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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
灼光の戦譜
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1942年10月

1942年10月


 1942年10月、ハワイ諸島オアフ島の真珠湾軍港に、アメリカ海軍の主力艦のほとんどが集結していた。

 その中には工期を短縮し9月に就役したばかりの新型空母エセックスまでもが含まれており、間近に迫っていると思われる日本軍のハワイ攻略に対するアメリカの危機感を表していた。

 オアフ島の航空戦力は増強され、陸海軍の合わせて300機近い戦闘機と270機を超える爆撃機、78機の哨戒飛行艇が配備された。

 陸軍の守備兵力はオアフ島だけで12万人、ハワイ諸島全体では16万人の大兵力となっていた。

 ハワイ近海の哨戒も見直され、オアフ島の西方300キロの海上を対空レーダー装備の駆逐艦6隻が80キロの間隔で半円状に展開し日本軍航空部隊の警戒に当たっていたほか、多数の潜水艦を投じてハワイ西方に2段の哨戒線を作っていた。

 ハワイ西方海域には米軍の動静を探る日本軍の潜水艦やミッドウェイを基地とする偵察機も活動していたため、双方の間で何度か交戦も発生している。


 昭和17年10月12日、ミッドウェー島からハワイに向かった特製大型増槽装着の一式陸偵2機は、P-38戦闘機の迎撃を受け1機が撃墜されたものの、真珠湾軍港の敵情撮影に成功した。

 その日真珠湾軍港には、8隻の戦艦と4隻の空母をはじめとしたアメリカ太平洋艦隊の主力艦が停泊していた。


 開戦以降日本海軍の哨戒部隊は米軍潜水艦の跳梁を許しておらず、迂闊に日本近海に近づいた米軍潜水艦は哨戒機と対潜艦艇による執拗な攻撃にあっていた。

 ダッチハーバーの潜水艦基地は、8月に受けた日本軍の攻撃後いまだに再建されておらず、北方方面での米軍潜水艦哨戒網は十分に機能を果たせていなかった。

 ハワイの北西1,400キロの北太平洋上を進む日本艦隊が、ベーリング海の日本軍基地偵察のためハワイから北上していた米軍潜水艦に偶然発見されたのは、第一航空艦隊が横須賀を出撃して5日後の10月17日だった。

 「多数の空母と戦艦を含む大艦隊が東方に航行中」この無電を最後に、その潜水艦からの続報は無かった。

 ハワイの北西海上で日本艦隊発見の報に、太平洋艦隊司令部は困惑し混乱する。

 日本艦隊はどこに向かっているのか、現在の位置では米本土、ハワイどちらの可能性も考えられた。


 西海岸の防空体制は、航空機の数こそ揃っているものの、新型機はハワイと豪州、イギリス、アイスランドなどに多数が送られ、米本土に配備されていた機体の多くは性能が劣る旧型機で占められていた。

 高射砲部隊も飛行場や港湾などの要地に展開されてはいたが、その数も性能も充分とは言えなかった。

 米軍は日本軍のハワイ攻略を前提に防衛体制を構築していたため、西海岸は住民が望んでいた物よりはるかに手薄な防衛体制となっていた。


 ハワイ方面の防衛では、日本軍の攻撃に対し十全な防衛体制を作り上げていた米軍だったが、西海岸が日本軍に攻撃された場合、現状ではその阻止は難しかった。

 唯一動かせる手駒は真珠湾の太平洋艦隊の艦艇しかなく、正面から戦えば必敗は必至だった。

 昭和17年10月当時の日米艦隊の戦力は、それだけ隔絶したものがあった。

 合衆国政府にとっての問題は、太平洋艦隊を日本艦隊に向けず西海岸への攻撃を傍観した場合、民意がどう動くかだった。

 開戦以来枢軸軍の攻勢に押しまくられ、不甲斐なく敗北を重ねる陸海軍への米国民の怒りは高まっていた。

 ここで日本軍の本土攻撃に海軍が手を拱いていると、国民の怒りは海軍はもちろんのこと戦争指導に当たっている米国政府と大統領に向かう。

 ホワイトハウスから太平洋艦隊司令部に送られた命令は、「太平洋艦隊の全力をもって日本艦隊を撃滅し合衆国本土を敵の攻撃から守れ」となっていた。



 



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