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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
烈海の波濤
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インド洋制圧

ごった煮海戦始まるよ

インド洋制圧


 イギリス海軍は1942年4月までに9隻の戦艦を失っていた。またイタリア海軍の潜航艇によって損傷を受けた2隻の戦艦が修理を続けていた。

 この当時イギリス艦隊で稼働中の戦艦はわずかに7隻で、4月に就役したばかりのアンソンは艤装が未了で工事が続いていた。

 同様に喪失が相次いだ航空母艦はイラストリアス級の3隻とフューリアス、イーグルの5隻が稼働していた。巡洋艦の損害は25隻で、今次大戦での保有数のほぼ3分の1を失っていた。

 イギリス海軍は多数の喪失艦や損傷艦を出しながらも、大西洋、北極海、地中海、インド洋の戦場で枢軸軍と対峙し連合軍の海上交通路を守らなければならない苦しい状況に追い込まれていた。

 イギリスは日本軍の交通破壊戦を抑えインド洋方面の安定を図るため仏領マダガスカル島の占領を考えていたが、英軍単独では作戦戦力が不足するため実行に移せないでいた。

 南太平洋方面での米豪による反攻作戦により日本海軍の主力艦隊を太平洋方面に誘引し、その間隙をついてマダガスカル島を攻略する作戦は、ソロモン海の海空戦で米艦隊が壊滅的損害を受けたことにより中止された。


 第一航空艦隊がインド洋方面のイギリス海上兵力を一掃するため長躯ケープタウンに進路を向け進んでいた頃、同地には2隻の戦艦と空母が1隻、重巡1隻、旧式軽巡3隻駆逐艦6隻等が在泊していた。

 3月に壊滅した東洋艦隊の後任司令官として赴任し、翌4月には海軍大将を叙任したばかりのサマーヴィルは、この危機的状況に手をこまねくしかなかった。

 彼に出来たのは、日本軍の動向を探り危険が迫る前に艦隊を安全圏に逃がすことだけだった。


 4月30日、攻撃に先立ちケープタウンの偵察のため飛来した零式艦上偵察機から打たれた無電は「ケープタウン港に艦影無し」、日本軍の攻撃を察知した東洋艦隊はケープタウン周辺からすべての艦船を避退させていた。

 日本軍の攻撃隊はケープタウン上空で待ち受けるイギリス軍戦闘機をものともせず、2次にわたる攻撃で港湾施設や補給施設を徹底的に破壊、ケープタウン周辺の飛行場をはじめとした軍事施設にも軒並み壊滅的な打撃を与えた。

 ケープタウンの拠点機能を破壊した一航艦は、攻撃を終わると進路上にあるダーバン港などの軍事拠点をつぎつぎと攻撃しつつアフリカ大陸東岸沿いに北上しマダガスカル島に向かった。


 5月3日、マダガスカル北部のディエゴスアレス港は50隻を超える日本軍の艦船が停泊していた。

 前年10月、日本とフランスビシー政権との間で、連合国を敵国とし軍事協力する同盟条約である新日仏協約が秘密裏に締結されていた。

 その協約の元、マダガスカル駐屯の陸海合わせて3万を越える日本軍部隊が上陸用舟艇や艀を使い続々と上陸する光景があった。


 マダガスカルに拠点を持つことにより、日本軍は喜望峰周りのインド航路、豪州航路、アフリカ東岸沿いの航路のいずれをも攻撃範囲内に収めることができる。さらに紅海やペルシャ湾の出口もたやすく抑えられる。

 マダガスカルが日本に押さえられたため連合軍、特にイギリスにとっては、重要な連邦構成国であるインド・オーストラリアとの連絡線を絶たれることとなり、まさに死命を制せられたも同様の状況となっていた。


 第一機動部隊はディエゴスアレス港で補給と整備を終えると、寸暇を惜しむかのように新たな作戦に入る。

 アフリカ東岸の連合軍拠点であるダルエスサラーム、モンバサ、モガディシュを次々と襲った一航艦は、アフリカの角を周ってアデン湾に向かった。

 一航艦はアデンをはじめとしたアデン湾周辺の連合軍基地を攻撃し同海域の制海権を確保すると、仏領ソマリランドの港湾都市ジブチに海軍陸戦隊と陸軍部隊を上陸進駐させる。

 ケープタウン空襲によって始まったこの日本軍の一連の作戦期間中、イギリスの主力艦隊は一度も日本艦隊と戦うことはなかった。


 その頃、日本軍のインド洋第三段階作戦と時を同じくして独伊によるマルタ島攻略戦が始まり、イギリス海軍はマルタ島防衛に主力艦隊の大半をつぎ込んでいた。






 

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