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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
烈海の波濤
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連合艦隊再編

連合艦隊再編


 昭和17年4月20日、日本軍の占領からひと月以上が過ぎ日本海軍の根拠地として整備が進んだアッズ環礁には、この環礁を拠点とする交通破壊部隊の巡洋艦、駆逐艦や潜水艦が頻繁に出入港していた。

 環礁上空を哨戒機や戦闘機がエンジン音を響かせ飛び交い、中部太平洋の要衝トラック泊地と見紛うほどの喧騒に包まれていた。

 作戦を控え整備補給に余念のない艦艇や、新たに日本本土から送り込まれた輸送船でごった返す環礁内の一角に、10隻を超える大小さまざまな航空母艦が並んでいた。

 新たな空母を迎え再編が終わったばかりの第一航空艦隊がそこに集結していた。


 新編の一航艦は3個機動部隊に分かれていた。

 大改装により飛行甲板を装甲化して艦隊に復帰したばかりの赤城と天城の一航戦と日進・瑞穂の四航戦からなる第一機動部隊、翔鶴・瑞鶴の五航戦と千歳・千代田の六航戦の第二機動部隊、飛龍と蒼龍の二航戦は就役間もない雲龍を加えた3隻編成で第三機動部隊とされた。


 一航艦の新たな編成では機動部隊の指揮系統を空母部隊と護衛にあたる砲戦部隊に分離し、砲戦部隊を遊撃部隊とした。

 機動部隊の統一指揮は空母部隊司令官が執り、遊撃部隊には所属艦艇を指揮する新たな司令部を置き水上砲撃戦の際の指揮に当たることとした。

 この組織改定は、パナマ沖で起こった米空母ヨークタウン遭遇戦の際に起きた問題を改善するために行われた。

 この戦闘において一航艦の司令部が座乗していた軽巡洋艦橿原は空母群と行動を共するため、ヨークタウン攻撃に向かった部隊の指揮は先任の第一戦隊司令に委譲された。

 砲戦部隊には一戦隊の2戦艦の他四戦隊の大巡2隻と二水戦が加わっていたが、米艦隊との交戦時に一戦隊司令部と他の戦隊との連携に応急の艦隊のため色々と齟齬が出たことが、ハワイ・パナマ作戦の終了後海軍内で問題になった。

 問題への改善策として出されたのが、機動部隊から分離して敵艦隊との砲戦に当たる部隊の指揮系統明確化の為の、砲戦専任部隊である遊撃部隊の編制とその司令部の設置だった。


 昭和17年4月より改定された連合艦隊の組織編制では、遊撃部隊の編制だけではなく、各艦隊の在り方自体も大きく変化している。

 戦艦戦隊を主力とした第一艦隊、高速戦艦戦隊、重巡戦隊と水雷戦隊が主力の第二艦隊、潜水艦を主体に編制された第六艦隊と適宜編制の第三艦隊以下の各艦隊という従来の枠組みは大きく変更を受けることになった。

 第一艦隊と第二艦隊の編制自体に大きな変更はなかったが、艦隊決戦思想を具現化した両艦隊の従来の役割は放棄され、その代わり作戦に応じて編成される航空艦隊に組み込まれる艦艇を、便宜的に所属させ管理するための容れ物の役目を与えられる。

 第三艦隊には空母戦隊が所属し、第一第二と同じように必要とされる空母部隊を航空艦隊と他各艦隊に送り出す。

 第六艦隊は潜水艦作戦の全般を担当し、必要に応じて潜水艦部隊を航空艦隊と第四、第五、第七艦隊に編入する。

 第4艦隊は中部太平洋から南太平洋地域の防衛、第五艦隊は北太平洋と日本海方面、日本本土東方の防衛、第七艦隊は本土西方と東シナ海、南シナ海、朝鮮半島と大陸沿岸部、南西諸島と小笠原諸島の防衛をそれぞれ担当した。


 昭和17年4月の時点で航空艦隊はアッズ環礁を根拠地とした第一航空艦隊以外に、トラック泊地を拠点としてアメリカ艦隊に対応する第二航空艦隊があった。

 基地航空部隊を統合して連合艦隊で統一指揮するために編成された第十一航空艦隊は、増加する一方の基地航空戦力を効率的に運用することを目的として分割される。

 中部太平洋域を担当区分とする第十一航空艦隊(以下航艦)、南太平洋方面担任の十二航艦、南方方面担任の十三航艦、北太平洋方面担任の十四航艦、本土防衛担当の十五航艦の5個航空艦隊に加え、インド洋作戦のため編成された遣印航空艦隊がこの時点で編制表上では存在していた。


  イギリス軍東洋艦隊はセイロン島沖海戦での大敗とセイロン島の失陥により、その根拠地を南アフリカ・ケープタウンに移していた。

 北アフリカでの枢軸軍の攻勢の影響でマルタ島をめぐる地中海の戦いが激化しており、東洋艦隊への増援はほとんど望めなかった。

 その結果遮るもののない日本海軍の交通破壊戦は猛威を振るい、インド洋の海上交通は危機的状況に陥っていた。

 昭和17年4月21日の早朝、アフリカ東岸の連合軍海空拠点の一掃とマダガスカル島の占領を作戦目標として、第一航空艦隊の諸部隊はアッズ環礁を後にした。







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