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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
覇者の曙光
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新型巡洋艦1

新型巡洋艦1

 

 帝國海軍水雷戦隊はユトランド海戦でのドイツ巡戦隊との戦いにおいて緒戦で旗艦の軽巡洋艦綾瀬が大破し指揮系統が被害を受けたため各駆逐隊の連携が取れず、混乱のなか五月雨式の雷撃戦に終始し戦果を得る事のないままいたずらに損害を増やしてしまった。

 この無様な戦闘を招くことになった要因として第一に挙げられたのは、ドイツ艦隊の砲撃により真っ先に大破して司令部機能を喪失することになってしまった旗艦である軽巡洋艦の抗甚性のなさだった。


 通常水雷戦隊は旗艦を先頭に一列縦陣で戦闘行動するのだが、戦隊が会敵して襲撃運動に入る際相手艦隊は当然のことながら先頭の大型艦を戦隊旗艦と認識し、その指揮能力戦闘力を奪うため多数の砲火を先頭艦に集中する。

 ユトランド沖の戦闘においては装甲がほとんどないに等しい軽巡洋艦が旗艦に充てられていたため、ドイツ艦隊の集中砲火は瞬時に水雷戦隊旗艦の指揮戦闘能力を奪うことになった。

 仮に駆逐艦に追随できるほどの速力を持つ装甲巡洋艦が旗艦として配備されていたと想定した場合(もちろん当時該当するような性能の艦艇は金剛級巡洋戦艦以外には存在せず、誰もそのクラスを持って水雷戦隊旗艦に充てようとは考えもしなかっただろう)、駆逐艦、軽巡洋艦の砲火ではその突撃を阻止し得なかったものと考えられる。

 もちろん主力艦から砲火を指向されることもあるだろうが、彼女たちの主砲はより脅威度の高い敵主力艦に向けられることになるため戦艦の副砲程度の破壊力では旗艦の指揮能力に支障は生じないだろう。

 

 ユトランド沖海戦の戦訓を取り入れた新世代の水雷戦隊旗艦を目指した軽巡洋艦加古の建造が計画された当初、この艦は装甲巡洋艦相当と考えられていたため艦名も軽巡に命名する河川名ではなく山名が予定されており、一説によると鹿児島県の開聞岳が艦名として採用される筈だったという。

 その後艦型の見直しにより計画排水量が7,000トンを切ることになったことと主砲に14センチ砲が採用されたこともあって軽巡洋艦として建造され、艦名は兵庫県の加古川から採られることになる。

 強武装重防御の水雷戦隊旗艦という新たなコンセプトで計画された加古は、建造開始後も試行錯誤が続き運用方針のぶれから設計変更が頻繁に行われたため、完成当時の排水量は計画より1,000トンも増加し7,800トンにも及んでいる。        

 加古の排水量の増加は完成以降も続いた。主砲の換装をはじめとして三次に亘って行われた大改装と多くの改修により、その最終時の基準排水量は10,300トンに達していた。

 軽巡洋艦加古の計画時の要目は、基準排水量6,800トン満載時7,500トン、艦本式タービン2基缶室8基8万5千馬力速力34ノット、18ノットで5,000海里の航続力、武装は主砲50口径14センチ連装砲4基8門と8センチ単装高角砲4門、61センチ連装魚雷発射管6基12射線を搭載し、主砲塔や重要部に対12センチ砲防御、さらに水上偵察機1機を搭載予定というものだった。 高速重防御重武装の巡洋艦を実現した設計の結果、艦上構造物の重量が過大となりトップヘビーな艦容になっていた。

 

 加古就役を目前に控えた1926年2月、公式試験において転舵時の艦の傾斜が計画よりも大きくなることが問題になった。

 特に燃料減少時船体が大角度に傾斜してしまい、天候によっては艦が危険な状態に陥るとの試験結果が報告された。

 このため加古は予定されていた就役を延期し、重心を下げるため艦底にバラストを積載する対策を採った。

 しかし就役後の練成訓練中重油を大量に消費し軽荷状態での荒天下の航行時に艦の傾斜が戻らず横転の危機にさらされる。

 このときは緊急に反対舷に注水することで事なきを得たが、帰投後、艦政本部をあげて徹底的に復元力の研究が行われることになった。

 

 復元性研究の結果上構部の重量減のため主砲塔の装甲化を取りやめ簡易砲塔に変更したほか、各主要部の装甲厚の減少、上構物の一部への軽量合金使用、艦底バラストの重量増などの対策が行われた。

 また燃料減少時の重心点上昇への対策として、空になった重油タンクへ海水を注入することが採用された。

 これらの対策が終了して加古が連合艦隊に配備されたのは1928年も半ば過ぎだった。

 

 復元性問題はもちろん加古一艦の問題ではなく、以降の艦の設計に大きな影響を与えた。

 その結果行き過ぎた重武装など、過剰なまでの高性能化の追及に一定の歯止めがかけられることになる。

 しかしロンドン軍縮条約後、海軍は個艦性能優越化のため再び同じ轍を踏んでしまい、その代償として第四艦隊事件という大きな犠牲を払うことになる。





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