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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
烈海の波濤
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長征終章

長征終章

 

 昭和16年12月19日、一航艦本隊と別れた第二機動部隊は東太平洋を北上し交通破壊戦を開始、第一機動部隊がパナマ攻撃を始めた23日にはアメリカ西海岸沖400キロで交通破壊戦のため遊弋を続けていた。

 第二機動部隊は艦偵と哨戒機による捜索で商船を探し、艦載機や艦艇を差し向け捕捉撃沈あるいは拿捕していく。


 日本艦隊が北米沖で活動中との報を受けたアメリカ海軍は、未だに真珠湾攻撃の衝撃から立ち直っていなかった。

 錯綜する情報に混乱が続く中、敵情を求めて西海岸の陸海軍基地から哨戒機が日本艦隊捜索のため次々と飛び立ち、サンディエゴ港にいた大小の艦艇も慌ただしく出港準備に入った。

 当時ハワイ方面にあったサラトガとレキシントンは日本艦隊の捕捉を命じられ、急遽真珠湾に残っていた太平洋艦隊の稼働戦力の大半を引き連れ西海岸に向かう。

 続いて23日に起こったパナマ運河攻撃と空母ヨークタウンの喪失により、アメリカ海軍は一層の混乱に落ち入っていく。


 第二機動部隊は西海岸での通商破壊戦を24日で打ち切ると、進路を南西に向ける。

 西海岸沖に急行した米機動部隊はすれ違いで日本艦隊を捕捉できず、燃料補給のためサンディエゴ港に向かった。

 ライン諸島の東方2,000キロの海上で、三部隊に分かれていた一航艦は再び合流し、燃料を補給しつつ5,500キロ彼方のマーシャル諸島メジュロ環礁を目指し航海を続けた。


 年が明けて昭和17年1月12日、第一航空艦隊とその支援艦船は一隻も欠けることなくメジュロ環礁に入る。

 作戦に参加した各艦船はここで整備補給と休養を終えると、いくつかのグループに分かれそれぞれが新たな作戦に向けて環礁を発った。

 昭和16年11月26日に第一航空艦隊が択捉島単冠湾から出撃してから50日近くの長期にわたる作戦は、目的であったアメリカ太平洋艦隊の撃滅とパナマ運河の破壊を達成し終了した。

 緒戦で太平洋艦隊の主力艦の大半とアメリカ東西物流の大動脈パナマ運河を失ったアメリカは、戦争の主導権を長期にわたって日本に握られたまま戦い続けることを強いられる。


 日本海軍にとって12月8日の真珠湾攻撃により始まったこの戦争は、本来考えられていた日米戦争のシナリオから大きく外れる不本意なものだった。

 航空母艦を主力とし航空攻撃を主体とした艦隊決戦でアメリカ太平洋艦隊に勝利し、太平洋の制海制空権を握ったうえで南方資源地帯を確保する。

 続いてハワイ諸島を攻略、拠点化し、米国西海岸の工業力を機動部隊の航空攻撃と艦艇の艦砲射撃で破壊、更にパナマ運河を破壊しアメリカ西海岸経済を半身不随に陥れる。

 その一方でインド洋に進出しセイロンを奪取、紅海へ至るルートを確保し枢軸軍と共同でスエズ運河を奪取し地中海インド洋を打通、地中海から大西洋に進出してイギリスを海上封鎖で締めあげて戦争終結を計る。

 これが総力戦研究所が描いた最良の戦争計画だった。

 

 本来の日本の戦争計画は、日米開戦へのタイムリミットを昭和17年中盤以降になるものとして、それに沿って作られていた。

 海軍の2大空母赤城と天城の装甲空母への改装が終わり戦力化がなった昭和17年6月、日本海軍の空母航空戦力は大型空母4隻、中型空母6隻、小型空母9隻、その他5隻の空母を加えると24隻、搭載航空戦力は1000機を超える。

 同時期のアメリカの空母航空戦力は7隻600機で太平洋と大西洋に分散配置されており、日本軍が圧倒的優位に立つはずだった。


 仏印とタイの紛争により狂いを見せ始めたシナリオは、日本軍の仏印進駐に対するアメリカや連合国の経済報復と強硬な外交姿勢によって完全に破綻した。

 その大きなシナリオの狂いを修正したのが、真珠湾奇襲攻撃とパナマ運河破壊を連続して行う作戦だった。

 莫大な重油を消費するこの作戦を遂行すべく、日本政府はあらゆる手段を使って石油の備蓄を増大させるとともに、大量の給油用の油槽船の確保に努めた。

 作戦に使用される航空機の増産、要港真珠湾やパナマ運河攻撃を可能とするための情報収集と器材の開発や搭乗員の訓練、航路の安全と機密確保のための事前の入念な調査、様々な試練を乗り越えた結果がこの大戦果につながっていた。


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