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Spirit  作者: まもる
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忠告

小島は、突然現れた謎の存在に、最初こそ困惑したものの、順調に生活をしていた。

そして、勝手に配信が行われていたのは、自分がやったからだ。と謎の存在は言う。

 謎の男?の存在を知ってから、オレの生活は、なんだか賑やかになったと思える。急に話し相手ができたからだろうか。

 食べるのはオレなのに、食事をリクエストされたり、洗濯の干し方にいちゃもんをつけられたりもした。

 そんな中、一つ明らかになったことがあった。

 前に不思議に思っていた、謎の勝手に配信がされてる事件。その正体は、置多田であったということが明らかになった。

(絶対に怒らへん?)

 今までにないほどの弱々しい声で話してくる。

『怒ることをしたのか?』

(したかもしれんし、してないかもしれん……)

『どっちだよ』

 置多田おすすめのポテトチップスの封を開けながら言った。

『はあ、別に怒らないから言いよ。そんな大層なことじゃなければ』

(大層なことかもしれへんねん!)

『とりあえず話してみ。聞くだけ聞くから』

 冷蔵庫から水のペットボトルを出すと、ポテトチップスが置かれている机に戻る。

(お、おい……)

 そう話始める置多田の言葉に静かに耳を傾ける。

(ショーじのチャンネル使つこて、配信してんねん)

『…………は?』

 袋へと伸ばした手を一旦止めてそれだけ口に出た。

(その、勝手にっていうのは悪いことだってわかっとる。でも一生懸命なお前さんを見てたら、やりたくなって……それで……)

『もういいよ』

(!)

 小島はしばらく間を置いてから再び口を開いた。

『そっかそっか。なるほど、これで繋がった。いやーずっと気になってたんだよね、謎の配信事件』

(ほ、本当にすまん……!)

 申し訳なさそうに言う置多田に、小島は言った。

『別にいいよ、やりたかったんだろ?それに、そのおかげで、実際再生回数は上がってるわけだし、よくない?』

 ようやく一枚手に取り、口に運ぶと「うわっ、生姜つよっ……」と渋い顔をする。

(怒らへんのか?)

『だから、怒る理由なくない?』

(か、勝手やってたんやで!?怒るやろ普通)

『なら、オレが普通じゃないってことで』

 頑張って一枚食べ切ると「はいこの話終わり」と手を叩いて強制的に終わりにした。

 小島は言葉に出さなくても、心の中で会話することを覚えた。

 それから、何かと共同で配信することが多くなった。

 途中まで小島本人が、そして入れ替わり、置多田がという感じで。

 退屈でただ何もなかった自分に少しばかり輝きを見れる時間だった。

 会社でもそうだ。機械の使い方に結構詳しい置多田は、どこを使えばいいのか、これを作成するにはこれが一番早いだとか、話せるようになってからはかなり楽になった。

 誰かがいるというのはこれほど心強いものなのだと改めて実感した。

 ある日のこと。この日は会社に必要な原稿をコピーすべく、コンビニへ訪れた時のことだった。

「いらっしゃいませ」

 店内に入ると、店員と思われる人の声が耳に伝わる。

 そのままコピー機へ向かい、硬貨を入れる。

 原稿の紙を置くと、ボタンを押し、コピーを始める。

(あ!ショーじショーじ!あれ美味そうやで!)

 コピーを待つ間、サッと周りを見ていたら、置多田がそう声を上げた。

(いやわかるかよあれで……)

 周りに人がいる中、ぶつぶつ喋るわけにもいかないので、心の中で答える。

(じゃあそこ真っ直ぐ!)

(まだコピー終わってないから無理)

(はよぉ!)

 相変わらず中は賑やかで、でも別に悪くないと思っている自分がいて、なんだか不思議だ。

 コピーが終わり、ついでに置多田が美味そうだと言っていた、生姜の甘辛煮とかいうやつを買った。

(帰って食べんのが楽しみやわー)

 満足そうにるんるんとしている置多田に、とある疑問をぶつけてみる。

(あのさ、普通に思ったんだけど、オレが食べて、そっちに味感じるの?)

 そう、食べるのは小島。当然体は自分のものなので、そっちにまで味がいくのだろうかと疑問に思ったのだ。

(感じるでー)

(あ、感じるんだ)

(まあ、ぼや〜って感じやけどな。生きてた頃に比べたら、味覚は鈍くなっとると思うけど)

(……生きてた頃?)

(ん?あーおいはな——)

 とそこまでで、置多田は言葉を止めた。するとすぐに別の言葉を発した。

(ちょい待ち)

 ただそれだけ言うと、とりあえず足を止めた。

(どうした?)

(…………)

 しばらく黙っていると、置多田はようやく言葉を発する。

(……ショーじ。こんまま歩け。ただし、後ろは見んなや)

 急に声がいつもの明るさを消し、真剣になる。

(え、なんで——)

(ええから!)

(わ、わかった……)

 再び足を前に進め、先程と同じように家へ向かって歩く。

 一体どうしたんだろう。自然と早足になってしまう。

(ショーじ、一つ頼みがあんねんけど、ええか?)

 そう言う彼に、小島はこくりと頷くと、その後に続く話を聞いた。

 それは別に問題ないと判断したので、小島は頼みを聞くことにする。

 曲がり角へくるりと回ると、近くの電柱に身を潜めた。

 数秒経った後、誰かがそこの角から頭をひょこっとだけ出すのを確認すると、小島は口を開いた。

「さっきからなんやねん。コソコソ、コソコソと。おいになんか用か?」

 その言葉を発すると、角にいた者はビクッと肩を揺らして、もう一人いるのか、しばらく押し付け合いのように肩を押し合ったのち、一人が押されて出てきた。

 それは黒いパーカーを着た少年で、口にはなぜかメロンパンが咥えられている。

「……何してんねん……」

 さすがの小島もいまいちその状況が掴めず、そう溢した。

「ふぁふぃふぉ!」

「何言うとんねん……」

 口に咥えられたパンのせいで、何を言っているのか理解し難い。

「ふぁ!ふぃ!ふぉ!」

 ご丁寧にもう一度ゆっくり言ってくれたが、わからない。

「とりあえずそのパン外しゃええ話やないか?」

 ごもっともなこと言ってくるので、それに従い、急いでそのパンを食べて飲み込んだ。

「何も!」

 おそらくさっきの言葉だろう。

「なんもないわけないやろ。あれだけ人のことつけといて」

「つけてない!たまたま行く方向が一緒なだけ!」

 なんとわかりやすい言い訳だろう。おそらくバカなのだろうな。

「いやもう、絶対それ通じないからやめとけ……」

 やれやれといった様子でもう一人が姿を現した。青い上着を羽織った少年が、パン類やらスナック菓子やらを抱えている。

「いや満喫しすぎやろ!」

 思わずそう叫んでしまった。それに青い上着の少年はすぐに訂正する。

「いや、これ俺のじゃなくて、こいつのだから」

 例のメロンパン男を指さして言った。

「だから言ったんだよ。こんな買い物してるから……」

「だってー期間限定だよ!?」

「そんな買うだろみたいな顔されても……ていうかこれ自分で持てよ」

 そう言ってパーカーの少年の手にドサッと乗せる。

 ゴホンッと気を取り直すように咳き込むと、青い上着の少年は話し始めた。

「えっと、変に誤魔化しても効かなそうだから言うけど、確かに俺らはあなたをつけてた」

 案外あっさり白状する少年に少し驚く。悪い者ではないのだろうか。

「つけてたって『ショーじ』のファン。ていう感じやなさそうやな」

 その言葉に少年は確信を持ったように追求してくる。

「やっぱり『ショーじ』という配信者はあなたですか……」

「なんや、ショーじに用かいな。まさかホンマのファンか?」

「まあ、半分?」

「どっちやねん」

 その二人の会話にようやくパーカーの男は口を挟んだ。

「えっとさ……なんかもういろいろあれだから、本題入ってもいい……?」

 気まずそうに片手を上げながら言う。

(あれ?この子たち……)

 中にいた小島の意識が突然そう口を開いた。その言葉が当然届いた置多田は、問いかける。

「なんや、知り合いか?」

 突然一人で話始めるので、前の二人は「?」を浮かべる。

(あ、いや、知り合いっていうか、この間うちのアパートを見にきてた子たちだと思って……)

 そう、この間少しだけ話した二人によく似ている。特にあの青い上着は良く覚えていた。

「なんや、そんな前からつけとったんか」

 その言葉に、パーカーの男は答える。

「あの時は知らなかったの!あの場所に霊気反応があったから見に行っただけ!」

「なんでお前らそんなこと……」

 とそこまで言うと、何か思い当たることがあったようで、ああと声を出す。

「……なるほどな。お前さんら『Spirit』言う、組織の奴らか?」

 意外と早く勘付かれたが、わかっているのなら話は早い。

「ああ、ちょっと調べててな」

 パーカーの男は、いっぱいに抱え込んだ物の中からカレーパンを選んで、封を開けながら言った。

「最初は霊気反応があって見に来ただけだったけど、一度だけじゃなくて、その『ショーじ』っていう配信者にも関連があると思って調べてた。ふぉんで、ふぁふしんにふぁふぇうふぁへひ、ふへへへ——」

「——ちょっと待て」

 突然話を聞いていた置多田が声を上げた。

 そこでゴクンと食べていたパンを飲み込んで、男が聞いた。

「何?」

「何やない、食べ終わってから話しぃや!てか、人と話すなら食べんのまずおかしいやろ!」

「ああ、ごめん」

「本当に大丈夫かいな……」

 これほど困っている置多田を見るのは、小島も初めてだ。この人たち、一体何者なのだろう。

「そんで、確信に変えるために調べてて、まあ、実際当たりだったみたいだけど」

 そう言って、食べかけのパンを再び口に運ぶ。

「おいのこと、捕まえるんか?」

 険しくなった表情でそう聞いてくる。

 ちゃんとパンを飲み込んだ後、それに答えた。

「いや?忠告しに来ただけだよ」

「忠告?」

「ああ、別にお前、その人を乗っ取ろうってわけじゃないんだろ?特に悪さするってこともなさそうだからいいけど。ずっとは無理だ」

「ずっといたら、捕まるんか?」

「捕まるってことはないだろうけど、場合よってってこともあるとは思う……そこんとこよくわかんないけど。一つ言えることは、生きてる人間に霊が居続けると、定着して、出られなくなるぞ」

「!でられな……」

 それは知らなかったようで、目を見開く。

「出られないっていうか、霊がその人の意識を、やがて取り込んでしまうから」

「取り込んで……」

「意図してやるものもいる。でもそう思っていなくても、どうしても霊の霊気は、人間にまさってしまう。まあ、その人がお前より霊気が強いなら、その可能性も薄れるだろうけど」

 いつの間にか食べ終わっていたパンの袋をくしゃっと握りしめて言った。

「まあ、今すぐじゃない。決断は任せるよ」

 真っ直ぐこちらを見ると、そいつはもう一人を連れて帰ろうとする。

「よし、帰ろ!言うことも言ったし」

 青い上着の少年の背中をポンっと叩いて言った。

「え、いいのか?あれで」

「いいのいいの」

「ていうか食べカスついてる」

「え、どこ」

「ここ」

 そんな会話を残して、道を戻って行った。

 その場に残された一人は、引き止めることもなく、数分その場に止まって、ようやく家へと足を進めた。

 

少しずつ話を進めていってますが、なんかいろいろ心配になってくることが度々あります。大丈夫ですかね?

意味がわからないと思うところもあると思いますが、さらっと流していただけたらと思います。あまりにひどければ、指摘してもらって構いませんが……。

とにかく、今後ともよろしくお願いします!

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