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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
灼光の戦譜
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大西洋打通

大西洋打通


 ハワイ強襲を終えた第一航空艦隊は、損傷艦とその護衛を除く全艦艇をトラック泊地に向かわせた。

 トラックで艦隊各艦が整備補給を受ける間、乗員は交代で休養に入った。

 激戦の末多くの欠員を出して半壊状態になっていた空母航空隊は、トラックで新しい機体を持って待機していた交替部隊と入れ替わりその戦力を回復する。


 ハワイのアメリカ太平洋艦隊は、北太平洋海戦とそれに続く一連の戦いの中で事実上消滅した。

 わずかに生き残った艦艇は、損傷や燃料の不足のため大半が米本土に戻ることは無かった。

 潜水艦隊だけが大損害を免れサンディエゴ軍港にたどり着いたが、アジアから遠く離れたサンディエゴを拠点としては活発な活動は望めなかった。

 昭和17年11月始めに日本艦隊の機動部隊は南太平洋の連合軍を連続的に攻撃し、この方面の主要な米豪拠点はことごとく破壊された。

 豪州本土も激しい攻撃を受け、西太平洋とアジア方面の連合軍潜水艦は活動拠点を失ない無力化される。


 日本軍は南北米大陸西岸と米布航路、米豪航路に多数の潜水艦部隊を送り、積極的に海上交通破壊戦を行う。

 パナマ運河不通と潜水艦による被害の為、西海岸の工業生産は停滞した。

 米航空産業の多くの工場が西海岸に所在していたため、戦闘機や爆撃機の生産にも大きな影響が出ていた。

 航空機工場は多くの機材を東海岸や五大湖の工業地帯に依存しており、その供給が滞ることで工場の生産性が大幅に低下していた。

 その結果独本土への戦略爆撃の為の充分な機数を手当てできず、ドイツの軍需生産に打撃を与えることができなかった。


 昭和17年10月、独軍包囲下にあったスターリングラードは、ソ連軍守備隊が降伏し陥落した。

 ソ連軍によって行われた数度の解囲作戦は戦力不足のためいずれも失敗し、絶対死守命令を守ろうとした守備隊司令部は、相次ぐ敗戦と終りの見えぬ籠城戦を前に士気崩壊し統制を失った兵たちの反乱に打ち倒された。

 11月に入り、キプロス島に避退していた英国東地中海艦隊が日本の遣地中海艦隊の攻撃を受け壊乱、残余の艦艇はジブラルタルに向け逃走したが、マルタ島の南で伊艦隊の追撃を受け全滅した。

 11月末には、北アフリカから北上しダマスカスを解放した独伊アフリカ派遣軍と、海路からシリア北部に上陸した独伊中東派遣軍が合流し、バクダッドに向け進撃を開始した。

 翌12月、トルコがソビエトに宣戦布告し枢軸軍に加わった。

 ボスポラス海峡を通った独伊の船団が伊艦隊の援護を受けてグルジアに上陸、カフカスで独A軍集団を食い止めていたソ連軍は後背地を奪われ東に敗走した。


 12月26日、ジブラルタル海峡の東方海上を日伊の大船団が進んでいた。

 二日間にわたって続いた日伊空母航空部隊の攻撃による損害で、すでにジブラルタル要塞は半ば機能を失っていた。

 この日スペインが英米に対し宣戦布告、陸側海側からの挟撃を受けたジブラルタルの英軍守備隊は12月31日に降伏した。


 太平洋方面の連合軍戦力の大半を撃滅した日本海軍は、その強大な戦力を欧州に向ける。

 南太平洋での戦いの後第一航空艦隊は再編のため日本本土に戻った。

 先発で地中海に向かった機動部隊を除く一航艦の各艦艇は、11月から12月にかけて本格的な整備と装備の改修を受ける。

 1月初め、遣地中海艦隊に所属していた第五機動部隊が日本へ帰還するのと入れ替わりで、一航艦の主力部隊は地中海に入った。

 昭和18年1月15日、日本海軍遣欧艦隊は四半世紀ぶりに、今度は英国の敵となって大西洋での戦いを始めた。

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