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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
灼光の戦譜
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太平洋の鎖錠

太平洋の鎖錠


 太平洋での戦いが勃発した開戦劈頭に米太平洋艦隊が大損害を被り、続いてパナマ運河が日本軍の攻撃で破壊され使用不能になったことは、米国の軍用機生産に大きな打撃を与える。

 晴天が多い気候が航空機の開発に向いていたため、北米西海岸にはボーイング社、ダグラス社、ロッキード社、マーティン社などの多くの航空機メーカーが蝟集していた。

 一方で発動機をはじめとして機体の多くの部分は西海岸以外の工場で製造されており、日本海軍がパナマ運河を通行不能にして東西両岸の交易に多大なコストがかかるようなると、西海岸の飛行機会社の生産量は大きく落ち込むことになった。

 米国政府は陸路海路での輸送において航空機部材に最優先の便宜を図り、軍用機の増産に繋げようとした。

 元来鉄道やトラックは精密機械である航空機の部品の輸送には不向きで、重要部材の輸送はほとんど海路に頼っていた。

 南米大陸を周回する航路は従来と比較して多大なコストと期間を必要とし、そこに日本海軍潜水艦隊による交通破壊戦による被害も加わったため、政府部内や軍では早い時期から東海岸への工場移転が構想されていた。

 しかし工場移転に伴い工員やその家族の移住が発生することや、移転中は生産が止まること、工場を新たに作るコストの問題、工場が東海岸に避難すると取られ西海岸住民の不安を煽ることになりかねないことなどから、米国政府は工場の移転には慎重になっていた。

 米国政府が陸海軍の要請を受け西海岸の航空産業の東海岸への移転を決定し着手したのは、ソロモン海で太平洋艦隊が破れ、ハワイから西海岸への日本軍の侵攻を防ぐ楯を失ってからだった。


 北太平洋海戦と第二次真珠湾攻撃によって米太平洋艦隊が根拠地ごと無力化されたことにより、日本海軍による東太平洋での交通破壊戦を掣肘するものはなくなった。

 インド太平洋の連合軍海上戦力を駆逐したことにより、日本の潜水艦隊はその戦力の多くを連合軍の防備が手薄な南アメリカ大陸西岸沖での交通破壊戦に振り向けた。

 太平洋艦隊の事実上の消滅により対抗戦力が無くなったことで、航空母艦や巡洋艦等の水上艦艇もこの海域に投入され、米海軍の対潜護衛艦艇の天敵となった。


 昭和18年の4月には東太平洋での交通破壊戦に新たに2隻の潜水艦母艦が加わり、この海域で活動する潜水母艦は4隻となっていた。

 この4隻はいずれも昭和15年10月から昭和18年2月にかけて就役した新型潜水母艦の大鯨、彪鯨、鋼鯨、嵐鯨で、それぞれが12隻で編制された潜水艦戦隊と4隻の補給潜水艦をその指揮下に置いていた。

 大鯨型は基準排水量6,800tで34,000馬力のディーゼル機関により最大速力25ノットを発揮した。

 航続距離は16ノット21,000キロ、補給用重油2,500tの他95式魚雷80本などを積載する。

 航空兵装として九八式哨戒飛行艇を2基搭載、対空兵装として98式40口径7.5センチ連装高角砲3基を艦首に背負い式に搭載した。

 大鯨型は2隻ずつ交代で潜水艦隊の根拠地であるメジュロ環礁から東方4,000キロ付近までそれぞれ護衛の駆逐艦2隻とともに進出、直属の4隻の補給潜水艦がさらに1000キロ東方に進出してそれぞれが3隻の潜水艦への補給に当たった。

 潜水母艦4隻が揃った4月以降、常時24隻の潜水艦が米大陸西岸で活動を始めたことにより、連合国はこの方面での独航船の航行を禁止している。


 メジュロ環礁を根拠地とする部隊は潜水艦以外にも、4隻の姫路型護衛空母と古鷹型軽巡2隻、軽巡加古、駆逐艦16隻で編制された第十一機動部隊が18年3月から活動していた。

 この機動部隊はそれぞれ空母2隻と軽巡1~2隻駆逐艦8隻の二つの部隊に分かれ、交互に南米北岸を航行する護送船団を襲撃、航空攻撃で護衛空母や大型艦艇を撃破した後、前方に進出していた巡洋艦と駆逐艦が船団を攻撃する戦術により多大な戦果を挙げている。


 日本艦隊による交通破壊戦により東西両岸の交易路のほか米豪航路、ハワイ航路での被害も甚大で、大兵力の守備隊の存在により自給では食料を賄えないハワイ諸島の状況に米政府と軍は苦しむことになる。

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