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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
灼光の戦譜
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北太平洋海戦1

北太平洋海戦1


 太平洋艦隊の潜水艦が日本艦隊と遭遇したのは、現地時間で10月17日17時40分だった。

 この時間から偵察機を飛ばしても、日本艦隊は暗闇の中で捜索は難しかった。

 翌18日、夜も明けぬうちから日本艦隊に向け、多数のB-17とPBYカタリナが捜索に向かった。

 しかし日本艦隊発見の報告は来ず、『戦闘機に迎撃され戦闘中』の電信を残して哨戒機は次々と消息を絶っていった。

 太平洋艦隊は日本艦隊の全貌を掴めないまま、空母機動部隊と戦艦部隊の出撃を決断する。

 未だに動静を掴めていない日本艦隊の航空部隊による真珠湾軍港への攻撃を回避するためでもあった。

 18日の午前のうちに真珠湾から殆んどの艦船の姿は無くなっていた。

 オアフ島の上空は日本軍の攻撃を警戒する戦闘機が飛び交い、オアフ島沖の海面には日本の潜水艦を探す艦艇の作る航跡が交錯し幾何学模様を描いていた。


 太平洋艦隊が日本艦隊と真正面から戦えば、空母航空戦力ではるかに劣る米艦隊には、一方的な敗北を迎える以外のシナリオはなかった。

 太平洋艦隊にとって唯一の勝ち筋は、日本艦隊の後方に存在するだろう補給部隊を撃破し、日本艦隊を西海岸に向かわせないこと、それだけしか残されていなかった。

 日本海軍の油槽船の数は限られており、その内の多くが北太平洋を進む空母機動部隊に集中して配備されていると考えられていた。

 ここで日本軍の油槽船群に大打撃を与えれば、日本海軍は新たに油槽船の数が揃うまでは大規模な攻勢を控えざる得ない。

 国力、生産力に勝る連合軍は、その間に防御を厚くし、戦力を回復し、いずれは兵力で圧倒し、反攻に転じることが可能となる。

 「我が艦隊の戦果次第で今次の世界大戦の行方は左右される」、その強い思いで太平洋艦隊司令部は強大な日本艦隊との戦いに向かっていく。


 太平洋艦隊は一の矢として空母機動部隊、二の矢として戦艦部隊を、損害を省みず日本艦隊の補給部隊にぶつける。

 それが大統領命令によって退路を断たれた太平洋艦隊に取れるただ一つの作戦だった。

 オアフ島から、空母部隊から、日本艦隊を捕捉するため、哨戒機が連絡を絶った海域を目指し100機を超える偵察部隊が飛び立っていった。


 北太平洋を米西海岸に向け航行する第一航空艦隊は、4個機動部隊で構成されていた。

 二隻の天城型装甲空母と日進、瑞穂、長門型戦艦2隻、阿蘇型大巡3隻などからなる第一機動部隊、翔鶴型空母2隻と千歳型空母2隻と大和型戦艦3隻、高雄型重巡4隻の第二機動部隊、蒼龍型空母4隻と金剛型戦艦4隻、妙高型重巡4隻の第三機動部隊の3部隊は、第三機動部隊を頂点とした横長の三角のような形で隊列を組んでいた。

 3部隊から60キロほど遅れて摂津と飛隼の2空母、安土型軽空母2隻と空母型給油艦4隻、山城型戦艦2隻、古鷹型巡洋艦3隻の第四機動部隊が続く。

 各機動部隊にはそれぞれ1個水雷戦隊が加わっていた。

 一航艦司令部は第一機動部隊と行動を共にする軽巡大淀に座乗して全部隊の指揮を執った。

 第四機動部隊の北側50キロには、19隻の油槽船とそれを守る7隻の護衛空母、5500t級防空軽巡4隻と松型駆逐艦で編制された十一水戦が第四機動部隊を楯にするように航行していた。


 10月19日8時40分、ハワイ北方1300キロの地点で空母ホーネット所属の急降下爆撃機ドーントレスは東に向け航行する多数の油槽船を発見する。

 ドーントレスは日本軍機に撃墜される前に、補給部隊の正確な位置を打電していた。


 太平洋艦隊は戦艦部隊を先行させ、その後方に機動部隊を置いていた。

 日本艦隊発見の報を受け、戦艦部隊は高速艦と低速艦の二つの部隊に分かれた。

 サウスダコタ級戦艦4隻と重巡洋艦6隻、軽巡洋艦4隻、駆逐艦15隻は最大戦速で300キロ先の日本軍補給部隊に向け突進する。

 戦艦部隊の突進開始に先立つこと40分前、後方の機動部隊の4隻の空母は次々と攻撃隊を出撃させていた。

 米軍機動部隊は、既に8時過ぎには日本軍偵察機に接触されていた。

 このまま敵艦隊を発見するまで攻撃部隊を待機させれば、日本軍航空部隊に先制攻撃を許してしまう。

 この見切り出撃は、日本軍が来襲するまでに攻撃部隊を発艦できなければ、太平洋艦隊の出撃が無意味になることを回避するためだった。


 

 

 

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