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Spirit  作者: まもる
12/38

初任務——終——

これで一件落着。と思いきやまだもう一体いたことを思い出した光と力声。それを指摘され、急いで捜索に向かうが、光にはある異変が起き始めていた。

 力声は言った。こいつは霊を喰ってると。

 正しく言えば取り込んでいると。

 今目の前で倒れている霊は、本来捕まえる予定だった霊ではない。

 つまり、まだ終わっていない。

 光は鉄男に視線を移す。

 ——まだ、終わっていない——

 いつ?いついなくなった?まさかここに来る前から?いや、それとも最初からいなかった?

 などと考え、光はしゃがみ込んで、鉄男の肩を掴んで揺らす。

「おい、いつからいなかった。いつからだ!」

 幾らゆすっても返事をするわけがない。

「光落ち着け」

 そう言って光の肩を掴んで軽く鉄男から離す。

「…………」

 光はだんまりとして何も言わない。

「いなくなったっていってもまだ近くにいるはずだから」

「…………」

「光?」

 さすがの力声も心配したのか光の顔を覗き込むようにして見る。

「……えた」

「え?」

 ぽつりと呟いた光に、その一言だけでもう一度言うように訴えかける。そしてもう一度光が言った。

「見えたんだ」

「見えたって何が」

 そう言う力声に顔を向けて言う。

「もう一体の、霊の居場所……」

「!」

 力声も予想しなかった言葉に驚愕すると。

「ほんとか⁉︎」

 力声は光の肩をがっしり掴む。それに光は戸惑いながらも続けた。

「いや、合ってるかわかんない……けど、実際、姿が見たことあるわけじゃないし。でも……なんとなくそんな気がして……なんか、体触ったら、急に流れ込んできて……」

 鉄男を見ながら力声にそう説明する。

「分かった」

 そう言って光の肩から手を離すと続けた。

「場所は?わかるか?」

 突然聞かれてビクッとしながら答える。

「あ、ああ。なんとなくだけど。ここからなら走れば追いつけるかも……」

「じゃあ、そっち任せていいか?」

「え」

「俺はこいつを片付けてからいくから」

 力声は鉄男を指さしつつ、例の瓶を振りながら言った。

「ほら!」

 光が返事をする前に、背中をポンッと押してくる。

 フッと笑いかけながら力声は続けた。

「俺は今できないので、頼ってもいいですか?」

 そう聞いてくるので、光は一瞬フリーズしながらも答えた。

「……ああ!」

 そう言って光はもう一体を追いかけて行った。

 

「はあ……はあ……」

 激しい息切れを起こしつつも、足を止めずに駆け抜けて行く。

(危なかったぜ……あのままあいつもろともお縄につくとこだった……)

 そう、鉄男が取り込んでいたはずの霊——鉄男二号——だった。

 なんと二号は、爆発が起こる直前に鉄男の一瞬の揺らぎを見逃さず抜け出したようだ。

 だとしても、今の二号の状態はあまりよろしくない。ほとんどの霊気は鉄男に取られてしまってあまり残っていない。

 そのせいなのか、息切れが激しく、いつものように早く動けていない気もする。

(その辺の人間に乗り移って、戻るまで隠れてるか)

 二号は離れながら人間を探しつつ、走った。

 すると、二号は何かを察知する。

 この弱々しいほどの霊気、人間だ。

 どうやら近くにいるらしい。

 するとタイミングよく、向こうから人影が現れる。少しずつ姿が見えてくると、携帯と辺りを交互に見ながら歩いている。長い髪を下ろし、男のようなガッチリした体ではなく、ほっそりとした体をしている。どうやら女性らしい。

 二号はニィッとその顔に笑みを浮かべると、その女性に狙いを定めた。

 女性が歩みを止めた止めた瞬間——

 ダッ!と駆け出し掴みかかるような勢いで手を伸ばした。体にめりめりと自分の手が入り込む——はずだった。

「っ!」

 自分が望んでいた光景ではなかったことに驚愕する。そして、知らぬ間に伸ばした腕がばっさりと斬られていた。

 そして今目の前にいるのは女性ではない。全くの別人。青い上着を羽織り、左腕には特徴的な『光』文字が刺繍されている。手には二号の腕を切ったであろう、鋭い武器が備わっている。

 その激しい動きに、少年の真っ青なペンダントが揺れる。

 離れようと動こうとする隙を与えまいと、いつからかもう片方の手で二号に、また違う武器を向ける。

 パンッ!

 何かと理解する前に仕掛けられ、その音でやっとの思いで反応する。

 なるべく距離を取るようにすると、避け切ることはできなかったが、魂には当たらなかったようだ。

 弾が当たった肩からぽっかり小さな穴が開き、サラサラと光の粒がこぼれ出る。

 それを目にし、ようやく理解すると痛みが走る。

「うっ……つ……!」

 肩と腕を同時にやられ、危機感を覚える。今の自分ではまともに太刀打ちできない。霊気は取り戻したいが、そうすれば戦闘は避けられないだろう。

 やむなく離脱を選択し、肩を押さえるようにしながら走り出した。

 

 光は見える場所に向かい急いでいた。

 今光の頭に映し出されているのは、霊が走っている姿。おそらくその霊の未来が見えているんだろうが。

 ——今まで、こんなことなかった——

 勝手に発動してしまうことは、嫌というほどあった。だが、発動する時は必ず、自分に関係すること。光自身が、危険に晒されたとき、それを守るために勝手に発動してしまう、防衛反応らしい。

 全く関係ない、しかも離れた場所にいる霊の姿を見るなんて初めてだ。それに、全く道がわからない光だが、なんとなく霊への道のりがわかる。教えてくれているようにも思える。これもこの不思議な現象のせいなのだろうか。

 複雑な道を慣れたように進むと、新たな映像が頭に流れ込んでくる。その光景を見た光は気づく。今目の前に映る場所と未来の場所が一緒なことに。

 光は銃を抜き、いつでも撃てる準備をしつつ進むがふと思う。

 自分はまだ動いた状態での射撃は教わっていない。いくら相手の行動が見えたからと言って、自身の技量がある程度達していなければ逆効果になってしまう。

 光は筋が良いとは言われたが、まだ短い距離でも確実に当たるという自信も保証もない。

 なら確実な方法を取る。

 光はサブとして持っていた折りたたみナイフに持ち替え、端の小さなボタンを親指で押すと、シュッと刃が現れる。

 光の目の前に未来通りの光景が始まる。

 霊が女性に手を伸ばし掴みかかるような勢いで近づく。女性は気づいていないようで、携帯に目を向けたまま立ち止まっている。

 光は絶対に間に合わせる。その決意と共に地を蹴った。

 シュッ!

 光は伸ばされた手を軽々と切り裂く。思っていたが、実際に使ってみると、やはり切れ味が段違いである。少しでも指が触れたなら、薄い皮膚は簡単にぱっくりと切れてしまいそうだ。

 女性と霊の間に入り込む際、女性を傷つけないよう注意を払って、思わず視線を向けた。その時、ぱちりと目が合ったように感じる。

 やはり、口を開け、風に揺れた髪が隠れていた目をあらわにする。目を見開きこれぞとばかりに驚きに満ちた表情をしていた。

 うまく女性に危害を加えず一発目を順調にこなせた光は、霊のへきめがけて、銃口を向ける。

 この距離ならほぼ確実だと判断し、銃弾を発射したが、距離を取られ壁ではなく、肩を通り抜ける。

 サラサラと流れ出る光の粒が押さえた手の間から溢れ出てくる。

 これ以上は危ないと判断したのか、二号は反対方向に走り出した。

 すぐさま追いかけようと一歩踏み出すが、すぐ立ち止まった。そして後ろを振り返る。そこには、腰が抜けてしまったのか、ペタンと崩れ落ち、地に手をつく女性の姿を見る。

 さすがにこのまま放置というわけにもいかないが、追いかけなければまた次の被害が出かねない。悩みに悩んでいると。

 自身の耳元からザザッという音が伝わると、聞き慣れた声が耳を通った。

『光、そっちはどう?』

 鉄男のことが片付いたのか、こちらにかけてきたようだ。

 光は丁度良いと、力声に話すことにする。

「今見つけたんだけど逃げられた。しばらくそっちを頼みたいんだけど……」

『?なんで』

「実は——」

 光は今起こったことと、女性のことについて、手早く説明した。力声もそれでなんとなく掴めたようで、少し悩んだが結論を出した。

『……ん、分かった。とりあえずそっちは任せる。できるだけ早くしてくれると助かるけど、その人の安全第一でな』

「分かってる」

 女性を見ながらそう頷く。

『そんで?今その霊はどこにいんの?さすがにそいつには追跡機はつけてないし……』

「ああ、それならこっちからどこに行ったか、力声に教えるから、それの通りに動いてくれるか?」

『ああ!そうか、お前今、霊の行動が読めるんだっけ?』

「ん、とりあえず急ごう!」

 光は集中して霊の姿を強く思い浮かべ、目を閉じた。脳裏に浮かぶのは、撃たれた肩を押さえて必死に走る霊の姿。

 ここから左に真っ直ぐ、そんで右に曲がって、左に……。

 光はある程度見えると、目を開けて力声に伝える。

「俺の今いる場所から左、そっからすぐの右に曲がって、それから——」

 光は見えた分だけ力声に伝えると、女性に向き直り、手を伸ばした。

「あの……」

「!」

 明らかに警戒している。

 そりゃそうだよな、急にナイフと銃持った人間が突然現れて、声かけてるんだから。

 光はなんとかしてここから移動してもらおうと踏ん張る。

「えっと……驚きますよね、いろいろ……。その、とりあえず立ちませんか?冷たいでしょう?」

 春には近づいてきてはいるが、まだ暖かいとは言えない。夜はむしろ昼間と違い冷える。

 女性は躊躇いがちに手を伸ばし、ちょんっと指先だけが触れると一瞬止まったが、最終的には手を取ってくれた。

 ゆっくりと立たせる。

「俺のことは信用しなくても構いません。無理に話さなくても結構ですので、とりあえず人のいる場所まで付き添わせてくれませんか?」

「…………」

 相変わらずだんまりだが、しばらく時間を使って、こくりとゆっくり首を動かし、意を示した。

 光は良いと判断して、女性を連れて人のいる場所まで共に歩いた。

 

 力声は霊に追いつくべく、言われた通りの場所まで急いで走る。

 あくまで光の言ったことは予言のようなものだが、ほぼ確実に当たるということは分かっている。

 その通りに走っていると、ぼんやりと輝く、霊特有の後ろ姿を捉える。

 あれこそ力声が前に見た霊。今回捕獲する予定だった霊だ。

 あまりでしゃばるなと言われているので、メインは光にさせるつもりではあるが、一番足止めが面倒である。

 めちゃくちゃでしゃばった記憶があるが、バレなきゃセーフだろう。

 とにかく、今はあいつをどうにかしなければ。

 力声は見える背中をひたすら追いかけた。

 

「…………」

「…………」

 人がいる場所を目指し、歩き始めた光だが、明らかに気まずい空気が流れていた。

 無理に話そうとすれば、余計に警戒されそうだし、自分で話さなくても良いと言ってしまったので、下手なことは言えないが、少しでもこの空気を打ち破るべく、勇気を出して声をかけてみた。

「……あのー、どうしてここに?」

「…………」

(ですよねー)

 思った通りの展開に、思わず声に出そうになるがどうにか心の中で堪えた。

「あ、話したくなければいいです!自分でいいって言ったことなので……」

 やっぱりまずいと思い、なんとか取り消す。すると。

「……ビニ」

「?」

 小さくて聞き取れず、首を傾げるともう一度言ってくれた。

「コンビニに……行こうと思って……」

 その声は今隣にいる女性の声である。

 思った以上に言っていいのかわからないが、可愛らしい声だ。もう少し大人な女性と思っていたので、少し衝撃を受けた。

「あー……コンビニね……」

 と納得したように言うと、しばらく間を開けて、続けて声を上げる。

「え!コンビニ⁉︎」

「っ……」

 怯えたように身を縮こませるので、落ち着かせるような素振りをする。

 そして躊躇いがちに声をかけた。

「あの……ここら辺だと、コンビニってとっくに通り過ぎてると思うんですけど……」

「…………」

 一瞬ビクッと肩が動いたが、まただんまりされてしまった。なにか失礼なことを言ってしまったか。

「ああいや、なんでもないです!気にしないでください。ああほら!見えてきましたよ!」

 そう言って話題を逸らす。そうこうしているうちに、いつの間にか、人が行き交う場所へと辿りついたようだ。

「じゃあ、気をつけてください」

 そう言って、女性を見送ると、後ろを向いて力声の元へ急ごうと前へ踏み出したその時——

「——あの!」

 その声に思わず振り向くと、さっきの女性が声をかけてきた。

 何事かと思い、女性に駆け寄る。

「あの……えと」

 何か言おうとして、言い出せないのか、あわあわしている。

 そして、言いにくそうに次の言葉を発した。

「近くの、コンビニの場所……教えてくれますか……?」

 最後の方は小さくなって、恥ずかしさに頭から湯気が出ていそうな雰囲気だ。

 その姿に思わず光は、頬を緩める他なかった。

 

 力声は着実と距離を詰めて行っていた。

 が、相手がすばしっこいのもあって、これ以上縮まらず、これをずっと続けている。

(足だけは速いんだよな……)

 しみじみそう思うと、霊は左に曲がった。

 力声も後ろから遅れて曲がると、なぜか霊は止まっていた。

 思わず力声も止まってしまうと、霊の前には、見慣れた服を着た少年が立っていた。

「光!」

 その少年の名を呼ぶと、その一瞬の時間を利用して、霊は再び逃げようと行動を起こす。

 霊が向かった先は力声の反対方向、つまり光の方へと向かう。

 光は銃を抜こうと、指先がホルダーに触れる。

 力声も同時に駆け出し、手探りに一番近くにあった細長い棒状の物をスッと取り出す。

 その流れに身を任せて、少しでも時間稼ぎになればと、それを投げようと腕を前方に振る。

 ビュオオオ!

 突然大きな風がその場を襲う。

 その風に思わず光は片目を瞑ってしまう。

 霊は一瞬の隙を突き、そのまま前方へ駆ける。おそらく、一か八か光に憑こうと考えたのかもしれない。

 力声はそのまま振った腕を止めることができず、それが手から離れていく。

 放たれたものは、風の力もあり、ありえないほどの勢いで進んでいく。

 そしてそれはやがて、何かに当たりミシミシと食い込んでいくと。

 パリンッ!

 まるでガラスが割れたような音を立てると、放たれた棒状のものは、その奥の光の横をギリギリで通り過ぎると、一瞬にして消え、壁に鋭い先の部分だけ突き刺さった。

 バタンッ

 割れる音がしたかと思いきや、今度は何かが倒れたような音。

 光はその音がしたであろう下へ視線を移すと、そこにはさっきまでこちらに向かって駆けていた霊が、光に触れる寸前で倒れていた。

 光は投げた態勢のまま固まった力声と視線を交わすと、その流れで再び倒れた霊に視線を移す。

(んーー?)

 光はまだこの状況に追いつかず、とりあえず抜きかけていた銃から手を離す。

 そのまま棒立ちになっていると、やっと力声も動き出す。

「……っは!」

 まるで今目覚めたかのような声を出すと、光の元へ駆け寄って来た。

「だ、大丈夫かー」

「あ、ああ……ていうか……」

 力声と共に下に目を向ける。相変わらず地面に突っ伏したまま動かない。

 力声はしゃがむとツンツンと霊の体をつつき出す。

「おーい」

 呼びかけても反応はない。

「こりゃあ完全に意識が途切れてるな」

 力声は立ち上がってそう口にした。

「え、途切れてるって……なんで?」

「たぶん……」

 そう言いながら壁に目を向けるので、光もそれを追うと、そこには先ほど力声が投げたであろうものが刺さっていた。よく見ると……

「……ボールペン?」

 光はぽつりと見たもの呟くと、力声は光に向き直ってさっきの状況を振り返る。

「霊がさっき光に憑こうとしたとき、何かしら足止めできるものはないかって、触ったのがそれだったから勢いで投げたやつ……が多分それ」

「え……てことは、ボールペンで……これ?」

 光はその霊を指差すと、少々呆気を取られたような顔をする。

「ボールペンで、普通こうなる?」

「それは人によるんじゃないか?まあさっきは風の力もあっただろうけど」

 うーんと考えるように顎に手を当て、力声は答える。

「あーさっきの風すごかったなー」

 光はその時を思い返しながら呟いた。

「あ、それ多分俺」

 力声が自分だと主張するように片手を上げる。

「いやお前かよ⁉︎」

「あの時は無意識で……」

 あははと誤魔化すように笑う。

「まあわざとじゃないんで」

「そういうことじゃない」

 と、話が脱線しできたので、光は再び戻そうと話を変える。

「それより……話をまとめると、全てお前のせいだと」

「簡潔にしすぎじゃない……?俺が悪いみたいじゃん」

「なんか締まらないなぁーって」

「締まる締まらないの問題なの?」

 何はともあれ締まらない終わり方をした二人は、無事に任務を達成できたのだった。

「あのさ、めっちゃ関係ないこと言っていい?」

 力声が突然そう言うので何かと思ったが、やることも終わったことだし構わない。

「許そう」

 力声はボールペンの刺さった壁に目を向けると、本当に関係ないことを口にした。

「ボールペンって、怖いな」

「…………」

 光は目を二、三度ぱちぱちさせるとそれに対して返した。

「そうだな」

 壁に突き刺さったボールペンを見ると光もまた関係ないことを口にした。

「眠い」

 

 無事、初任務は成功?だったのか、とりあえず無事に終わることができた。

 あれだけ手間取ったわりには本命は案外あっさりで、もう少し何かなかったのか?と力声はほんの少し思った。

 ほとんどサポートだけのはずだった力声の力を借り過ぎてしまった気がするが、晶子は気にするなと軽く肩をポンっと叩いただけだった。

 捕獲した霊はというと、鉄男二号の方が罰は重いだろうが、二体ともそれ相応の対応を受けるようだ。

 そして——

「おい」

 そう声をかけられて、後ろを振り返ると、大きめの丸メガネに、上半身ジャージに下は膝くらいまである半ズボン。それに白衣を羽織ったなんとも独特な服装の——爆大飛翔ばくだいひしょう——人物がこちらに向かって何か投げてくる。

 驚きながらも、うまく受け取ると、それは光が使うと決めた武器——銃だった。

 だが、少し違う気がする。ずっしりとした重さが軽減され、持ち手部分も持ちやすいように工夫が施されている。

「これは?」

「それがお前の武器。これからはそれ使え」

 銃を指さしながら、簡潔な説明に少々嫌になりながらも納得した。

「これが……」

 表面を眺めながら言うと、爆大はムッとしながら言う。

「なんだ、文句なら受け付けねぇーぞ」

「いや、文句なんて……」

 すぐさま否定する。

 本当に否定する部分なんてないのだから。銃のことはまだほとんどわからない。だが、前とは明らかに違うのは触ってわかる。

 それに、あれだけ武器にこだわりのある爆大のことだ、中途半端なものを渡すわけがない。

 フッと知らずに口を緩めると、爆大は気味悪そうに言った。

「うげっなんで笑ってるん……きもっ」

「失礼すぎだろ!」

 隠す気など微塵もないだろうが、聞こえていたので、思わず声を荒げる。

「それに!最初のアレ、まだ許してないからな!」

 最初のアレとは、本当に一番最初、爆大が調べるためと言って光の体を調べ尽くしたあの日だ。

 あれは今でも衝撃の日であった。

「っだからあれはデータが必要だったの!」

「初対面であれはありえないから!」

「いや、隊員は全員やってるから!なんなら聞いてみろ!」

「聞くって誰に!」

「力声とかいるだろ!晶子にも聞いてみろ!絶対やってるって言うから!」

「……えー……」

 爆大の言葉に光は引きつった声を上げた。

「は?なんだ急に」

 爆大はなんなのかわからないという顔を向けると、光は言った。

「晶子さんにもやったの……?アレを?お前が……?」

 その言葉が一瞬理解できなかったが、爆大は察した途端、すぐに声を上げる。

「は?いや、ちがっ、それはちゃんと別の……女の隊員が……」

「やってるの……?」

 さらに向けられる視線が冷たくなる。

「だから別の——」

 と言いかけたとき、もう一人の人物がやってくる。

「なになにーなんの話?」

 そこに現れたのは、例の報告が終わった力声だった。

 光とは違い、かなり長い時間での報告で、疲れ切って出てきたが、声色はいつも通りの調子だ。

 爆大はまたややこしいのがきたと言った顔をした。

 そして光は話していたこと力声に簡潔に伝える。

「この人が晶子さんに例のアレをやったって」

「……え」

 例のアレで伝わったのか、光と同じく冷たい視線を向ける。

「まじ……で?」

「だっから……違うっつってんだろ‼︎」

 爆大の悲惨な声が、基地全体に響き渡った。

初任務編、これで終了です。本人たちも言っていましたが、締まらない終わり方でしたね、すみません。そこはもう大目に見てください。

それでも読んでくださる方がいてくれるのなら嬉しいです!ところで今まで全く触れていなかった爆大くん。改めてその子のこともよろしくお願いします!これからどういう風に絡んでいくのか楽しみですねー

いつもより少し長くなりましたが今後ともよろしくお願いいたします!よかったら感想等もよろしくお願いします。もちろんダメな部分等もたくさんあると思うので何かあればそれでも構いません、むしろありがたいです!では今度こそ、次でお会いしましょう!

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