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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
烈海の波濤
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セイロン島

セイロン島


 イギリス海軍にとって昭和17年3月10日は、前年12月のマレー沖海戦の復仇を果たす日とはならなかった。

 その日はイギリス海軍にとって最悪の一日となった。

 イギリス軍機による攻撃が続くなか、出撃準備を終えた第一第二両機動部隊はセイロン沖のイギリス東洋艦隊に向け攻撃隊を送り出した。

 攻撃目標の2隻のイギリス軍空母にまず第一波の64機の艦爆隊が襲い掛かる。そそり立つ何本もの水柱にハーミスの艦影が隠される。

 その水柱がおさまった後には、行き足が止まり黒煙と炎を噴き上げるだけの残骸が浮かんでいた。

 新鋭の装甲空母インドミタブルにも99式艦爆改が殺到し、400キロ徹甲弾の雨を降らす。

 インドミタブルの分厚い飛行甲板の装甲は連続する打撃に耐え続けたが、対空砲火は次々と沈黙し非装甲部各所は損傷により機能を失っていった。

 2隻の空母を護衛していた軽巡や駆逐艦にも爆弾は降り注ぐ。第2波の艦攻隊が戦場に現れたとき、セイロン島に向けて退却を始めたインドミタブルの周囲には2隻の軽巡と2隻の駆逐艦が残っているだけだった。

 艦攻隊が去った後未だに航行を続けていたのは、軽巡と駆逐艦がそれぞれ1隻だけで、それ以外の艦はすべて沈むか航行不能になっていた。

 一航艦の航空部隊は2隻の英空母を撃沈すると、攻撃目標をセイロン島方面の航空撃滅戦に切り替えた。


 日英の戦艦群はセイロン島南東80キロで激突する。

 最大速力21ノットを出すのがやっとの旧式戦艦にとって、高速で移動し毎分一門当たり2~3回の砲撃を繰り出す40センチ砲搭載の新型戦艦の相手をするのは無謀だった。

 そこに4隻の金剛型戦艦も加わってくる。

 数的にも性能的にも劣っているイギリス艦隊には、勇ましく戦って沈んでいく道だけが残されていた。

 生き残った2隻の英駆逐艦が戦場から逃げ去った後、溺者救助の駆逐艦を残して日本の艦隊は空母群との合流に向かった。


 3日間にわたる攻撃でセイロン島とインド南部の英軍海空戦力に壊滅的な打撃を与えた一航艦は、進路を南に向け3月14日にはアッズ環礁に到着した。

 3月9日には守備隊、設営隊や補給物資を積んだ大船団が既に環礁内に入って各施設の復旧が始まっており、アッズ環礁はインド洋方面での日本海軍根拠地へと姿を変えていた。


 アッズ環礁で整備と燃料や弾薬機体の補充を終えた一航艦は、3月18日に再びセイロンに向け出撃した。

 遣印艦隊と呼ばれる戦艦長門と陸奥を主力とするセイロン島攻略支援部隊は、3月13日護衛艦艇を含めると80隻を超える上陸船団を率いてリンガ泊地を出撃していた。

 3月19日、一航艦は再びセイロンの空に帰ってきた。

 翌20日、一航艦による空からの支援を受け日本軍はトリンコマリーの南北2か所から上陸を開始、2万の兵力がトリンコマリー守備の英軍を挟撃した。

 セイロン島の英軍守備兵力は2個師団を下回る規模で、コロンボとトリンコマリーの2か所の要地を守るように配置されていた。

 日本軍がセイロン島攻略のために用意した兵力は、陸軍が2個師団相当で海軍は3個連合陸戦隊、合わせて6万を越えていた。

 トリンコマリー上陸の2日後の22日には、コロンボに日本軍が上陸する。

 劣勢な兵力で装備も不十分なイギリス軍は、両拠点を放棄し北部に向かって退却していった。


 約2週間にわたって続いたセイロン島攻略戦は、4月2日に日本軍の追撃を逃れた約5,000名のイギリス軍部隊がポーク海峡をインドに渡ったところで実質的に終了する。

 退路を断たれセイロン島に残ったイギリス軍は、4月6日に全部隊が日本軍に降伏した。


 セイロン島とアッズ環礁を失ったイギリス軍はベンガル湾の制海権を失い、ビルマ戦線への補給は陸路に頼らざる得なくなった。

 また大西洋から喜望峰周りでインドやオーストラリアを目指す海上ルートも、アッズ環礁という策源地を手に入れた日本海軍によって安全ではなくなっていた。

 この時期地中海では独伊海空軍による妨害で、地中海からスエズ運河を経てインド洋への輸送ルートは半ば機能を停止していた。

 独伊軍の攻勢が続く北アフリカの戦線を支えるための連合軍の補給線は、ケープタウンを経由してアフリカ東岸沿いに北上するルートしか残されていなかった。


 連合軍はアフリカ東岸沿いの海上補給線の安全を確保するため、アフリカ大陸南東部に浮かぶ巨大な島、フランス領マダガスカルをその勢力下に置くことを計画する。

 

 

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