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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
烈海の波濤
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蒼隼航空隊

蒼隼航空隊


 昭和16年12月10日早朝、中部太平洋のアメリカ領ウェーク島は日本軍航空部隊による3度目の空襲を受ける。

 迎撃のため飛び立ったF4F戦闘機は9機の零式戦闘機との空中戦で3機を失い、残る1機も損傷により不時着大破した。

 日本軍の戦闘機が上空を警戒する中9機の艦上爆撃機が、アメリカ軍の砲台や対空陣地を急降下爆撃により次々と破壊していった。

 いつの間にかウェーク島沖合に姿を現していた上陸船団から、海軍陸戦隊を載せた上陸用舟艇が次々と泛水し隊列を組み始めた。

 船団を護衛していた巡洋艦や駆逐艦が上陸予定地一帯に砲弾の雨を降らせる中、上陸用舟艇は白波を立て一斉にウェーク島に向け進み始めた。

 アメリカ軍守備隊の残存砲台が日本の艦艇や上陸用舟艇に向け反撃を始めるが、上空を守っていた戦闘機隊の銃撃や飛来してきた艦上攻撃機の爆撃でわずかな間に沈黙した。

 海岸線の防衛線からの激しい銃火をものともせず上陸した陸戦隊兵士が確保した橋頭堡に向け日本軍の戦車揚陸艦が接岸、次々と上陸した戦車がアメリカ軍陣地を蹂躙しはじめるとアメリカ軍の防衛線は一気に崩壊した。

 飛行場上に進出した戦車部隊によってアメリカ軍守備隊の司令部が襲撃され、守備隊司令官らが捕虜になって間もなくアメリカ軍の抵抗は止む。

 上陸開始から2時間足らずで、ウェーク島は日本軍に占領された。


 搭載機数33機の小型空母蒼隼は、潜水母艦大鯨から1年3か月をかけて改造され昭和16年10月に就役した。

 開戦時の蒼隼は、零式艦上戦闘機二一型18機と九九式艦上爆撃機一一型9機、九七式艦上攻撃機二二型9機、零式艦上偵察機一一型3機、九八式艦上哨戒機二一型3機を搭載していた。

 真珠湾攻撃に向かった一航艦の搭載機がそれぞれ最新型式の機体を揃えていたのに対し、蒼隼搭載機は発動機の出力や爆弾搭載量、燃料漕の防御などで見劣りのするやや型落ちの機体ばかりで編成されていた。

 激戦が予想される真珠湾パナマ方面を担当する一航艦の空母搭載機に最新の機体を優先した結果、蒼隼や蒼隼同様就役して間もない千歳型空母には、新型機との交換で一航艦空母から降ろされた使い古しの機体が回されたためだった。

 

 保有する空母の大半を開戦時の奇襲攻撃に投入した海軍は、乗員の錬成に時間をかける余裕もなく、完成して間もないこの空母を実戦に駆り出した。

 日本本土とマーシャル諸島を結ぶ結節点であるウェーク島の攻略は日本軍の重要目標であり、南洋方面の担任であった第四艦隊がその攻略を任されていた。

 本来この作戦では空母部隊の参加は考えられていなかった。

 しかし第一航空艦隊のパナマ転進へのアメリカ艦隊の阻止行動を未然に防ぐ必要があり、揺動として中部太平洋で空母部隊を活動させアメリカの注意を引くことを企図して、蒼隼が第四艦隊に編入されることになる。


 蒼隼と青葉型軽巡2隻、睦月型駆逐艦4隻で編成された機動部隊は、ウェーク島攻略戦が終わると直ちにミッドウエイ島に向けて進路を取る。

 その当時ハワイ周辺では、空母レキシントンを主力とする艦隊が真珠湾を襲った日本軍機動部隊の捜索にあたっていたが、11日に日本軍空母航空部隊によるウェーク島空襲の報を受けて捜索を中止し、同艦隊はウェーク方面に進路を向け進んでいた。

 12月13日、蒼隼はミッドウェイ島南西600キロからミッドウェイ島を中心線として扇状に零式艦偵3機を索敵の為発艦させる。

 同日、帰還した艦偵の収容が終わると蒼隼機動部隊は進路を日本に向けた。

 ミッドウェイ島に日本空母の偵察機が現れたことで、アメリカ艦隊はこれを捕捉攻撃するためミッドウェイ島に向けて急進する。

 レキシントンから発進した偵察機がミッドウェイ島周辺海域を捜索したが、当然ながら燃料を無駄にするだけの結果に終わった。


 日本に帰投した蒼隼は補給と整備を済ませると、12月に完成したばかりの空母隼鷹と航空戦隊を編成し搭乗員の錬成を進める。

 両艦は昭和17年1月には中部太平洋に進出、トラックにいた日進・瑞穂・飛隼の3空母と合流し、オーストラリア北西部の要港ポートダーウィンを攻撃した。

 ポートダーウィン空襲後5隻の空母は、ラバウル攻略戦の支援作戦のためビスマルク諸島とニューギニア島の各所を攻撃する。

 1月24日にラバウルとカビエンの占領が終わると蒼隼と隼鷹は搭載機の一部をラバウルに降ろし、他の空母と別れ最新型の機体が待つ日本に帰投した。

 




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