↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/26

第二十話

「さて,こいつらの死体どう処理する?スペクタ。」


マルとバツの死体の間で,ケルンはスペクタに尋ねた。


スペクタは,足元のマルの亡骸を見つめる。


「・・・埋めてやろう。麓の森にでも。」


「麓の森に埋める,かぁー。それもいいけどよぉ,めんどくさくねぇか?ただでさえ業務時間外なのに。」


バツの亡骸に歩み寄っていくケルン。


「じゃあケルンはどうしたいんだよ。」


「俺は食いたい。」


ケルンは,バツの亡骸の側でしゃがみ,言い放った。


「食う?サイコパスかよお前。」


「いや,どちらかというとソシオパスじゃね?・・・まぁでもマジな話さ,食って身体の一部にするのが,こいつらにとっての一番の供養になるんじゃねぇか?森に埋めたとしても,他の生き物に食い荒らされるのがオチだしさぁ。」


「・・・まぁ,分からなくもないが。」


「そうだろう?流石はスペクタだ。そんじゃ,俺は食うぜ。まずバツから食う。結構気に入ってたからな,こいつのこと。」


(気に入ってた奴から食うのかよ。)


スペクタは,ケルンの言動に若干引く。


「ここで食うのか?」


「たりめぇよ。やっぱ新鮮なうちに喰った方が上手いだろうしな。スペクタって火の魔法使えたっけ?」


「いや,土の魔法だけだ。」


「えっ,まじ?珍しいな。」


「まぁな。幼少期はよくいじめられたよ。」


「・・・そうか。そんじゃ仕方ねぇ,お前の分まで俺が焼いてやるよ。・・・とりあえず,服をはがして,この服を火種にするかな。おっ,そばにイイ感じの石発見。この石の上に肉を乗っけて焼くか。いやぁー楽しみだなぁー,どんな味するんだろう。」


「・・・。」


はしゃぐケルンの背中を見て,スペクタは小さくため息をする。


(バツ,マル,今までありがとな・・・。)


おもむろにマルが立ち上がった。


「・・・。」


スペクタは,マルを凝視する。驚きすぎて反応ができない。


(・・・本当に治ってる。ってやべっ!?今はッ─)


マルは,無意識に立ち上がり,自身の顔が無事なことを右手で触って確かめた後,ふいに周りに敵がいる状況であることを思い出し,声のする方を振り向く。


「あいつ,何やって・・・」


振り向いた瞬間目に映ったのは,バツの亡骸から服を乱暴に引きはがそうとしているケルンだった。

さきほどまで焦りに覆われていたマルの心は,一瞬にして怒りと憎悪に包まれる。


─マル,剣化(グラディウス)と唱えろ。


アルフレートの声が,脳内に直接響いた。それは初めての出来事であり,普段なら驚いてすぐに対応することなどできなかっただろう。しかし,マルはそのことに驚かない。ケルンへの怒りでそれどころではない。


「剣化(グラディウス)。」


その瞬間,マルの両腕が黒く固くなり,ロングソードのような形状になる。


─いけ。


ドッ


アルフレートの一言が聞こえるやいなや,マルは強く地面を蹴り,ケルンに向かって一直線に距離を詰める。突風のようなその速さは,とても人間の子どもが出せる速度ではない。


ここにきてようやく,スペクタは我に返り,ケルンの危険を察知する。


「ケルンッ!!避け─


「えっ?」


スパンッ


ケルンが振り向いた瞬間,ケルンの頭が吹っ飛んだ。


ブシューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ


月明かりのもと,赤い噴水がケルンの首の付け根から湧き上がる。


スペクタはその様子を,信じられない物をみるような顔で見ていた。


ぽたっ,ぽたっ・・・


赤い水滴が,マルの右手をつたって地面に落ちている。


「・・・これが,殺すってことなんだな。」


マルは,剣化した右手ごしに味わった肉を裂く感触の余韻に浸りながら,スペクタの方をゆっくりと振り返った。


「お前は,何者だ。」


「俺はマルだよ。スペクタさん。」


マルは,スペクタにも構える。


「・・・そうか。」


(─土(つち)の鎧(よろい))


スペクタの足元から岩の地表が剥がれていき,スペクタの全身に纏わりついていく。

スペクタは,今何が起こっているのか理解できていない。だが,こちらに敵意を向けている人物が,さきほど殺したはずのマル本人であることだけは,魂で理解している。


「こい。」


スペクタは,覚悟を決めた目つきでマルを見る。


─行け。


ドッ


マルはアルフレートの声を聞き,強く地面を蹴った。


夜風よりもさらに速い速度で向かってくるマル。

一瞬でスペクタとの距離が縮んでいく。


(─土(つち)の剣(けん)ッ!!)


突如,マルの目の前の地面が盛り上がり,白い岩の地表でできた先のとがったするどい槍が,マルを襲う。


驚くマル。


─突っ込め


アルフレートの声に,マルは瞬時に覚悟を決め,迷わず踏み込み加速。


右腕で伸びてきた土の剣を薙ぎ払って粉砕し,左腕でスペクタの身体を土の鎧ごと貫いた。


「・・・ぐふッ」


ブシューーーーーーーーーーー・・・・


スペクタは血を吐き,裂けたわき腹から血を撒き散らしながら,膝からその場に崩れ落ちる。


土の鎧が,スペクタの身体から剥がれ落ちていく。


─解除(アブリアクト)と唱えろ


「解除(アブリアクト)・・・。」


その瞬間,マルの両腕はやわらかく変化していき,もとの形へと戻った。


マルは,左手を胸の位置まで挙げる。


スペクタの脇腹を裂いた時に感じた肉の感触の余韻が,まだ残っている。


「・・・いやだな,この感触。」


─どうした。後悔してるのか?


「いや,後悔はしてねぇよ。ただ・・・」


マルは振り返り,倒れたスペクタを見つめる。


今でもわき腹から血を地面に垂れ流し続けているスペクタは,薄っすら笑みを浮かべて,目を閉じていた。


「・・・。」


心は軽くなってる。でも,黒いしこりが残り続けてる。取り返しのつかないことを俺はしたんだっていう感覚がある。


「ただ・・・もう二度と,こんな目には会いたくねぇな。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 地球支配! [気になる点] この戦いにはもう一つの隠された目的があるようだ? [一言] 彼は成長しています
2024/03/21 00:45 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。