7. 定番メニューに創作性を派手に入れないで欲しい
話された内容を理解はしたが、受けるかどうかは別にして今日は解散となった。
すっかり冷めたカレーパンを食べながら、親父が泊まっているホテルへと歩く。
赤城とは別れて、親父と暗くなりつつある時間にゆっくりと。
「空海の活躍は聞いてるよ。もう100人以上捕えたり、仕留めたりしておきながら、未だ傷を負った事が無いって。
これまでの誰よりも安定して汚れ仕事を任せられるってお偉いさん方が言ってたよ」
結局のところ、赤城も問題児である事は確かだったが優秀だったから選ばれていたし、俺も同じだった。
……このカレーパン、ゆで卵入りか。
「俺の家系は代々そうなんじゃねえの?」
「いや、私は100人超える前に怪我なんて何度もしたし、銃で撃たれた事も何度もあったさ。
少なくとも空海は既に私を超えてるよ」
「んぐんぐ……マジで?」
「マジだ。どのような旅をしたのか見せて貰ったが、訓練を受けてないにせよ、狙撃銃や散弾銃を持った二桁数の相手に、そんなホームセンター製のアイテムだけで無傷で終わらせてしまうのは、空海の才能があってこそだ」
「親父の訓練を愚直にこなしてただけだぞ、俺は?」
「今だから言うけどな、私はあの訓練を完全にはこなせなかった。段階があってな、才能があると見込まれてもその殆どは全てこなせずに、ランクを下げられるんだ。
私は最終的に三つほど落とした訓練しか修められていない」
「マジかー……あむ」
ムズ痒いな。
「それで? 受けるつもりなのか?」
カレーパンを食べ切って。
「あの場で決めはしなかったけど、俺も赤城も決まってるようなもんだよ」
「……行くのか」
「何が待っているのか分からない、そういう探検ってのに心惹かれたってのもあるけど、何より、人を捕えたり殺したりしなくて良い、それでいて刺激的な仕事はやってみたかったんだよな」
俺達のDNAには各種族それぞれに暗号文が仕込まれていて、それを解読するとあるポイントが示された。
その場所を調べ、穴を掘っていくとエレベーターが現れた。遥か地下にまで降りていくようなエレベーター。中に機械を入れて探索させようとすると、帰ってきたのは一枚の紙と匣の数々。
今まで、どこから来ていたのかすら分かる事の無かった匣と、その紙の内容は、創造論を裏付けるのに十分な説得力を持っていた。
『旧き人類と同じ道を繰り返す新人類達よ、貴方達の底力を見せてください。
定員は二名まで。期日は日が最も長く姿を表している日が終えるまで。機会は一度』
それ以降、きちんと二人を選べていない事も分かられているのか、エレベーターの扉は開く事もなかった。
底力というものが何を示すのかも分からない。与えられた期間も長くない。
公にする訳にもいかず、お偉いさん方が閉じられた場所で必死に頭を絞って何を重視するのかを三つ決めた。
対応力。文と武。そして相性。
で、軍隊やら色々検討したが、最終的に人を実際に殺した経験が数多にある暗殺者の俺を武として、そんな俺と懇意にしながらも能力の高い赤城を文として目を付けられた、と。
マジで俺が赤城を殺してたらどうしたんだ? というのは、単純に俺と赤城はそこまでの相性じゃなかった、で終わりだったそうで、その場合はサブ候補の軍隊から選ぶ予定だったらしい。
主に試されてたのは俺じゃなくて赤城だったと言う訳だ。
俺の武に対して足手纏いにならないくらいの身体能力があるのか、という。
とは言え、相当なヘマをしなければ大丈夫だろうという位の信頼はあったようだが。
……ギリギリじゃねえの?
ついでに。
『俺の文はどうなんだ?』
『大学までしっかり出ているなら言う事はない』
『あっはい』
初めて人を殺したのは中学を卒業する間近の時だった。高校に行くかどうかもその時点で自由だったが、出来るだけ普通の人達と同じ学生時代を味わいたくて高校に行った。
初めて仕事をしたのは高校生の時だった。卒業する頃にはもう自活出来る金は十分にあって将来という点では大学に行く理由もなかったが、出来るだけ学生時代というものを延ばしたかったから大学にも行った。
もうその時点で暗殺やらの仕事に慣れてしまっていて、……俺にそれ程の才能があるとまでは思っていなかったが、普通に仕事をして生きる気も無かったのもあった。
取っていたホテルはビジネスホテルだった。夜飯は個室のある飲み屋に行って。
少しだけ酒を飲みながら親父と近況を話す。
「姉と弟は元気か?」
姉弟には両方とも暗殺の才能がなく、訓練を受ける事もなかった。その代わりに、姉は何だかんだ勉学で外交官にまで上り詰めて、弟は何故か知らんが料理人になった。
まあ、好きでやっている事で健全に表の世界で生きている事は少し羨ましい。
……いや、どっちでも一日二桁時間働くのがデフォルトとかは嫌なんだけど。
「秋空は久々に休みを取れたようで、こっちで泥のように寝て食ってを繰り返してたよ。
海里は何でか南米に行くとか……」
「はぁ!?」
「インスピレーションの為だとさ」
「相変わらず良く分かんねえな……」
インスピレーションでも何でそういう方に行くんだか。
「心配だから私もひっそり着いていくか考えているところだ」
「いつから?」
「夏だとさ」
「へー。行けたら行きてえなあ」
「是非とも行ってくれ」
俺に対する心配が透けて見えた。
俺と赤城がこれから行こうとしている場所は、何が待ち構えているか何も分からない、この星の奥深く。
だが。
「ま、不安はあるっちゃあるけど、今回は失敗しても死ぬかどうかも分からないからな。
そういう点じゃ、いつもの仕事より気楽だ」
「……そうか。気を付けろと言っても、何があるかすらも分からないだろうから、言っても仕方ないだろうが……。
最低限、生きて帰ってこいよ」
「当然そのつもりだよ」
丁度来ただし巻き卵は、意識高い創作料理というような代物で、美味かったけど……欲しいものとは違った。
*
2時間程だらだらと喋った後でホテルに戻る。
親父は俺の性質を分かった上で、部屋は別々に取っていてくれた。
清掃カードを裏返して、起こさないでくださいと書いてある面を表にする。
「それじゃあ、本当に気をつけてな」
「へいへい。終わったら南米行くよ」
「楽しみにしておく」
そう言って各々個室に戻れば、俺はコンビニで買ってきたパンやらおにぎりやらをテーブルに置いて、鞄をまさぐる。
その中には道中作ったホームセンター製のトラップやらがまだ残っている。それを窓際やらに設置して、未だ少し緊張が残っているこの体でも、完全に安心出来るような場所になる(親父は信頼してるが、小さい頃から訓練をさせられてきた身としては、一緒に寝る時でも無意識に緊張してしまう)。
正直、今回に関しては途中から赤城の護衛みたいなところもあったからなあ。四日間とは言え薄い緊張を四六時中張っていた感じだ。
シャワーを浴びて、湯船に浸かる。
「はぁ〜〜〜〜……。
終わったら南米行くより、こうやってダラダラし続けてえなー」
ただ、そういうのも意外とすぐ飽きるもんだし、南米行くのもアリだろうなー。
ま、何はともあれ。
「今日は昼まで寝よう」
明日明後日は休み。
役に立つか分からないが、装備の準備やら体のチューニングやらをして、来週には地下へと潜る。
「ま、なるようになる」
ぶっちゃけ、そう言うしかないのに不安が無いと言えば嘘だったが。
赤城の半分くらいサイコパスのような……実際半分くらいサイコパスなアイツの突き抜けた溌剌さを見てると、実際なるようになりそうな予感はする。
「そう信じますか」
*
ピンポーン…………。
ピンポーン。
ピンポーン。
ピンポーン、ピンポーン。
ピンポンピンポンピンポンピンポン!
「赤城だろ! うるせえ!!」
「ラーメン食べに行きましょう! ギットギトなの!」
ドアの外からそんないつも通りの溌剌とした声が届いてくる。
「あー、へいへい……、ま、付き合いますよ」
「そういや、お前の親ってどういう奴なの? 昨日も来てなかったけど、聞いて良いヤツか?」
「過激な宗教団体の教祖と、その妾です! 父は全て計算づくで信仰を集めていたのがその母によってばらされて、今は元信奉者の報復を恐れて国外逃亡中ですね!」
「お、おおう……?」
「でも、父と母からは色んな事を学べたので、別に恨んだりはしてませんよ!
今の自分、結構好きですし!」
「母は?」
「ばらしたのが母だと父は今でも気付いていないのか……いや、気付いているのかもしれませんが、その母も逃亡中の父を支える振りをして好き勝手にやってるようです!
毎年、絵葉書が来るんですよ。まだまだ元気にやってるようです!」
「……何か、お前って言う奴がどうして生まれたのか、理解出来た気がするわ」
大通りの信号を渡ると濃〜い、脂やらニンニクが煮込まれた臭いが鼻に届いてきた。
高級な住宅街からちょっと離れた場所にあるその店には、意外と行列が出来ていて。
人って、やっぱジャンキーには抗えねえんだな。
蒼樹:
父: 職業: 暗殺
姉: 名前: 秋空、職業: 外交官
弟: 名前: 海里、職業: 料理人
定番メニューは普通であって欲しい。
赤城:
父: カルト宗教の教祖。でも母に色々と暴露されて海外逃亡中。
母: 父の妾。父の宗教が全て計算づくである事を暴露し、それをばらしたのが自分だという事を隠しながら父と共に海外逃亡中。
創作系が出てこようが基本何でも楽しむ。
詳細なプロフィール:
蒼龍・蒼樹空海:
種族: 蜥蜴人
性別: ♂
外見: 大柄、深い蒼の鱗
年齢: 20代
職業: 暗殺
学歴: 大卒
家族: 父、姉、弟、他?
好きな食べ物: あっさりしたもの。でも、こってりしたものも食べる、というかそれで最終的にあっさりしたものが好きと再認識するタイプ。食べ物に関しては結構保守的。
性格: 享楽的。でもモラルは意外とある方。
性癖: 受けでも攻めでも同性でも異性でも楽しめればOK。でも、どちらかと言えば攻め。
特殊: 五感、特に舌の嗅覚が優れており、殺気を感じ取る事が出来る。それによって今まで100以上の仕事をこなしながらも無傷。
赤城に対して: ヤベー奴。でも、いつでも元気で機転も効くところとかは頼もしくて、居てくれて助かると思うところも。
武: ☆☆☆☆☆☆☆(比肩する者は早々居ない)
文: ☆☆☆(普通の大卒)
意外と常識的なところが多い凄腕暗殺者。
父をも凌ぐ暗殺の才能を秘めて生まれた3人姉弟の真ん中。
その才能を見出されて小さい頃から訓練を受けていた。クソな幼少期と本人は言っているが、半分以上は淡々と最上位の訓練をこなす当人に原因があるのをつい最近まで知らなかった。それと何だかんだで普通に働いて生きるのも嫌だなーって早くから思い始めていたので、そんな幼少期も受け入れている。また、家族仲は良好。
初めて人を殺したのは中学生後半。初めて暗殺をこなしたのは高校生。多分、そこあたりで性格とか性癖とか、少し狂ってる。
暗殺稼業で生きる事を早くから決めつつも普通の暮らし、学生生活を長引かせたかったのもあって、大学まで普通に卒業する。
その後は、父も深く関わっていた国の裏方の機関とより深く関わって、赤城がその機関の主な依頼者として深く関わっていくように。
戦闘スタイルは、自身の鍛え上げられた五感に従っての近接戦闘がメイン。
父の教えで銃にも特注の武器などにも頼らずに、どこにでも手に入るようなものを駆使して戦える。
そういうところで、ホームセンター製のアイテムを軽く加工したものをメイン武器にしている。
防具の中に数多の暗器や爆弾を仕込み、また尻尾にも鉄球を嵌めているのが基本装備。
遠距離からは暗器、鉄球、爆弾が飛んできて、近距離では暗器を直接突き刺したり、鉄球で骨を砕いたり。
もちろん銃器なども基本的に使えるが、動き続けるスタイルが合っているからか、狙撃は苦手。
攻撃のバリエーションも多彩だが、やはり一番長けているのは防御。
鍛え上げられた五感は、背後から来る敵も、銃弾の射線も、狙撃手の場所さえもかなりの精度で掴む。それもあって、暗殺者でありながら傷がない。
歴史にあんまり興味がない。
強さはジョン・ウィック以上、ファブル(佐藤明)以下くらいを想定してる。
でも、佐藤明と戦ったら、尻尾を活かしてかなり良いところまで持っていきそうなイメージ。
紅狼・赤城紅葉:
種族: 狼人
性別: ♂
外見: 大柄、夕焼けのような紅の毛皮
年齢: 20代
職業: 国の裏方
学歴: 大卒
家族: 父母、他?
好きな食べ物: 元の良さが霞むくらい色々魔改造されたり、特徴が際立っているものが特に好き。でも基本的に全部好き。
性格: 享楽的。モラルは理解しながら無視するタイプ。
性癖: 受けでも攻めでも同性でも異性でも。でも受けの気質の方が強め。
特殊: なし。でも、大抵のことはそつなくこなすのと、趣味が危険な方向に突っ走っているので吹っ切れたらヤバい。
蒼樹に対して: 自分以上にある意味ヤバい人。銃弾を容易く避けたり、悪人だろうと躊躇なく何人も流れるようにサクサク殺していくのを見ると流石に引く。でも、意外と可愛いくらいに常識人であるところもあってとても頼もしい。
武: ☆☆☆☆(普通の軍人くらい)
文: ☆☆☆☆☆☆(学力もあるけど、それ以上に地頭がかなり良い)
カルト宗教の教祖と、その妾から生まれた一人っ子。
小さい頃から色々あって、今の人格が形成されていった。そのカルト宗教が母の手によって崩壊した後は、国に保護されて健全に素質を開花していく。ただ人格は生まれ持ったものもあったのかヤバいままなのもあって、国の裏方の機関に属しているのはコイツを野に放したらヤバいと言う思惑もあったり。
一時期は機動隊とかにも属していたりして、戦闘能力は並以上にあったりする。それ以上に文が強めで、危険な事が趣味なのもあって、機転もかなり効く。
ただ、実際に人を殺した事はほぼないし、ホテルからの脱出の時とかは吹っ切れていただけなので、殺人に対する躊躇は普通にある方。
また、試されていると分かった後からは思い描いていた過激な選択肢が基本無しになったのと、機動隊に属していても、蒼樹に着いていくのが精一杯だったり。
歴史にあんまり興味がない。
あんまりモデルとか無いけど、最近読んだマンガの中で一番近いのは、
ジャンケットバンクの蔵木慎之介(いつも笑ってて、事あるごとに賭けません? って言う銀行員)