誰
少年は、ある動画を見せたいと言ってきた。ある質問を条件に。それは『何か特別な力を持っているかい?』その質問に固まってしまった光。どうにかして、この状況を潜り抜けたが、その後、光に新たな事実が突きつけられる。
——空気が重い——。
上手く呼吸ができない。
この空間を打ち破ろうと、声を出してみる。
「ぁ……」
今にも消え入りそうな声だった。
この感じは、バレているだろう。どうやって知ったかはさておき、今この状況をどう乗り越えるかを考えなければ。そして、光が出した結論は——。
「俺はそんな……大層な力、持ってないですよ」
ただ否定する。それだけだ。本当にこの言葉が精一杯で、この一瞬でものすごい体力を使った気さえした。本当なら今すぐここから立ち去りたい。でも明らかに不自然な行動をとれば、何をされるかわからない。
光の頭に浮かんだのは、あの屋上の出来事。あの時は必死で、気にも留めてなかったが、この少年もまた、何か力を持っているに違いない。
そして、あの人型の謎生物。あの少年と話してる時の様子は、尋常じゃなかった気がする。下手な行動をとれば自分も同じ道を辿ることになるかもしれない。
結局あの謎生物がなんなのか教えてくれなかったが、あんなものに平気で関わっているのだ。ただの人なわけがない。もっと深く考えればよかったと、今更後悔する。
少年がその返答を聞くと。
「…………」
しばし考えたのち、口を開いた。
「そっか、ならいいや。ごめんね、変なこと聞いて」
と、案外さらっと受け入れられた。それがむしろ怖い。明らかに確信の目をしていたと思ったのだが、考えすぎだったのだろうか。そう考えていると。
「じゃあ、これからちょっと動画を見せるけど、とりあえず何も考えず見てみて。何か気づいたことがあれば、見終わった後に聞くから」
そう言ってパソコンをカチカチいじると、画面に動画が映し出される。
それはさまざまなアングルで複数映し出される。
何かのアクション映画だろうか、ものすごいスピードで誰かが屋根の上を走っている。その誰かは、フードを被っていてよく見えないが、身のこなしや格好からして男なんだろうなと思った。女だったら結構すごい。
するとしばらくして、フードの人ではない、別の人影が前を遮る。黒いパーカーを着た人。これは間違いなく男だ。フードは被っていないが、夜で暗いのと、遠いアングルから見ているので、顔ははっきり見えない。
何やら話した後、フードの人は、いきなりパーカーの男に殴りかかった。だがそれは、軽々と避けられる。
その殴り合いは、パーカーの男が、フードの人の腹に拳を叩き込んだところでやっとおさまる。フードの人は、なんとか次の攻撃を避けると、腹を押さえながら、よろよろと後ろに下がる。
すると、そんな時間は与えまいとパーカーの男は、容赦なく蹴りを叩き込む。この戦いは、それで終わりを迎えると思った。
が、驚く光景が映し出される。避けられないと思っていた攻撃をフードの人が避けたのだ。すると風で煽られたのか、フードの人の顔があらわになる。後ろ姿だが、見た感じやっぱり男のように思える。
そしてそれを合図にフードの男は、再び走り出し、パーカーの男との距離をどんどん離していく。そしてフードの男が、店の大きな看板に足を掛けて飛ぶと、その看板が傾き始めたと思いきや、落ちていくではないか。そう、フードの男が看板を落としたのである。下には、少数だが人の姿や車があり、このままでは下敷きだ。そう覚悟した瞬間——。
フワッ。
地に向かって落ち続けていた看板が、まるで宙に浮いたかのように止まった。すると下ではなく、上に上昇していくと、人のいないと思われる場所に落ちた。大きな音が鳴ったのだろう。人がざわざわとし始めているように見える。そしてその看板を眺めるように人が集まってきたと思ったら、そこで動画が終わった。少年がボタンを押し、停止させたのだ。それと同時に、こちらに目を向けると。
「これ見て、何か気づいたことはあるかい?」
そう言ってきた。すごいアクションを見せられて、見入ってしまっていたが、正直、この動画を俺に見せる意味がわからない。なので、正直に答える。
「いえ、特に……何も」
「そっか……」
そう言うと再びパソコンをカチカチといじり、今度は、さっき出てきていたフードの男をアップにした静止画が映し出されていた。
「この人に、見覚えは?」
なんだこの事情聴取は。まるで警察署にでもきているかのような気分だ。
「いえ……それに、顔がよく見えないですし、画像もその……荒いですし……」
そうこれは、遠いアングルからのアップなので画像が荒く、おまけにフードを被っていた。なので知っている人でも見分けはしづらいだろう。
「ふーん」
そしてまたパソコンをいじる、今度は、パーカーの男の姿に変えられていた。
「じゃあ、この人は?」
これも、もちろんわからない。なのでさっきと同じように言う。
「この人もわからないです……」
「それは嘘だ」
すぐさまそう言ってきた。嘘?いや本当に知らないんだって。それに見てよ、この画像。ほとんど顔見えないよ。そう言ってやりたかったが押さえる。
少年は、マウスでカチッと押すと、まるで画像かスキャンされているように、緑の線が上から下へと画像をなぞるように落ちていく。それを数回繰り返していくと、荒い画像が、少しずつ、綺麗になっていく。すると今度は、その画像を見せてきた。
はっきり見えるわけじゃない。だが少しは、顔の判別ができる。今の時代は、すごいなと感心しながら見た。するとあることに気づく。
「……この人って……」
そして少年の顔を見ると、自分を指さしながら、笑顔で言った。
「そう、これ……俺なんだよね」
当然だと言うようにそう言った。確かによく見たら似ている。フードの男との凄まじいアクションを繰り広げていた、パーカーの男は、今まさしくそこにいる、少年だったのである。
「…………」
呆然とその姿を見ていると、今度は、フードの男の綺麗な画像が映し出される。フードを被っているバージョンとそうでないバージョン。両方が映し出されていた。
見せられたので見てみると、この人も何やら見たことがある気がする。フードをつけてないバージョンと言っても、後ろ姿なのでなんとも言えないが、なんだか見覚えがあるように感じたのである。
そして上から下へとゆっくり見ていくと、あるものが目に留まった。それを見た途端、光は、ハッとした。
——この人を知っている——。
知らないわけがなかった。
そして思わず、自分の上着見た。どこにでもある青い上着。だが見たのは、そこではない。左腕だ。
そして、画像と交互に見ると、あることがわかった。
この上着の左手には、ワッペンが刺繍されている。だが、ただのワッペンではない。
世界でたった一つの『光』の文字。
そして画像に映し出されているその上着にも、同じようなものが刺繍されていた。
そう——これは。
光の心の中を悟ったかのように、少年も同じように言葉を発した。
「そうこれは——」
「君だよ」
俺だ——。
少年の言葉と同時に光は、そう心の中で呟いた。
「俺って……」
「そのままの意味だよ」
相変わらず笑顔を崩さないままそう言った。今の光には、やはり恐ろしくてたまらない笑顔だった。
「気づいたみたいだから、言うけど。これ、一昨日の夜の防犯カメラの映像なんだけど、覚えてる?」
「いえ……覚えてるっていうか知らないです」
光は、ただ呆然とそう呟く。
「だよね」
その返答を予想してたかのように言った。
「えっとね、簡単に説明すると、一昨日、俺たちは、ご覧の通りやり合ったわけだけど。君は覚えがないんだよね?」
その言葉に、コクコクと頷く。
「でも俺は覚えてる。この映像には、肝心の顔が写ってないんだけど、俺は一回、暗いとは言え、君の顔をバッチリ見てる」
何かの勘違いでは?という逃げ道は、完全塞がれた。もちろん自分自身、なんの覚えもないのだが、今のこの状況じゃ何を言っても、無意味に終わるだろうということは、光には簡単に理解できた。
「そこで、さっきの話の質問の答えにも繋がる話をするんだけど」
「さっきの話……?」
無意識にそう言ってしまった。ただ単純に気になったからだ。
「君がさっき言ってきただろ?あれは、人じゃないならなんなんだって」
「あぁ……」
そういえばそんなことを聞いた気がする。あの時は、聞いちゃいけないことだと思って諦めていたが、ここでそこに触れられるとは。すると、少年は、人差し指を立てながら軽く説明を始めた。
「俺は一昨日、君とやり合って結局逃げられちゃったから、今日まで監視をしてたんだけどね、さっきの屋上でのことは、覚えてるよね?」
「そりゃあ、忘れたくても忘れられないですね……」
その時を思い出しながら、疲れ気味に言った。
「あの時、君はどんな感じだった?」
「どんなって……」
「んー、難しいけど簡単に言えば、体が動かなかったんじゃないかな?だって君は、意図して屋上から飛び降りたわけじゃないでしょ?」
「そりゃそうですね」
当たり前だと言わんばかりにそう言った。
「体が動かなかったのは、君の中に別の何かが入って、君の代わりに体を動かしてたからなんだ。いわゆる、支配状態的な」
「支配……それで?結局アレの正体はなんだったんですか?」
「人間」
「え、人間……?あれが?」
「人間ていうか元人間……かな?」
「モト?」
話が急に意味わからなくなってきた。思わずカタコトになってしまった。人間だけど、元人間。ん?人間じゃなくね?
「いいや、遠回しに言うのはやめよう」
そう言って例のバッグから瓶を取り出す。だがさっきとは違って何も入っていないものだ。
「君は、この瓶の中が、オレンジ色に光ってるって言ったでしょ?もう一度確認するけど、この中は?」
瓶を指差しながら聞いてくる。
「何も……入ってない?」
そう言うとこくりと頷いた。
「だよね。さっき入っていたアレが君の中に入っていたものの正体。つまり——」
「——霊だ——」
「れい?」
「まぁ簡単に言うと君たちの言うお化けみたいなものだね」
「お化け……」
この短時間にさまざまな情報が入りすぎて、もはや復唱することしかできていない。
「そう。霊は、肉体を持っていないからそのままの状態だと、何もできないんだ。壁をすり抜けるとかあるでしょ?ああいう感じ。だから、肉体を持ってる人間。つまり、今を生きてる人に入ってああいう感じに人間を使うんだ。でも肉体に入ったらすぐに支配できるわけじゃなくて、少し時間をかけて定着させる必要がある。それを準備期間っていうんだけどね。それが少しでも定着し、慣れれば人間の体を自分の体のように動かせる」
つまりまとめると、霊は、一人だと何もできないから、人間を使って何かをしようとする。だがすぐには使えないから、その準備期間とやらで慣れさせて、支配しようとする。ということだろうか。へー霊ね。霊、レイ?霊って……。
「幽霊⁉︎」
咳を勢いよく立ち、大声でそう叫んでしまった。それを見た少年は。
「うおぅ……どした?」
少し体をビクつかせたがそんなに大袈裟な反応はしなかった。だがそれに構わず。
「霊って、幽霊のことですか⁉︎」
「だからそうだって言ってるじゃん……」
ちょっと引き気味にそう言った。
「ぅゎーまじかー幽霊って……あー」
「え、なに、大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、大丈夫です……」
額に手を当てながら、弱々しくそう言った。
「続けても平気?」
それに下を向きながらこくりと頷いた。
「んで、さっきの動画の話に戻るんだけど……。さっき、最後の方で君がっていうか、霊が建物壊したでしょ、幸い怪我人は、いなかったからよかったけど建物の一部壊しちゃってるわけでね。それでちょっと言いづらいんだけど……」
横を向き、頬をかきながら申し訳なさそう続けて言った。
「君……警察に目、つけられてるんだよね……」
なんかもう、なんとも言えない。これ以上壮大な話を持ってきてもらっては困るのだが、もう混乱通り越して、絶望だ。
「は?」
「そこで提案なんだけど——」
と言い終わらないうち光は、身を乗り出しながら言った。
「は⁉︎え!警察⁉︎なんで!」
「えっと、まだ君だってことは、バレてないと思うよ!顔隠れてたし!でも今の技術すごいからバレるの時間の問題だと思うし、止められなかった自分も非はあるから、そこで提案を——」
と、また言い終わらないうちに。
「いやいや、俺なんもしてないし!なんでいきなり⁉︎は?俺、捕まるの⁉︎」
「だから俺から提案を——」
「なんで俺——」
「人の話聞けやーーーーー!」
いい加減遮られるのにうんざりしたのか、少年は、今までに出したことのない声を出した。さすがの光もそれにはびっくりして、やっと静かになった。そして仕切り直すかのように、ゴホンと咳を一つうつと喋り始める。
「改めて言うけど、俺から提案がある。これは、君にとって大事な提案だ。よく聞いて」
そう言われ、改めて光は、席に着く。
「さっきも言った通り、アレは霊の仕業だけど、もちろん見えない人は、存在する。外から見たら、君がやったという印象を受ける。顔が隠れているのは、幸いだったけど、いずれかは、バレる。だからそこで、手を打っておきたいんだ」
「手……」
「君が普通の生活に戻れて、かつ逮捕されない方法」
「そんな方法あるんですか⁉︎」
「ああ、それは——」
一体、どんな方法。
「ここで働いてほしいんだ」
「…………」
しばらくの沈黙の末、出たのは。
「ふざけてるんですか?」
これだった。
「ふざけてないよ、真面目な話」
「いや意味わかんないですよ、なんで逮捕されないためにここで働くことに繋がるんですか?」
そう、全く繋がりが見えないのだ。
「もしかして、働いて金で解決するとか言うんですか?さすがに無茶振りです」
「んなこと言うか!」
「じゃあなんでそうなる!」
もう敬語など使ってる場合ではない。むしろここまで、続けられたことを褒めてほしい。
「今からそれを説明するから、ついてこい。許可は取った」
「はあ?」
そう言いながらも少年の言う通りについて行った。
ここまでくる道のりは、すごかった。
さっきの部屋にそのまた奥の部屋があり、鍵付きロッカーに何やらパスワードやらなんやらを入れて、中にぎゅうぎゅうになりながら入り、番号か何かを入力したのち、そこから下に一直線。まるで絶叫系のアトラクションに乗っているようだった。フラフラになりながら、これで終わりかと思いきや、まだ続く。ロッカーから出ると今度は、たくさん並べられた番号のついたロッカーから、数字の五と書かれたロッカーを開け今度はその中に入り、上に一直線。
そこから出ると、もうロッカーはなく、代わりにさまざまな機械や人の姿があった。フラフラになった光の腕を引っ張り、ある人の前で止まった。その姿は、大人の女性という感じだ。冬だというのに、上半身、黒のノースリーブが体の綺麗なラインを強調させる。下は工事現場で着ていそうダボッとしたズボン。
「連れてきました」
それだけ言うと。
「ふむ、これが例の……」
(どの例の⁉︎)
そう心の中でツッコミながら半端泣きそうになる。
「それで、ここ……どこ?さっきの話となんの関係が……」
そう言うと、少年は、こちらにくるりと向き直りこう言った。
「お前を、この組織に勧誘したい」
「は?はあああーーー⁉︎」
そんな光には、気にも留めず女性が言う。
「この子か。お前が言った『未来が見える』という少年は」
やっぱりバレてる。もういやだ。光の心は、ズタボロになり始めている。
「はい。彼には、それほどの価値があります」
勝手に話を進めないでいただきたい。ていうか知ってるならさっき聞く必要があっただろうか。あの時間と体力を返してほしい。
「ふむ……なら、試させてもらおう。いいな?」
「どうぞ」
(よくねーよ!)
だんだんこちらに女性が迫ってくる。何、なんなの。怖い。こちらに向かいながら、女性は、片腕に握り拳を作りながら掲げ始めた。するとそれをこちらに思い切りぶつけようと振る。
すると、光の視界は、ぼやけ、青みがかった色に変色した。これは——。
未来だ。
女性が光の腹に思いっきりぶつける姿が映し出された。
それだけ見ると、視界は元に戻り、その光景を現実にするため拳がこちらに向かってくる。光は、横に思いっきり飛んで、なんとか回避する。それを見た女性は興味深そうな顔をした。
「ほう……?」
光の心臓はバクバクで、呼吸も荒くなっていた。
「い、いきなり何すんですか!」
率直に言葉をぶつける。だが女性は、それに構わず質問をかけてくる。
「君。なんで今全身で避けた?」
「え?」
「今、明らかに顔を狙っていただろ。なら顔だけずらせばいい。なぜ動かす必要もない全身で避けた?」
すごい偉そうに喋るなと思いながらもとりあえず答える。
「そりゃ、反射で……」
と言うと遮るよう付け足してきた。
「ちなみに嘘を言えばわかるからな。嘘だった場合、次は手加減なしだ」
アレで手加減してたのかよと思ったがそんなこと思ってる暇はない。どうする言うか?もう完全にバレてるし。でも——。
光は、言うに言えなかった。この力にいい思い出なんてない。むしろ隠していかなきゃみんなと同じように生活していけなかった。この力を知った後の反応が怖い。あの顔を見たくない。
「言わなきゃ……だめですか……?」
「ダメだ」
即答だった。なぜそんなに。
「君の口から直接聞きたいんだ」
こちらを見るその人の目は、真剣で曇りがなかった。嘘を言っていないのが一目でわかる。それくらい純粋だった。
「俺を……拒絶しないと、約束しますか?」
「ああ」
これも即答だった。この人なら。そして意を決して今まで言えなかったこの一言を言う。
「俺は、『未来が見えます』俺はその力で、この後起こる未来で、あなたの攻撃が顔ではなく腹部を狙ってることを見て、避けました」
言うことは、言った。正直に答えた。誰にも言えていなかったこの力を、初めて人に明かした。なんだか気持ちが軽い。
「ふっ……なるほどな」
その笑いは、あざ笑うものではないことは、すぐに分かった。
「その言葉が聞けてよかったよ」
そう言うとこちらに手を差し伸べる。その手をとり、立ち上がると、女性は、こう問いかけてきた。
「君、名前は?」
「……波河……光……です」
「コウかいい名前だな、なんて書くんだい?」
「光って書いて……光です」
「なるほど、ますますいい名前じゃないか」
こちらに向けて、温かい笑みを送った。
「私は、萩待晶子だ。好きなように呼ぶといい」
そう言うと背を向けて、光のもとを離れて行った。
途中少年の肩をポンと叩き、何やらボソボソと話すとその部屋を去って行った。その姿は、本当にかっこよかった。
すると今度は、少年がこちらにやってきて言った。
「おめでとう。えっと……そう言えば名前は?」
「えっと、波河光」
「よし、わかった。おめでとう光。お前は無事合格だ!」
「は?え?合格?何が」
「この組織、『spirit』に入る権利を得たってこと」
感動して忘れてたが、そんな話してたわ。そういえば。
「え、いや困るし。ていうかアレ!さっきのやつ!説明しろ!」
そう言うと、思い出したかのように説明を始める。
「あーそういやそうだ。お前が、いや光が捕まらないための救済措置がここに入ることに繋がるのは、俺らも警察みたいな役割をしてるからなんだ。霊専門のな。そっちの人間を捕まえる方の警察はバカバカしいって言って信じてない人がほとんどだけど、そっち顔聞く人がこっちには何人もいるし、向こうにも協力してくれてる人もいるから、事情とうちの隊員ってことを話せばある程度大丈夫だと思う。それと、光には、やってもらいたいこともあるしな」
ニヤリとした笑顔をこちらに向ける。さっきの爽やかイケメンとは、別人だ。いつのまにか、口調で変わってるし。
「やってもらいたいことって……。それに隊員ってこと話すだけなら俺はここに入らなくても話だけすれば解決するんじゃないか?」
「それは無理。隊員には、それを証明するものが必要だし、仕事してなきゃ不自然に思われるぞ。それに言ったろ?やってもらいたいことがあるって」
「っ……だから、そのやってもらいたいことってなんなんだよ」
すると少年は、両手をばっと上げて言った。
「お前には、俺の魂を探してほしいんだ!」
急になんだ?魂?それって自分のってことだよな。どういうことだ。
「は?魂ってどういうこと?探すって言ったって、お前は、人間だろ?魂って命のことだよな?多分……なんでそうなる」
その言葉にフッと笑うと彼は言った。
「まあ、そうなるわな。正確に言うと俺のじゃなくて、こいつのな」
そう言いながら自分の胸をトンっと指差しながら言った。
そして、少年はこうも言った。
「俺は——この体に憑いてる霊だ」
前よりちょっと短めの第二話です。一応確認は、しましたがどこか誤字やおかしな部分があるかもしれません。そこは、あらかじめご了承下さい。
ちなみに投稿の日程は、決まってません。バラバラになると思います。ですが、出来次第上げていきたいと思うので今後ともよろしくお願いします。