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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
烈海の波濤
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蘭印海上電撃戦2

蘭印海上電撃戦2


 マレー沖海戦でのイギリス艦隊の敗北と早期に終わったフィリピン航空戦の結果、南方方面作戦の第二段にあたる蘭印攻略の前倒しが決定した。

 しかし名実ともに海軍の主力艦隊となった第一航空艦隊は未だパナマへの征途にあり、蘭印攻略部隊は航空支援に問題を抱えていた。


 12月18日、第一連合陸戦隊5,500名による強襲上陸戦により、米軍の微弱な抵抗を排してミンダナオ島ダバオが日本軍の支配下に落ちた。

 海軍はダバオを蘭印攻略の策源地とし、4個連合陸戦隊を集結させる。

 海軍はダバオに蘭印攻略艦隊として5,000tクラスの機動揚陸母艦摩周型4隻、3,000tクラスの呉型機動輸送艦15隻、一等機動輸送艦24隻、2等機動輸送艦18隻、天龍型機動輸送艦2隻、更に駆逐艦改造の哨戒艇20隻という大量の上陸作戦用艦艇を揃えた。

 攻略支援艦隊の南方艦隊は第二戦隊の4戦艦、第五戦隊の重巡4隻、九戦隊の重雷装艦3隻、第一水雷戦隊と第三水雷戦隊、六航戦の千歳型空母2隻、十一航戦の大鷹型空母2隻、十二水戦の香取型軽巡1隻松型駆逐艦6隻が配備された。 


 海軍は蘭印攻略を3段階に分け、第一弾作戦でボルネオ島北部の油田地帯バリクパパン・バンジェルマシンとタラカン島、セレベス島メナド・マカッサル・ケンダリー、モルッカ諸島の中心地であるアンボンをそれぞれ三つの連合陸戦隊が攻略を担当した。

 戦闘は昭和17年1月11日から連続的に一週間に亘って続き、18日のボルネオ島バンジェルマシンの占領で第一段階の作戦は終了した。

 アンボン上陸戦では六航戦の2空母の航空部隊が上空から援護にあたっている。

 バリクパパンでは上陸船団をアメリカ軍駆逐艦が襲撃したが、護衛にあたっていた三水戦の駆逐隊の反撃により撃退した。


 第二段階作戦は陸海軍の共同作戦となったスマトラ島パレンバン攻略と、蘭印東部チモール島、ジャワ島の東隣のバリ島が攻略目標となった。

 スマトラ島のパレンバンは蘭印最大の大油田地帯であり、隣接する製油所とともに南方作戦の中でも日本軍の最重要攻略目標だった。

 攻略作戦では海軍陸戦隊がパレンバン付近に上陸して連合軍守備隊を引き付けておき、守備が手薄になったパレンバンに陸軍が空挺降下し油田と精製設備を無傷で確保することになっていた。

 作戦を確実に成功させるため、陸戦隊の特殊部隊が事前にパレンバン付近に潜入して、空挺降下に合わせて施設の確保保全にあたることになった。


 1月30日より始まった第2段階作戦はチモール島への上陸を嚆矢として、続いてバリ島上陸作戦が2日後に始まる。

 連合軍はバリ島沖に現れた日本軍上陸船団に向け、ペンシルバニア・アリゾナの2戦艦に重巡2隻軽巡7隻駆逐艦14隻からなるABDA艦隊を出撃させた。

 バリ島攻略船団は二戦隊の4戦艦と五戦隊三水戦が前衛となり、一水戦が上陸船団を直衛、別動隊として六航戦と新たに加わった四航戦の空母計5隻が船団の上空援護にあたっていた。


 ジャワ島から飛来する連合軍航空部隊と日本軍空母航空隊の戦闘でバリ島沖海戦は始まった。戦闘機に護衛された連合軍爆撃部隊がバリ島攻略船団を攻撃したが、30機近い空母部隊の戦闘機により阻止され大きな戦果を挙げることは無かった。

 四航戦と六航戦からABDA艦隊に向け出撃したのべ80機を超える攻撃隊は、アメリカの2戦艦に攻撃を集中するも激しい対空砲火に阻まれ、練度不足もありペンシルバニアに4発の直撃弾を与えたほか軽巡1隻を大破、1隻を中破、駆逐艦1隻を大破させて終わった。

 2月1日8時28分、南方艦隊とABDA艦隊はバリ島の北西70キロで激突する。制空権を握った南方艦隊は観測機を飛ばし25キロの距離からの遠距離砲戦で敵戦艦の撃破を計るが、ほとんど命中弾を得ることができなかった。

双方の巡洋艦も遠距離砲戦で戦果があがらないため、互いに距離を詰め必中距離での砲雷撃戦に移行していく。

 被弾損傷の為両艦隊から次々と落後艦が出てくる中、日米戦艦の距離も狭まっていく。

 数で勝る日本の戦艦ではあったが、米戦艦の防御力も高く双方に決定打が出ないまま戦闘は膠着する。

 この均衡を破るべく九戦隊の重雷装艦が、15キロ先の米戦艦に向け90本の53センチ魚雷を一斉に発射した。

 砲戦が始まって50分、九戦隊の雷撃から戦いの局面は急速に変わっていく。

 九戦隊の長距離雷撃によりオランダ海軍の巡洋艦2隻が被雷大破、米戦艦ペンシルバニアは艦尾に命中した魚雷により舵機が損傷し操舵不能に陥る。

 戦艦同士の熾烈な砲撃戦はペンシルバニアの脱落により、戦艦数で勝っていた日本軍による一方的な攻撃へと変わっていった。

 三水戦の肉薄雷撃で魚雷4本を受け航行不能となったペンシルバニアを置きざりに、こちらも被雷しているアリゾナが残存艦を率いて退却を始める。

 それを追う2戦隊のうち、山城と扶桑は既に黒煙を上げ戦闘から脱落していた。

 海上のあちこちに双方の損傷艦が停止し、断末魔を迎えている艦やすでに海中に姿を消した艦も少なくなかった。

 9時35分、伊勢、日向から集中砲撃を受けていたアリゾナが大爆発を起こし、黒煙に包まれた。

 この時点で未だ戦闘力を残していたABDA艦隊の艦艇は巡洋艦3隻と駆逐艦7隻だけだった。

 3隻の駆逐艦だけが、それから2日間にわたって続いた追跡戦を生き延びることができた。


 昭和17年2月15日、蘭印攻略作戦の第3段階の目標だったジャワ島の連合軍が降伏した。

 日本軍は開戦から2か月余りで南方資源地帯の攻略戦を終わらせ、ビルマを除く東南アジア全域をその支配下に置いた。

 


 

 

 

 

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