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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
星墜の凱歌
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英国本土降伏

 昭和18年12月後半、連合軍が英国北部に追い詰められた時点で、英国の戦略的価値はすでに無いも同然のものとなっていた。

 英国に送り出された米国の遠征軍は陸海空合わせて180万人を数え、戦死行方不明者と枢軸国の捕虜となった兵士を除いても未だ100万を超える米軍兵士が英国に残されていたが、既に英国方面の制空制海権は連合軍の手にはなく、また主要な港湾は占領されるか荷役機能を喪った状況で、米本土に遠征軍を撤退させる術は失せていた。


 連合軍の英国防衛部隊の崩壊は急速に起こった。

 日本海軍第一航空艦隊の攻撃がもたらした主要な港湾の荷役能力の破壊と軍需物資の焼失によって補給を断たれたことでロンドン防衛部隊の継戦能力は破局的に喪われ、連合軍陸戦部隊は燃料不足と交通網の寸断から重火器や車両の殆んどを放棄して退却を重ねていった。

 連合軍はロンドン防衛の後方拠点としていたバーミンガムで体勢を立て直そうと図ったが、平原や丘陵地帯が続く英国中央部を進撃する枢軸軍機甲部隊の進軍速度は圧倒的で、敗走する連合軍と並走するようにバーミンガムに到達する。

 バーミンガムの連合軍は、敗残兵の集団を追い立てるように市街に雪崩込んできた枢軸軍に対してまともに抵抗できないまま次々と撃破され大損害を出し敗走、僅かの間にバーミンガムは枢軸軍の手に落ちた。

 バーミンガム失陥と同時期、港湾都市リバプールは枢軸軍の上陸作戦により短期間のうちに制圧される。

 英国の主要な工業都市や港湾の殆んどは、ロンドン失陥から1ヶ月の間に孤立するか枢軸同盟の支配下に落ち、連合軍の残存部隊は各地で孤軍となった。

 敗北を続ける連合軍は残存戦力をグラスゴー~エディンバラ間に集中し防衛線を構築するが、枢軸軍は

12月23日にはグラスゴー近郊に達し、同時にグラスゴー北東から上陸した別動隊と共に連合軍への攻撃を開始する。


 英国の臨時首都となっていたエディンバラは、枢軸軍がグラスゴー南部へ迫るとその機能をアバディーンへと移転し、さらに僅かな間をおいてマリー湾奧の都市インヴァネスに移った。

 英国王室と政府機能のカナダへの脱出のカウントダウンは、枢軸軍による港湾都市グラスゴー攻囲が始まった段階でスタートしていた。

 連合軍は高速の豪華客船クイーンメリーとクイーンエリザベスの2隻の他高速客船や高速輸送艦など20隻を隠密裏に英国近海に進出待機させる。

 続いて1月11日のエセックス級空母を主力とした機動部隊によるアゾレス諸島攻撃により枢軸海軍を同諸島方面におびき寄せ、これにより北海方面の枢軸海上戦力が手薄になる隙をついて、翌12日に脱出船団をヘブリディーズ諸島ハリス海峡から突入させ、スカイ島ポートリー沖に向かわた。

 ポートリーには英国王室、英国政府要員、連合軍航空部隊要員、技術者や医療関係者など各種軍属とその家族など5万人近くが集結しており、夜を徹しての乗船作業が行われた。

 1月13日払暁前、乗船作業を終えた脱出船団はポートリー沖から次々と錨を上げ、英国近海に進出した英国機動部隊の上空直掩の下大西洋を北米に向け舵を切った。


 昭和19年1月17日、インヴァネスに残った英国政府の代行執政府は、クイーンエリザベスに乗船した英王室の北米大陸到着を待って英本土での抵抗の終結を布告する。

 同時に連合軍の英国残置司令部が枢軸同盟への降伏を行い、6ヶ月に亘った英国本土の戦いは終わりを迎えた。

 カナダの首都オタワに入った英王室と政府は、オタワを英連邦首都にして改めて枢軸同盟への徹底抗戦を宣言し、またアメリカ合衆国大統領も英国とともに枢軸国と断固戦うことを宣言する。


 中立国スイスにおいて昭和17年以降延々と枢軸諸国と連合国の間で停戦交渉が続いていたが、双方の主張には大きな隔たりがあり、お互い歩み寄ることなく合意を得るには至らないまま時間を無駄にするばかりだった。

 英国本土に枢軸軍が上陸したことにより連合国は大きな譲歩を示したが、枢軸側は連合国に対し無条件で降伏することを主張し交渉は決裂してしまう。

 その後も連合国側からは譲歩を重ねたうえでの再交渉の要望が出されたものの、枢軸側は無条件降伏以外の一切を認めることは無かった。


 昭和19年2月初旬、日本から装甲空母摂津、葛城型中型空母2隻、小型空母5隻、安土型軽空母8隻などで編成された第四航空艦隊と多数の護衛空母、航空機輸送空母、上陸用艦艇、補給艦艇、護衛艦艇が、貨物船の大船団と共にジブラルタル海峡を抜け大西洋にはいった。

 同月26日、枢軸諸国海軍の総力を傾けたカリブ海侵攻作戦が始まった。

 


 

 

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