表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
灼光の戦譜
81/99

ユージンの戦い

新編掲載前に全話改稿しています。一部艦艇の仕様変更をしたため若干内容が変わっていますので、申し訳ないですが最初から読み直していただくとありがたいです。

ユージンの戦い


 北米西海岸ワシントン州とカナダブリティッシュコロンビア州に上陸した日本軍は、一帯の連合軍を撃破敗走させ、更に陸路海路からオレゴン州に侵攻した。

 ワシントン、オレゴン州の住民は日本軍の侵攻に追い立てられ、その殆んどが難民としてカリフォルニア州やアイダホ州に雪崩込んでいった。

  9月の初めには増援の10個師団と合わせて60万の戦力が米加3州に展開し、オレゴン州ポートランド、ユージン、ワシントン州シアトル、カナダ・バンクーバーを拠点化し守備を固めた。


 米国の陸軍兵力は1943年のこの時期600万人を越えていたが、ハワイを含む太平洋地域に70万、アフリカ大陸に15万、英国及びアイルランド、アイスランドに110万、カリブ海防衛に30万と、合わせて220万を超える陸軍兵士が北米外に派兵されていた。

 フロリダ半島が日本艦隊の砲爆撃を受けた昭和18年5月、東海岸の防衛強化の声が米国民の間で大きくなり、その影響で当時西海岸に展開していた180万の兵力のうち60万が、マイアミからボストンに至る東海岸の防衛に配置換えされることになった。

 

 日本は国力の限界に近い輸送体制を組み込んで北米侵攻を計画した。

 しかし日本の総力を以てしても北米は遠く、当面の間維持できる陸上戦力は60万人が限界だった。

 陸軍は北米西岸での長期持久戦を選択し、海洋と峻険な地形で他地域と遮られ防御に適し米国の主要工業地帯から遠く離れた西海岸北部のワシントン、オレゴン州を占領する計画を立てた。

 その維持に多大なコストを必要とする西海岸北部に、米軍の大兵力を拘束して米国の国力を消耗させるとともに、陸上戦力を西海岸に集中させ東海岸の防衛体制を弱体化させることが、北米大陸で日本が取りうる唯一の戦略だった。


 米国の世論は、米本土が他国に占領されることを許さなかった。

 米政府には、占領地に留まりその防衛に専念する日本軍を、十分な反攻体制が構築されるまで放置する選択肢は残されていなかった。

 日本軍が西海岸北部に侵攻したことで、米陸軍は80万近い戦力を西海岸に送りだす。

 3か月足らずの間に延べ140万の戦力が北米大陸を西から東へ、さらに西へと移動したことで米国の交通網は大混乱に陥り、貨物の遅配や未達が続出し工業生産にも大きな影響が出ることになる。


 日本の北米侵攻部隊が攻勢を停止し、占領地の防衛に戦術の重点を移し前線の防御を固めたことで、米軍は守勢から転じ兵力を結集して領土奪回の反攻作戦を計画する。

 米軍がロッキー山脈やカスケード山脈といった地形上の要害に阻まれ大戦力の集中が難しい西海岸北部で反攻の目標に選んだのは、オレゴン州の中心を成すウィラメットバレーの南の入り口に位置するユージンだった。

 10月初旬、山間部の狭隘な地形を重装備とともに踏破した30万近い米軍部隊は、ユージン市周辺を要塞化した日本軍部隊に対し攻撃を開始する。

 ユージン市郊外から本格的に始まった戦闘は、序盤から中盤にかけ米軍の攻勢が続いた。

 一時は航空優勢を確保できていたかに見えた米軍だったが、大西洋に再び現れた日本の機動部隊に対処するため東海岸への航空戦力配備を優先した結果、11月の初めには航空機の損失に補充が追い付かなくなっていく。


 太平洋方面の水上戦力が壊滅状態の米軍が、日本軍の北米への補給を断つため使える攻撃手段は潜水艦戦力しかなかった。

 潜水艦隊の根拠地だった真珠湾とダッチハーバーは日本軍によって破壊され機能を失っており、米軍の潜水艦は北太平洋を航行する日本の船団に対して2,000キロ近く離れたサンディエゴを根拠地として戦わねばならなかった。

 有力な護衛戦力に護られた北太平洋の日本の輸送船団への攻撃で、南北アメリカ大陸に隔てられ東海岸からの増援もままならない寡兵の米潜水艦隊は徒に損害を増やすばかりだった。


 9月から10月にかけての戦力の増強と温存策により、米軍の反抗が始まるなか北米の陸海軍航空部隊は2,000機を超える稼働戦力をその手にしていた。

 10月後半に入り日本の航空部隊は、従来の防空戦と交通網の破壊に重点を置いた戦術を転換し航空攻勢に転じた。

 ユージン市前面に日本軍が構築した防衛線で膠着していた陸上の戦いでも日本軍の反抗が開始され、後方に置かれていた独製の重戦車や大量のソ連製鹵獲戦車なども含めた大量の機甲部隊が前線に投入された。

 途切れがちな補給のなか強固な防衛戦に進撃を阻まれて疲弊していた米軍は、タイガーⅠ型を先頭に押し寄せる戦車の大群に前線が崩壊し敗走を始める。

 限られた退却路は日本軍飛行部隊の爆撃により各所で通行不能となり、米兵は車両や重火器を戦場に放棄し敗走、逃げ切れず日本軍に投降する部隊が続出した。


 昭和18年11月後半ユージンの戦いが米軍の敗北で終わった頃、跳梁する日本軍機動部隊により北米との交通線を完全に断たれた英国は、首都ロンドンが失陥目前となっていた。


 

 

 

 


 

 

次回投稿は、艦艇一覧でもれた分とかその他いろいろを出します。その次の投稿から新章に入ります。


カクヨムにも投稿しています。現在32話まであがってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ