも知れません。そちらを読んでくださってら方はご理解いただきたく、お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ