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鳳凰

~綿羊の毛刈りが終わった。

3時間くらいかかった気がする。


ファミ「次は鳳凰に餌やりして、卵を取る」


私「わかりました」

鳳凰は赤くて大きい鳥だ。


ファミさんが樽に綿を入れて、

その樽を転がしながら、

鳳凰のいる場所へと向かう。

それを私が()いて行く。


私が暮らすミャラリ村は、

牧畜で飼っている動物が3種類いる。


綿羊、鳳凰、ぶしだ。

綿羊は綿と(ミルク)を、鳳凰は卵と肉を、

ぶしはたくさんの肉を私達にくれる。


ただ、村、市によっては

ぶしが飼われてない。

食べる為に殺しちゃうのは

可哀想だからだ。


私はぶしの美味しさを知っちゃったから、

きっと、ずっとぶしを

食べ続けると思うけど、

実際にぶしを屠殺したら、

その気持ちも変わるかもしれない。


ぶしの屠殺を経験して、

ぶしを食べなくなった人は多いし。


それに、お肉に関する付き合い方は、

ぶしを食べるか食べないかだけで

分かれるわけじゃなくて、

ぶしを食べる村でも、

壁外に住んでる、2足歩行の動物、

ドガラやモロユマを食べない村が多くて、

私の村もその2匹の動物は食べない。

単純に人間っぽいからだ。


「ケカーコッコカーコッコカーコッカココココ」

鳳凰が音楽律動的(リズミカル)に鳴く。

この律動(リズム)は色んな曲で使われてて、

鳳凰律動(リズム)と呼ばれてる。


さて、鳳凰の所に着いた。

挿絵(By みてみん)

鳳凰は体長1mで鳥としては大きめだ。

赤、黄、緑の3色からなる体毛は

豪華絢爛といった感じで、

多くの村で信仰の対象になってる。


鳳凰は高さ1mの柵に

囲まれて、14匹いる。

鳳凰は飛べない鳥だから、

柵だけで十分なのだ。


ファミ「まず、右にある餌箱を開ける」


私「はい」

横0.75m縦1mくらいありそうな箱を、

パカっと上に開ける。


ファミ「で、箱の手前にある、

大きなおたまで餌を掬って、

柵の中にある餌入れに入れる」

黄色い粉々の餌を、

長さ75cmくらいのおたまで掬い、

真ん丸の餌入れに注ぐ。


すると、すぐさま鳳凰が

餌入れに群れて、

奪い合う様に食べ始める。


ファミ「あとは、全部の餌入れへ、

同じ様に入れるだけだ」

餌入れはあと7つ。

サッサッと餌入れに餌を入れて行く。


ファミさんは鳳凰の柵囲いの横にある、

物置を開けて、綿干し機を取り出す。

綿干し機は綿を伸ばして固定して、

綿が乾いた時に、

グニャグニャに曲がらないようにし、

日光を浴びさせて、早く乾かす。


綿干し機の所に、

綿の入った樽を持って来て、

ファミさんが樽から綿を取り出す。

水に濡れた綿はもう綿というより、

長い糸の集まりだ。


私「この餌って

何が入ってるんですか?」

ふと気になる。


ファミ「モロコシと小麦だ」


私「へー、人が食べるのと変わらないんだ」


ファミ「あと、着色料も入ってるけどな。

その餌、かなり黄色いだろ?」


私「あー、確かに」


ファミ「チンポポの花を潰して

混ぜたのを入れてある。

チンポポは刺身の付け合わせに、

人も食べるから栄養がある」

チンポポの花びらは

刺身と一緒に食べると

シャキシャキして美味しい。


チンポポは黄色い大きな花で、

どこにでも生えてて、

子供がよく外で遊ぶ時に食べる。

あくまで薬味だから、

食べ過ぎるとお腹を壊すから、

よく子供が外でちんぽぽを食べ過ぎて、

お腹を壊してる。


鳳凰の餌やりが終わった。

すると、その瞬間、

ファミさんが話しかけてくる。


ファミ「次は卵を取る」


私「あ、はい」

ファミさんはやっぱり、変な人だ。

目を見ずに、こちらを見ずに、

独り言を言うみたいに、

人に話しかけてくるから、

ちょっとびっくりする。


あと、「卵を取ろう」じゃなくて、

「卵を取る」って言うのも変だ。

取るのは私なのに。


鳳凰のいる囲いの中に入る。

ファミ「鳳凰の柵囲いの中の角に、

藁籠があるから、その中に卵を入れる。

割れたらみんなが困る」

ファミがチラっと私を見る。

念を込める目つきだ。


私「はい」

卵を割らないようにしなきゃ。

卵って高いし。


大家族で働く時、

何かしら壊したりしても、

弁償したりしないけど、

大家族の皆に迷惑がかかるのは確かだ。


膝を着いて、藁籠を拾い、

色んな所に散らばってる卵を拾ってく。

卵は長さが13cmあって大きいから、

気付かずに踏んじゃう事は多分ないだろう。


卵をしっかり両手で持って、

1個ずつ丁寧に藁籠に入れる。


そう言えば、最近、

卵料理,食べてないな。

今日の婚姻の儀式で食べる

御馳走の為に貯めてたのかな?


鳳凰の雌は群れで生きる動物で、

卵を産む時間位置(タイミング)には決まりがある。

群れの半分が同じ日に卵を産んで、

その1日後に群れのもう半分が卵を産む。

だから、14匹の鳳凰がいる、

この柵囲いでは

卵が2日で14個,取れる。


他にも鳳凰の柵囲いは6つあって、

合計、1日42個,取れるらしい。

これを村民、243人で分けるのだ。

毎日,食べられる様な量じゃない。


かと言って、鳳凰をもっと買うと、

鳳凰は卵の量に比べて、

餌をたくさん食べるから、

今度はトウモロコシや

小麦が足りなくなっちゃう。


統治機構の中心、中央市中央村や、

中央県中央市などの都会に住む、

お金持ちが羨ましい。


ミャラリ村は中央村じゃないし、

中央市に属してる訳でもない。


お金持ちの人は卵をたくさん食べる。

卵焼き(エッグケーキ)に、卵入りの小麦牛乳麦綿(ホットケーキ)を食べる。


綺麗な黄色の卵焼き(エッグケーキ)に、

黄色い小麦牛乳麦綿(ホットケーキ)

めったに食べられない御馳走だ。

今日の晩御飯は出るのかな。

楽しみだ。


卵焼き(エッグケーキ)は黄色くて可愛くて、

女子に人気の食物で、

私もミアと食べに行った事がある。


卵焼き(エッグケーキ)は砂糖と濃縮樹液(メープルシロップ)

たくさん入ってて、甘くて美味しい。


私「卵,集め終わりました」


ファミ「知ってる。

次はその卵を藁籠ごと、川に沈める」


私「はーい」

「知ってる」ってなにさ。不愛想だな。

あの人から社交的で明るい、

ミアが生まれたのが不思議だ。


動物広場の外に向かって、

卵の入った網籠を持って歩く。

卵は殻が穢れてて、

水でしっかり洗わないと、

お腹を壊しちゃう。


これは区や国の創造機関、

リラヌモの研究でもわかってる事だ。


穢れとは目に見えない汚れ、

闇の神気の事で、

時間と共に増えていく性質がある。

穢れていくと、毒が生まれるから、

食物は穢れをできるだけ落として、

穢れが増える前に食べなきゃいけない。


でも、穢れると美味しくなる食物もあって、

納豆とかがそうだ。


穢れると食物は気持ち悪い見た目になって、

ネバネバ、トロトロと

感触も気持ち悪くなる。


神社に務める巫女さんは

穢れた食物を食べる事ができなくて、

納豆や味噌がそうで、

神社と縁の深い村も同様だ。


巫女さんは他にも

食べていけない物があって、

見た目が汚いぶし、

鳳凰のアソコから出てくる卵、

土に埋まってた芋など。

逆に神聖な食物は多く食べられて、

鳳凰の肉やトウモロコシは

よく食べられ、

巫女食という独自の料理がある。


動物広場の柵の所に着いた。

柵の下から卵の入った藁籠を通す。

そして、そこから8歩くらい、

後ろに下がった後、走って、

柵を跳び越える。


ふぅ。柵は高さが1mくらいあるから、

助走がないと跳び越えられない。

柵の入口は別にあるけど、

それは一箇所しかないから、

跳び越える事が多い。


藁籠を持って、川の元へ行き、

藁籠ごと卵を川の中に沈める。


川の水は綺麗で清くて、

穢れをよく洗い落としてくれる。


それに川の水は冷たいから、

卵を入れておくと冷やされて、

穢れるのが遅くなる。


野菜も家の川の中に

置いてある物が多い。


さて、ファミさんの所に戻ろう。

軽く走ってサッと柵を跳び越える。


そう言えば、昔、フウマが、

柵を跳び越えようとした時、

服が引っ掛かって転んじゃって、

泣いた事がある。


子供が跳び越えるには

ちょっと高いんだよね。


フウマは今9歳で、

最近は泣く事もなくなってきたけど、

泣いて「フウリー」って言う、

フウマも可愛かったなぁ。


今のフウマは生意気だし、賢くなった。

フウマはよく私に

何か聞いてくる事が多かったけど、


最近、フウマが知ってて、

私が知らない事があると、

冷めた目で見てくるし、

このまま成長しなければいいのに。


ファミさんの所に着いた。

ファミ「フウリにしてもらいたかった

牧畜の仕事はもう終わりだ。

いつもの農耕の仕事に戻っていい」


私「わかりました」



参考画像

鶏卵と鳳凰の卵

挿絵(By みてみん)


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