19 終わらない世界
「私は不滅だ。死ぬわけがないだろ…」
天使に食われていったはずのユグが、町を徘徊している
「天使の力は失敗に終わったわけだが、まだ終わった訳ではない。あの悪魔を味方につければどうにかなるはず…」
「あいつの小悪魔は魔法石を介してじゃないと成長しない。前は…ギルドがあったからheavenやhellが登場しやすい状態だった。だがこの世界には無い。だから俺がその役割をしよう」
トコトコ…
そうしてユグはどこかへと向かっていった…
………………
―何が起きているんだ…まさか、俺が生き返ったというのか…?―
自我を持つ天使の力は、魔法石の状態のまま、コロコロと転がり山の中を移動している
―まぁ、生き返ったのならそれはそれでいいか。また誰か適合するやつを見つければいいだけだし―
そう言うと天使は、町の方へと転がっていった
………………
天使が復活したということは、悪魔の力も復活しているということ。しかし、封印されたままでの復活だった…
「封印されたまま…か」
「だが、何故生きている?こんなのおかしすぎるだろ…」
「まぁ…小悪魔の数もリセットされたことだ。このチャンスを棒に振る訳にはいかない。だが……」
トコトコ…
悪魔のところに誰かが来る…
「貴方が悪魔ですか…」
「ん?誰だ…」
「俺はユグと言う。お前のことを創ったイブの兄だ」
「俺はお前と友好的な関係になりたいと思っている」
「メリットはなんだ?それ次第だな」
「俺は知っている。あんたの小悪魔は、魔法石がないと人を操れないということを」
「俺だったら、今にでも憎しみが溢れていたり、負の感情に支配されているような奴がいたら、そいつに魔法石を配ることができる」
「それは誰にでも出来るようなことでは?」
「そんなことはないさ。何故ならば、この世界で魔法石について知っている人間は、俺とイブだけだからだ」
「魔法石のことを知っているからこそ、人を選んで配ることができる。そしてイブはお前を封印した人物だ。消去法で私となるだろ」
「魔法石について知っている人間が何故お前とイブの2人だと断言できる?」
「俺は数年をかけてリセット機能を創った。イブが隠し持つ力のギミックの核となる物を使ってな」
「改造しまくり、リセット機能を創ったときは革命が起きたと思ったよ。しかしこのままでは発動したときに、自分の記憶までもがリセットしてしまう。そこで俺は、もしリセット機能が発動したとしても、自分は記憶を忘れたくないと思い、自身の血を加えた」
「イブとは同じ遺伝子だ。だからその効果はイブにも反映されてしまってはいるがな」
「信用してもいかもな。しかしこんなストーリーがあったとはな」
「まぁいいだろう。このリセット機能のおかげで復活することが出来たんだ。お前とは友好的な関係を築くとしよう」
「ありがとうございます」
………………
―私は天使と言う…お前、力は欲しくないか?―
天使は一般人に飛びついた
「い…石が喋った!うあぁ!!」
バンッ!!
その一般人は、天使の力の魔法石を蹴り飛ばしてしまった
「はあぁ…なんだろう…私疲れちゃってるのかな…」
―いってぇ…!くそ…!覚えとけよこの…!―
コロ…コロ…
天使は、だいぶギリギリな状態で移動を行っている
そんな中、天使は何かを見つける
―天使と悪魔の美術展―
入場料:中学生以下500円
高校生以下700円
大人 1000円
―美術展か…もしかしたらこれ、客釣れるかもな―
天使は転がりながら、その美術展の中へ入った
コロコロ…
―私は天使と言う…お前、力が欲しくないか?―
「ん?誰か喋ったか…?」
―俺だ!気づけ気づけよ!―
「怖…」
その人は恐怖を感じて他のエリアに行ってしまった
―くそ…なんで誰も魔法石のことを知らないんだ!どいつもこいつも…―
―あの人はどうだ…―
次に天使が狙った人は、1人で待ち合わせをしている男性
コロコロ…
―私は天使と言…―
バンッ!
天使は再び蹴り飛ばされてしまった
「なんだこの石…ホントいらだつな」
「俺は今何時間も待ってんだよ。ちっ…!」
―はあぁ…?もう何なんだよこの世界…もういいわ!―
コロコロ……
天使はその場から逃げ去った
そんな中、その美術展の受付に、1人の人間が来た
「この美術展内に、変な石みたいなのが転がってたんですよね…」
「あっ…!ほら、あの通りに」
その男は、転がって移動している天使の力を指さす
「ホ…ホントだ。今すぐ捕らえにいきますね」
「お願いします」
タッタッタッ…
受付の人は走って追いかけにいった
コロコロ…
―なんだあいつ…追いかけてきやがって…!―
追いかけてきたことに気づいた天使は、必死に逃げる
色んな階を転々とし、天使はその職員を混乱させる
―俺の力を解放してくれる奴がいたら…こんなことしなくていいのによ―
コロコロ…
最終的に天使は、その美術展の男子トイレへと入っていった
―はあぁ…まじでなんなんだよこの世界…―
―だが、まだ諦めた訳じゃない。探し続けなければ…―
トコトコ…
そこへ誰かが来た
「あなたが天使ですか?そうですよね」
―俺のことを…知っているのか…!―
―それなら話が早い。俺の力を使ってくれ―
「すまないが…それは出来ない。俺にはすでにobeyの力を持っているから」
―いやそこをどうにか…―
「だけど、手伝いはできるぞ。エレメントとかな」
―お前は一体どこまで知っているんだ?―
「以前のobey使用者の記憶は完全にある。リセットの影響で、以前の使用者の記憶が、このobeyに内包されたようだな…」
―なるほど、obey使用者の記憶があるからエレメントについて知っているのか…そういうことか―
「俺はサイガという。宜しく」
サイガは、天使の力を鞄の中に入れて、美術展から出た
………………
トコトコ…
サイガは緑地山にやってきた
人がいないのを確認し、サイガはobeyの力を使う
「現れろ、手下!」
サイガはその能力を使い、1人の手下を召喚する
―何をしている…―
「この手下がお前の力を使ってくれるだろう」
―おい待て、また適合率の低い奴じゃないか―
―まだ時間はあるはずだ。俺をもっと高みを目指したい―
―時間なんて無い。リセットによって悪魔も復活したんだ。あいつの封印が解かれるのも時間次第―
―悪魔も復活だと…?はぁ…意味がわかんねぇ―
「お前はユグと会ったか?」
―いや、会ってないな。―
「やはりそうか…あいつはシフトチェンジしたようだな…」
―ん?というか何故ユグを知っている…―
バーーン!!
爆破音と共に、何者かがやって来た
「倒すようにとの命令を受けてやってきた。天使とやら、いざ勝負!!」
そこに現れたのは小悪魔に操られた人間、1人目がもうすでに解放してしまったのである…
「適合率とか関係ない!あいつを倒すためにもあの手下に使って貰え」
―くそ…!分かったよ!―
バッ!!
サイガの手下は天使の力を使った
「天使の力!!」
バァーーン!!
「グガァァ!!」
爆風と共に、天使が姿を現す
「天使だろうと関係ない。くらえ!」
「バアルバニッシュ!!」
1人目の小悪魔は、技を放った
ヒュンッ!
「光の矢!!」
グググ…!!
ビシュンッ!!
ドドドド!!!
小悪魔に光の矢が命中する
「ぐはぁ…!」
バタッ…!
「まだだ…!はっ!バアルブレイク!」
タッタッタッ…!!
バッ…!
「ideaの力!!」
サイガはその力を使い、剣を生成させた
シャキンッ…!
そして、敵の前に立ちはだかる
「オラァ!!」
キンキンッ!キンッ!
ギギギ…!
サイガは、敵からの攻撃を受け止める。しかし相手は悪魔の手下、力に差がありすぎる…
ギギギ…!!
「今のうちだ天使!こいつを串刺しにしろ!!」
「オッケー…」
シュバッ…!!
「なんだと…逃げないと…」
バッ…!
光の矢を強く握り、天使はその敵の頭から矢を突き刺す
ブサッ!!
「っが…!!」
「はあぁ…はあぁ…疲れる」
そうして天使は、小悪魔を貫いた矢を捨てた
小悪魔は死んだ
「ここからは2手にでも分かれようか。俺はエレメントを探しに行く。お前は悪魔の討伐だ」
「悪魔の封印を解かせないためにも、ユグを見つけ出し、殺すんだ。ちなみに、何かあったらこの拠点に来い」
そしてサイガは、天使に拠点の地図を渡す
「何者なんだお前は…仲間のはずなのに怖く見える」
「俺はユグを憎んでいる。ただそれだけだ」
「体力の回復に、この敵でも食っておけ。それじゃあな」
トコトコ…
サイガはどこかへと行ってしまった…
「ユグを憎んでいる…か。しかし、悪魔の封印を解かせないためにもユグを見つけ出し殺す…?」
「あぁそうか…!あの時俺はユグを食い殺したんだ。だからあいつは悪魔の方にシフトチェンジしたということか。なるほどな…」
そうして天使は串刺しにした敵を焼き、おいしく食った
………………
トコトコ……
サイガは町の方に歩いていた
「obeyの情報からするに…」
「太郎…太郎を見つけ出せば良いということだな」
数時間後…
大学から家に帰ろうとする太郎を見つけ、サイガは走り寄ってきた
「またねー!」
「また明日ー!」
タッタッタッ…
「ようやく会えた。聞きたいことがあるんだけど…君が太郎だよね」
「はい…そうですけど…私に何か…?」
「やはり覚えてないんだな。それなら思い出せてやる」
「これを使え、全て思い出せるから」
サイガは太郎にエレメントの力を渡す
「なんだこの石…」
「もう…ホントに何なんですかあなた…」
「さぁ早く!焦らさずにエレメントと叫びなさい。時間が無いから」
「いや…焦らしてるわけじゃないですよ」
「まぁ…1度だけですよ。エレ…メント?」
太郎がエレメントを使用したとき、エレメントに内包されていた太郎の記憶が全て元に戻っていく
完全に記憶が復活したのだった…
「私は何をして…」
「いや…そんなことより…何故俺は生きているんだ…?確かあの時に爆発をくらって死んだはずじゃ…」
「何かの力によってリセットされてしまったのだろう」
「その力と言うのは…?」
「それは分からないな…しかし、リセットしてから悪魔の力が復活してしまったんだ。それを倒してもらいたい」
「先程、1人目がもう解放してしまった…」
「本当ですか…」
「私の名前はサイガと言います。これから宜しく」
「はい…宜しくお願いします」