派遣軍還る
遣米艦隊還る
7日間に及んだ北米西海岸での戦闘で北米西岸の米軍海空戦力に甚大な損害を与えた代償として、一航艦と二航艦は雲竜型空母蛟竜と安土型空母名古屋、駆逐艦3隻を喪失したほか、戦艦武蔵と陸奥、空母翔鶴、海龍、蒼龍が大中破するなどの損害を受けた。
米航空戦力はこの期間、日本海軍機動部隊との戦闘で投入戦力の8割近くが撃墜、損傷、地上撃破などで失われ、西海岸沿岸部一帯の主要な航空基地の大半が一時的に基地機能を失ってしまった。
日本軍上陸地点への米陸軍の部隊展開は、空爆による交通網の破壊と大量の避難民の発生により現地の交通が麻痺状態に陥ったため難航し、各地の米加守備部隊は兵力差から次々と撃破されていった。
セイリッシュ海に陣取った二航艦の機動部隊は上陸部隊の支援に専念し、反撃のため北上する米軍地上部隊に向け攻撃部隊を送り、その進軍を押しとどめた。
上陸した陸軍部隊は装甲戦力を先頭にワシントン州とブリティッシュコロンビア州各所に侵攻、退却を続ける守備隊を追って支配地の拡大を続けていった。
上陸部隊が確保し修復したシアトル、バンクーバー周辺の飛行場は、航空機輸送艦によって運ばれた戦闘機部隊が翼を連ね、8月20日の時点で西岸北部の制空権は日本軍の手中に落ちていた。
占領されたシアトル港やバンクーバー港など各所の港湾の埠頭では数多くの輸送船が舳先を並べ、大量の物資が荷役の只中にあった。
8月23日、一航艦の各部隊はセイリッシュ海に入り、確保している10箇所余りの航空基地に向け各空母の搭載機の過半を送り込むと、補給部隊と合流し整備補給に入った。
昭和18年8月25日、航空母艦12隻戦艦6隻を主力とする第一航空艦隊の艨艟達が、バンクーバー島と北米大陸に囲まれた内海であるセイリッシュ海から錨を上げ、ファンデフカ海峡に向け航走を始めた。
損傷艦のうち航行に支障のない艦を加えた一航艦は、進路を西に取り、役目を果たした輸送艦や補給艦を従え日本への帰路についた。
北米に投入された総計60万の日本軍は約1か月に亘って侵攻を続け、内陸部に向かって進撃した部隊は9月後半にはワシントン州東部の都市スポーカン一帯を制圧下に置いた。
オレゴン州を南下した部隊は、ポートランド、オレゴンシティ、セイラムなど各都市を占領、オレゴン州民の大半が住むウィラメット渓谷の南端の都市ユージンに至って侵攻を停止する。
米軍は緒戦で起きた混乱から立ち直ることができないまま、兵力で優る日本軍に圧倒され退却を続けた。
日本軍に制圧されたワシントン州とオレゴン州を逃れた大量の避難民は、サクラメントバレーに流入し難民キャンプを形成した。
カリフォルニア沿岸部の各都市からの避難民は、サクラメント、ベーカーズフィールド、パサディナなどの内陸部の各都市逃げ込んだ。
これらの避難民の大群の大半は着の身着のままの状況で、今日明日の食事にも事欠く有様だったため、米国政府は日本軍への反撃よりも避難民の保護を優先せざる得ず、本来反撃のために用いられる軍需物資の多くが避難民に提供されることになる。
一部の避難民の東海岸への移送が行われるなど、避難民対策に一応の目途がついたのは9月も半ばを過ぎたころだった。
10月に入ると米軍は戦力を整え、オレゴン州ユージンの日本軍に対し反攻作戦を行うが、航空戦力の不足と日本軍の強固な防御陣地に加え強力な戦車部隊の反撃のため大損害を受け敗走する。
日本軍は10月中頃から北東部で侵攻を再開し、山岳地帯をロッキー山脈に向け軍を進めた。
北米を離れた第二航空艦隊がウラナスカ島ダッチハーバーを空襲したのは10月15日、翌日には日本から出撃していた1万の連合陸戦隊が上陸し、補給を断たれ孤立していた同島を制圧した。
ダッチハーバーに守備隊と設営隊を残して揚陸艦隊は北米に、二航艦は日本に向け進路を取った。
一航艦の各隊は9月前半中にそれぞれの母港に還り、艦艇は整備補給のためドック入りし、乗員は束の間の休養を楽しんだ。
1か月以上に亘った長期間の作戦と北米西海岸への航空隊配備により搭乗員に多数の欠員が出た母艦航空隊はは再編成に入り、日本本土で待機していた交替部隊が航空戦隊に配備される。
アメリカ侵攻艦隊が本土に戻ってから一ヶ月後、一航艦のうち早期に整備が終わった2個機動部隊が新たな作戦のため日本を離れた。
赤城、天城、大鳳、天鳳、瑞鶴、飛龍、雲竜、捷龍の8空母と小型空母4隻、戦艦大和、甲斐、信濃、長門、陸奥、金剛、比叡、巡洋艦18隻、駆逐艦40隻などで編成された一航艦は、米英間の交通路の遮断と連合軍艦隊の駆逐のため大西洋への長き旅路に就いた。
11月初旬、北米での作戦支援を終了した二戦隊の戦艦4隻をはじめとした一航艦の艦艇が、シアトル港を出航し日本への帰路に就いた。
もはや北米西海岸のアメリカ海軍艦艇は、僅かな数の潜水艦を除き殆んどその姿を消していた。
日本海軍は、交通破壊戦のために東太平洋に配備した潜水艦部隊を別にすると、西海岸に残した小型空母や対潜艦艇など少数の艦艇を除くその総力を大西洋での戦いに向けていく。
再開します。週1くらいのペースで更新できるといいですね




