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烈海の艨艟  作者: 鳴木疎水
覇者の曙光
18/99

機動輸送研究会

機動輸送研究会


 第一次上海事変において海軍の機動輸送特務艦(以下機動輸送艦艦)天龍及び龍田が多くの戦闘に参加し、そこで見せた活躍は事変での兵力の緊急展開や上陸作戦時での揚陸作業に苦労した陸軍に大きな影響を与えた。

事変前、機動輸送艦は試験的な運用だったため連合艦隊に所属しておらず、事変勃発後は便宜的に上海特別陸戦隊に所属していた。

 当時戦闘において陸戦隊と協力体制にあった現地陸軍により、機動輸送艦による陸兵の輸送や支援砲撃の要請が頻繁に依頼された。

 敵陣砲撃においては初期の頃にこそ何度か齟齬が起きたものの、現地において改善が進み、陸軍から派遣された連絡士官による地形図や敵陣の座標の情報提供が緊密に行われ多大な成果をだしている。

 事変中に上陸戦や沿海部での戦闘を研究するため、陸軍本部から機動輸送艦部隊へ海陸共同作戦の調査班が派遣されている。

 事変終了後陸軍は海軍と共同で機動輸送特務艦での大発動艇の泛水実験を実施し、上陸作戦等における揚陸作戦用輸送艦の重要性を改めて確認した。

 

 第一次上海事変の戦訓を受けて、陸軍は上陸作戦時に必用な船舶として大型の上陸用舟艇母艦及び海軍でいうところの機動輸送艦、更に戦車等の重車両揚陸用専用のLSTタイプの輸送艦の開発に向け研究を進める。

 船艇の建造についての知見を得るため海軍に協力を求めたところ、同様に上陸戦用の艦艇の必要性を感じていた陸戦隊および海軍艦政部より共同開発の申し出があった。

 陸軍と海軍の協議により双方から人員を派遣する形で、水陸両用戦用艦艇開発の為の協議機関が発足することになる。

 機動輸送研究会と名づけられたこの機関は昭和7年7月に最初の会合が開かれており、以降その名称を幾度か変えながら会合は続いた。

 最終的に陸海軍統合造兵局として陸海軍の兵器規格の統一や共同開発、さらには軍需物資の振り分け、配船計画の策定などロジスティックまで協議する国家機関にまで発展することになる。

 艦船の開発と平行して協議されていた陸海軍での運用の分担では、双方の出席者の間で激論が続いた。

 陸海軍の互いの面子と、加えてより大きなウエイトを占める予算分担の綱引きの為、協議は幾度となく障害に乗り上げた。

 上海事変が陸海軍にもたらした危機感から生じた兵力緊急展開構想故に遅滞は許されず、双方が多くの譲歩をしていくことでその方針は急速に固まっていった。

 昭和8年12月に到りほぼ1年半近くかかったものの双方の合意により協議は纏まり、翌年4月に陸海軍海上機動輸送協定の名称で正式に締結発布された。


 機動輸送研究会によって陸海軍の間で締結された海上機動輸送協定により、艦艇の操船及び固有兵装の操作については全面的に海軍の要員によって行われることになる。

 艦艇の武装等艤装品は基本的に海軍が使用する装備を使用するが、例外として陸軍が河川警備等で独自に使用する舟艇と上陸用舟艇については陸軍船舶兵が運用する、大型発動艇や小型発動艇等に搭載する火器については陸軍装備を使用するよう取り決められた。

 この協定の結果、陸軍と海軍陸戦隊の陸戦装備は陸軍式で共用化が進められたため、陸上戦の運用での問題は生じなかった。


 経費負担に関しては、艦艇は基本的に海軍籍に置かれるが維持経費は陸軍の負担が大きく、代わりに平時の運用は陸軍が優先された。

 海軍は自前の機動輸送艦をこの協定とは別に陸戦隊用に整備しており、平時の海軍はこの協定で建造された艦艇を使用することはほとんどなかった。

 建造費用については基本的に折半(陸海軍共同予算として別枠で予算化された)だったが、元々この枠組みに含まれていなかった旧式駆逐艦改造の哨戒艇や巡洋艦改造の機動輸送艦等についても、戦時に陸海共同による海上機動作戦に投入されることを想定して改造費用の一部を陸軍が負担した。

 その一方陸軍でいうところの特殊船、上陸用舟艇母艦に改造することを前提に設計された民間船の建造に対する補助金については陸軍が単独でその費用を負担している。



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