晩御飯
家の扉が開く。
私「おかえり」
妻のホイズが帰って来た。
子供達「おかえり」
妻「ただいま」
ホイズは梯子から降りて言う。
私「さて、神経衰弱は終わりにして、
晩御飯を作るか」
料理場に向かう。
神経衰弱は2時間程したが、
最初の7分20秒の記録から
5分40秒まで短縮できた。
5分切りも近いだろう。
最初は汎用遊戯用紙で
色んな遊戯をしようと思ったが、
フテチンパは神経衰弱を気に入ったから、
ずっと神経衰弱だけをした。
妻「今日は牛乳を買ってきたから
牛乳鍋を食べよう」
妻が料理場にやってきて言う。
妻の手には牛乳が入った、
円柱型容器が握られている。
私「牛乳鍋か、いいな。
今日は給料日だし、1年間の労働を祝おう」
牛乳は値段が高い食品だ。
動物性食品は愚富人が食べる為、
愚働人はあまり食べられない。
私達よりも人種階層が下の騙幸人は
牛乳を一生,口にする事がないだろう。
棚を開けて、
牛乳鍋に合いそうな食材を探す。
牛乳は主食と同程度に、
生物学的熱量が高いから、
主食として食べる食材は入れる必要がない。
鍋に入れる具材は、牛乳が染み込みやすい
葉菜類が良いだろう。
菠薐草,若布,白菜、
そして、白柔死脳も
棚から取り出し、料理場に置く。
次にまな板を取り出し、
菠薐草と白柔死脳を小さく切っていく。
若布は最初からバラバラだから
切る必要がない。
妻は鍋に牛乳を入れて、
七輪の上に乗せて温めている。
沸騰するまで温める訳ではなくて、
牛乳鍋は60℃くらいの温度で
食べるのが普通だ。
この家に温度計はないから、
温度の調節は味見をして行う。
妻「そこにある塩を取って」
私「あぁ」
右にある、塩の入った小さな箱を妻に渡す。
妻はそれを受け取ると小さじ2杯、
塩を牛乳に入れる。
牛乳と野菜だけでは、
塩分が足りないので、
牛乳鍋では塩を入れるのだ。
~牛乳鍋ができた。
4つの皿に分けて盛り付け、
食卓に並べる。
フテチンパ「美味しそう。
牛乳鍋は久し振りだ」
デケチンパ「前に食べたのは
自分が騙幸労働学校に
入学した時だったよね」
席に座る。
私「さて、食べるか」
「おい、女はいるか?母親の方だ」
隣の家から壁越しに
大きな低い声が聞こえる。
どうやら、隣の家に愚富人が来たらしい。
その愚富人の声は大声で、騙幸人で言う
「怒っている声」なる物らしいが、
彼らはいつもこの声だ。
フテチンパ「やっぱり美味しいね。
牛乳鍋は」
私「愚富人も食べる食物だからな」
牛乳は子蝟胃夢の体液から
苦味を引き起こす成分や毒を除いた物だ。
本来,牛乳と言う言葉は、
牛という動物の母乳を
指していたらしいが、
地下で人類属が暮らす様になってからは
牛乳の代替品である、
子蝟胃夢の体液を加工した物が
牛乳と呼ばれる様になった。
同じ様な食材はたくさんあって、
人参,茄子,菠薐草,
白柔死脳,若布などは全て、
名前の元となった食材がある。
「あぁぁ...ああぁぁ」
愚富人の男の声が響く。
フテチンパ「気持ち良さそうだね」
私「愚富人は性行為で
強い快感を感じるからな。
騙幸人もそうだった筈だ」
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妻「私も今日,客の愚富人と性行為したけど
やっぱり、声が大きかった。
女性の愚富人の方が声が大きいけど、
男性でも結構,大きい」
私「騙幸人は愚富人に比べたら、
声が小さくてそもそも、
声を出さない人が多いらしい。
騙幸人が性行為するのは
学校の多目的室だから聞く機会はないが。
特別労働を取り仕切る事務職員でも
騙幸人が性行為する時は
部屋の外にいるから
騙幸人の小さな声は聞こえないそうだ」
デケチンパ「そうなんだ。
そう言えば愚富人には、
浮気という言葉があるんだよね?」
私「あぁ、そうだ。
愚富界では、つがい以外の相手と
性行為する事が悪とされている」
愚働人にも似た様な感覚があって、
つがいを持っている愚働人に対して、
性的な度合いの強い、
皮膚圧迫施術をする事や
自分がつがいを持っている場合、
つがいでない愚働人に、
その様な皮膚圧迫施術をする事を
してはいけないと感じる。
だが、相手がしてもいいと言うなら、
そうなのだと感じて応じる。
嘘を吐くという高度な事を
愚働人はしないし、
愚富人がそれをすると知っても、
本能的に真だと受け止めてしまう。
フテチンパ「騙幸人はどうなの?」
私「現代の騙幸人は
つがいを作らないから、
浮気という言葉を持たないが
地上文明時代ではつがいを持ち、
浮気という言葉を持っていたらしい」
フテチンパ「そうなんだ。
やっぱり、愚富人と騙幸人は
似てる所が多いね。
愚富人は浮気を悪としてるなら、
愚働人と性行為する愚富人は
みんな独身なのかな?」
私「いや、違う」
フテチンパ「え.、じゃあ、
時と場合によっては...
浮気は...悪くなかったり...
浮気だと...されないの?」
フテチンパが混乱する。
無理もない、愚富人の精神は難解だ。
私「それも違う。
悪いとわかってて...するんだ」
フテチンパ「え?悪いとわかってたら
しないでしょ?
するなら悪くないんじゃないの?」
私「いや、愚富人はする」
フテチンパ「...そうなんだ。
なんか不思議」
私達にとって、
悪い事をしないと言うのは、
腐った食物を食べない事の様に当然で、
例えどんな調味料がかけられても
腐った物は食べない様に、
私達は悪い事はしない。
むしろ、私達がしないからこそ
それは悪い事だという感覚もあるし、
「悪い事をする」という概念は
私達にとって理解が困難であり、
愚富人を知らないまま生きてたなら
死ぬまで発想すらしないかもしれない。
それを愚富人に言うと、
気取っているのか、自慢しているのか、
愚富人を批判しているのか
などと言われるが、
私達が悪い事をしないという事実は
あまりに当たり前の事だから、
何も思う事はないし、
愚富人が悪い事をするのも、
そういう事実があると
認識する以外の事はない。
私達には怒りという感情はなく、
その感情から派生した正義感、
悪に対する怒り、
悪を善に矯正したいという感情を
私達は持たないからだ。
「悪い事をする」という事は
時間を掛ければ理解はできる。
だが、私達が悪い事をしないという事実に
愚富人が怒りという感情を抱く事は
まるで意味が分からない。
私達には愚富人や騙幸人の精神が
酷く難解に思える。
なんでも、愚富人と騙幸人の精神は
ZD換算で知能指数で120程だそうだが、
愚働人のIQは80だ。
愚富人と騙幸人はその高いIQに応じて
感情も発達している。
だから、私達には理解が難しいのだ。
脳の発達度合いで言うと、
獣耳を持つあの人類種がが最も優れていて、
次に騙幸人と愚富人、その次に愚働人、
1番,下が哀愚人だ。
支強人がどれくらいの
知能なのかは不明だが4つの人類種を
絶対的に支配している事を考えると
猫白人の知能を上回っているかもしれない。
~晩飯を食べ終わった。
妻「今日は料理菓子を買ってきてるよ」
妻が紙袋からおにぎりを取り出す。
フテチンパ「おにぎりだ!」
おにぎりは甘いお菓子で、
愚富人が主に食べる高級品だ。
フテチンパ「この膜は外すの?」
私「いや、そのまま食べれる」
おにぎりは澱粉膜の膜に包まれている。
早速、4つ置かれた、
おにぎりの1つを食べる。
甘い。そして、柔らかい。
噛んでいくと甘味が増していく。
愚富人は米をそのまま食べるのは
味が薄くてできないそうだが、
こんなにも甘いのに
これ以上,何かを掛けたり、
混ぜたりするのは考えられない。
米を飲み込むと、
胃がグオンと熱くなった気がした。




