表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Spirit  作者: まもる
26/26

下見(仮)

光と力声は昨日行けなかった場所へと足を運ぶことになった。事情を力声から聞きながら着くと、そこは一つのアパートだった。

 学校終わり、光は昨日行けなかった場所へ力声と共に向かっていた。

「昨日はごめんな、行けなくて」

「いいや、俺が言ってなかったのもあるし、いいよ」

「それで、なんでここに向かってるんだ?」

 光が昨日送られた地図の画面を指差して力声に問う。

「ああそれな。実はまだ確定じゃないんだけどさ、そこに霊が取り憑いてる人間がそこにいるらしくて、確認にな。一昨日の夜中に少しだけ反応があったんだよ。それで光にも付き合ってもらおう思っただけ。そんで見に行ってみたんだけど、なんの収穫も得られなくてさ。まあ、意見は多いほうがいいし、とりあえず見るだけ見てこようぜ」

「ふぅーん」

 長々とした力声の説明にそう返事し、二人はその場所へと足を進めた。

 しばらく歩くと、一つのアパートへと辿り着く。外装はあまり綺麗とは言えないが、そこまでボロボロではない。

 するとそこで足を止めたので、どうやらここが例の場所らしい。

「えっと……ここだな」

 携帯を確認し、そのアパートを見つめると力声がそう言う。

「ここが……」

 光はそのアパートを見つめて呟く。

「どうだ、何か感じるか?」

「感じるって言われても……」

 力声に突然聞かれたので、曖昧にそう答える。

 感じると言われても、特に何かを感じるっていう感覚はない。まじまじとそのアパートを見つめていると——

「ここに何か用ですが?」

「「うわぁっ!」」

 光と力声は突然聞こえた謎の声に驚き、同時に声を上げた。

 仕事の帰りだろうか。スーツを着て、メガネをかけたなんとも暗そうな雰囲気を漂わせる男。メガネ越しでも顔色があまりよろしくないのが、なんとなくわかる。

 謎の声の正体と思われる男が慌てて謝る。

「ああっ!すいません、驚かせるつもりは……きゅ、急にこんな男に話しかけられたらそうなりますよね、配慮が足りず申し訳ない!」

 とご丁寧に謝ってくる男に、光はすかさず謝り返す。

「い、いえ!こちらこそ道を塞いでいたようですみません!邪魔でしたよね。ほらおまえも」

 と小声で力声を巻き込み、無理矢理頭を下げさせる。

「すいません」

 それに合わせて力声がそう声を上げる。

 そんな二人を見て、男は改めて話題を逸らす。

「そ、そんな謝ることは……そ、それより!ここになにか用かい?誰か探してるなら呼んでこようか?」

「いえいえそんな!別に誰か探してるわけじゃないので……」

「そ、そうかい……?そうでもなきゃなかなか立ち寄らないと思うけど……」

 そんな男を見て、少し怪しまれていると思ったのか、何か良い言い訳はないかと考えを巡らせる。

「……ひ、一人暮らし!を考えていて……それでいろいろと物件巡りを……」

 光は咄嗟に思いついたことを男に喋る。合わせるように軽く肘をつかれた力声は、うんうんと顔を縦に振る。

 思わぬことにきょとんとした男はフッと軽く笑うと、こう口にした。

「一人暮らしか……わざわざ足を運ぶなんてえらいね。今時ネットでいくらでも物件が見れる時代なのに」

「あはは……」

 頰に一筋の汗を流しながら、軽く笑って見せる。

「でもね、ここはやめといたほうがいいよ?家賃は確かに他と比べて安いけど、たまに電気の通りが悪いのかよく停電するし、夏なんかエアコンの調子が悪くなる時もあるからね」

 本当に一人暮らしを考えている少年と思っているようで、この家のことをよく教えてくれる。

「まあ、それでも住みたいって思うなら、二十一号室はやめといたほうがいい」

「なんでですか?」

 その言葉に思わずそう問いかけてしまったが、まあいいだろう。

「出るんだよ」

「出る?って、何が……」

 スゥーと息を吸った男が答える。

「幽霊さ」

「「!」」

 二人はその言葉に反応し、顔を見合わせる。

「そこの部屋だけは、昔自殺があった部屋らしくてね。まあ、いわゆる事故物件てやつさ。ふざけてそこに住み着いたやつも、そこの部屋に住んだ途端、体調に変化が出てきて、段々悪化してその部屋を出たっていう話もあったって。まあ、実際に見たわけじゃないし、あったとしてもたまたまだと思うけどね」

 冗談というような様子で話終わると、その話を黙って聞いていた二人を見た。その様子に怖がらせてしまったかと思った男は再び謝る。

「怖がらせてしまっかな!?ごめんね!えーと……ああっそうだ!はいこれ!」

 どこかに寄ったのだろうか、手に持っていたビニール袋をガサゴソと漁ると、中から可愛らしい包み紙に包まれた二粒の飴を差し出す。手に乗せらせた光は飴を見つめていると、男は素早く話を切り上げた。

「じゃ、じゃあオレはこれで、長々と引き留めてごめんね!それ、よかったら二人で食べて、いらなかったら捨ててもいいからー!」

 そう言いながら男はその場走り去ると、アパートの二階へと階段を駆け上がり、手前の部屋に勢いよく入って行った。

(あれ?)

 光は後ろ姿を見つめているとふとそんな言葉が出てくる。

 それを見つめて、ポツンとその場に取り残される二人。

 とりあえず渡された飴の一粒を力声に差し出した。

「はい」

「ああ、どうもどうも」

 受け取った力声がお礼を言うと、光がアパートを見つめて話始める。

「それにしても、忙しい人だったな。それにすごい親切」

「ああそうだな……ってそんなこと言ってる場合じゃない。それより——」

 力声の言葉を先読みして、光がその先を答えた。

「幽霊……だよな」

「ああ、事故物件ってやつ。あれが正体か?」

「でも、誰かに取り憑いてるって言ってなかったか?」

「反応はそのはずだったけど、なんか妙だな……」

「妙?」

 顎に手を当てて考える力声に光がそう聞く。

「霊がいるなら、少なからず霊気は感じるはずだ。なのにこれっぽっちも感じない。感じなさすぎる」

「ここにいないって可能性は?」

「ゼロ……ではないけど、反応があったなら霊がいた痕跡が残ってるはずだ。それも一昨日なら完全になくなるってことはないだろうし……」

「お前でも何も感じ取れないのか……」

 いろいろと考えを巡らせている力声の姿を見て、そんなことを呟く。

「感じる……ねぇ……」

 ポツリと光は声に出すと、あることが脳によぎりハッとする。

「あーー!!」

 思わずそんな声を出し、突然のことに力声もそれには驚いた。

「ど、どした急に!?」

「思い出したんだよ!」

 ハッとした表情がまだ張り付いたまま、力声にそう答える。

「何を!」

「さっきの親切な人!」

「さっきの?……ああ、あの人か、それがどうした?」

「あの人、この前見かけたんだよ!顔ははっきり見えなかったから確かではないけど、なんか見覚えがある」

 少々早口になりながら光は力声に向かって話す。

「へー……で?それがどうしたんだよ」

 まだまだ話が見えないといった様子で尋ねる。

「俺、その人とすれ違ったんだけど、その時に、なんて言うんだろう……なんかゾワッとする感じがしたんだ。なんか覚えがあるような感覚が……それが霊気だったのかはわからないけど」

 一通り話を聞き終えると、再び力声は考え始める。

「……んー……つまりは、あの人が霊に取り憑かれてるって可能性があるってことか……でもあの距離で話したのに何も感じられなかった。だとすると……」

 ぶつぶつそう言いながらかなり考えている。そんな力声を見つめていると、やがて、考えるのに疲れたのか声を上げる。

「うがあぁぁぁ!!考えるのめんどくせぇぇぇ!」

 頭をもしゃもしゃと自分の手で荒らしながら、やがて脱力したように腕をだらんと下げた。

「光!もうその線でいく。あの男のこと、調べるぞ」

 そう言った力声に目を丸くしながら光は力声に言った。

「え、いいのかそれで」

「いいも悪いもあるか!これではっきりするなら、別にいいだろ」

 なんだかヤケを起こしているような様子で言う。

「それ、力声がそのモヤモヤを解消したいだけだろ……」

 半分呆れながらぼそっと口にすると、聞こえていたのかギロっと光を見つめる。

「なんか言ったか?」

「いや?なんでも……」

 そんな力声にわざとらしく視線を逸らしながら、そう答えた。

毎度ありがとうございます。今回は主人公ターン?です。次回もどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ