表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/106

夜道に語るケモテザニヌ

ふと、時間が気になる。

私「そう言えば、

ここって時計あったっけ?」


ミア「あるよ。ほら」

ミアが指さした先に時計があった。


私「18時半かー。

まだ、あまり時間,経ってないんだね」

輪投げがあっという間に

終わったからかな。


ミア「うん」


私「この後、何して遊ぶ?」

席から立ち上がる。


ミア「んー、そこら辺、一緒に歩こ」


私「わかった」

ミアとお喋りしながら、

散歩する事はよくある。


ミア「ごちそうさまでしたー」

私「ごちそうさまでしたー」

挨拶をして店を立ち去る。


店主「ミアちゃんとフウリちゃん、

また来てねー」


店を出て、夜空を見上げる。

今日は月が出てないみたいだ。

ミア「フウリってさ、あんまり、

お洒落しないんだね」

ふと、ミアが私の服を見ながら言う。


私「んー、お洒落かー、

あんま気にした事ないんだよねー」

服は着心地さえ良ければ

なんでもいいのだ。


ミア「フウリってさ、

いつも(おんな)じ様な服しか、

着てなくない?」


私「あー、の黒い上肌着(シャツ)とか?」

この上下着(シャツ)は5着くらい持ってる。


ミア「そうそう。色とか柄が付いてる、

上下着(シャツ)とか着ないの?」

ミアの上下着(シャツ)

黄色い布地で猫の刺繍が付いてる。


私「んー、なんか恥ずかしい。

私はミアみたいに可愛くないし」

私は地味だ。


ミア「フウリも可愛いよ。

落ち着きがあって、

私にはない魅力,持ってるよ」

その言葉に全然、実感が湧かない。


私「そっかなー。

私に魅力なんてある?

ミアみたいな可愛い人は

可愛い服、着たら映えるし、

綺麗な人は綺麗な服、

着たら映えるけど、

私は地味だから、

なに着ても映えないじゃん」


ミア「大丈夫だよ。

私がミアに似合う服,探すから。

なんなら、作ったっていいよ」

ミアは自信あり気に言う。


私「いいよ。

服,作るのってお金も時間も

たくさんかかるじゃん。

ミアは誰かの服、

作った事とかあるの?」

ミアは昔から裁縫が得意で、

趣味でもあるけど。


ミア「ニトラに3着くらい作ってるよ。

ニトラには、服の真ん中に、

虎の刺繍がある服とか、

かっこいい服を作ってる」


私「あー、そう言えば、

その服、前に着てたの見たよ。

あれ、ミア、作ってたんだ。

すごいじゃん」

結構、凝った作りをしてたから、

店で買った服かと思ってた。


ミア「うん。

虎の刺繡は難しかったよ。

でも、ニトラが、どうしても、

かっこいい虎の刺繍に

して欲しいって言うからさ。

ケモテザニヌに入隊した時に

記念に作ってあげたの」


私「え、ニトラって、

ケモテザニヌなの?」

ケモテザニヌは市を囲う壁の外に行く、

漁師や狩人の身を

危険な動物から守る人達だ。

市直轄の組織で、厳しい試験に

合格しないとなれないし、

仕事は危険で死と隣り合わせ。


ミア「うん。15歳になるちょっと前に、

本入隊試験に合格したの」


フウリ「へー、すごいじゃん。

ケモテザニヌって、

厳しい訓練を何年もして、

危険な動物と実際に戦う、

本試験に合格しなきゃなれないんでしょ?

男子は誰でも1度はなりたいと思うけど、

大抵は諦めちゃうし」

女性でも幼い頃は憧れる人が多い。

女人禁制だけど。


女人禁制の理由はいくつかあって、

単純に女性は、

男性より力が弱いというのと、

男性が女性を危険な職に

就かせたくないのと、

動物を殺すと一生,消えない、

穢れを抱く事になるけど、

女性は清らかであり、

穢れてはならないとされているからだ。


汚れ仕事を女性がするのは

あまり好まれなくて、

牧畜での動物の屠殺も男性がしてる。


ミア「よく、ケモテザニヌになるのは、

難しいって言われてるけどさ、

結構、ケモテザニヌって

人数,多いし、訓練すれば

大抵の人はなれるって、

ニトラは言ってた」


フウリ「あれ、そうなの?」


私「ケモテザニヌってさ、

何人いたっけ?」

選りすぐりの印象(イメージ)がある。


ミア「108人くらい。

市の人口が2187人くらいで、

20人に1人、男性の10人に1人だから

そんなに珍しくないよ」


私「そっかー。

でも、10人に1人って、まぁまぁすごいよ。

だって、外にいる動物って怖いじゃん。

成人の儀式で1回だけ外に行って、

外の動物を見た事あったけど、怖かった。


人と同じくらい大きな生物(いきもの)が多いし、

モロユマなんて、

どこから石を投げてくるかわからない。


だから、壁の外に憧れを持って、

危険を承知で行こうと思える、

勇敢な人は憧れるというか、尊敬するなぁ。


そう言えば、タニシも子供の頃は、

ケモテザニヌに憧れてたけど、

成人の儀式で外の動物を見た時に、

「あ、これと戦うのは無理だ」って

なっちゃったんだって」


ミア「んー、ニトラは勇敢というか、

無感情で無神経だからね。

何をするにも大雑把でさ、

だから、外の動物が怖くないんだよ」


私「確かに、ニトラって

寡黙であんまり感情を、

表に出したりしないよね。

なに、考えてるのかよくわかんない」


ミア「あー、それはあるよね。

でも、仲良くなったらわかってるんだけど、

ニトラってなに考えてるのか

よくわからない、気難しい

性格してるんじゃなくて、

なにも考えてないだけだから」

ミアが笑いながら言う。


私「えー、そうなの?」


ミア「そうだよ。

ニトラって結構,子供っぽくて、

子供に好かれるから、

よく子供と遊んであげてるんだよ。

いや、一緒に遊んでるって感じかな」


私「へー、意外。

ニトラって寡黙で、

誰かと親しくしてるの見た事なかったから、

子供に好かれたりするのって意外だなー」


ミア「うん。

私も知った時,意外に思った。

きっと、かっこいいのが好きで、

ケモテザニヌに入隊したのも

子供っぽいからだよ。

子供の夢を持ち続ける人って

大抵、子どもっぽいから」


私「そっかー。

でも、ケモテザニヌの人が夫ってさ、

なんか、複雑な気分じゃない?

だって、動物に殺されちゃうかも

しれないんだし」

もし、私の好きな人が、

そんな職業に就いてたら、

毎日、心配で仕方なくなる。

ケモテザニヌは1年,働いて

死んじゃう確率は1%、

24年,働いたら5人に1人、

36年,働いたら3人に1人が死んじゃう。


ミア「んー、まぁ、それは仕方ないよ。

ニトラのしたい事なんだし。

したい事もできずに生きてくより、

したい事に命を懸ける方が

男性は好きでしょ。


確かに、ニトラには

戦わないで欲しくもあるけど、

私達の生活は漁業と狩猟がなかったら、

成り立たないし、

誰かがやるしかないんだよ。


それはきっと、貧乏くじなんかじゃなくて、

誇りのある仕事だから、

ニトラの仕事を、ニトラの生き方を

否定しちゃ可哀想じゃん」


私「そっかー」

私はそう簡単に

割り切れる気がしない。


ミア「それに、ニトラは

12年雇用で働いてるから大丈夫だよ。

12年雇用で死んじゃう確率は

10%くらいだから」


私「10%って多いよ...

んー、ミアってさ、

なんか見た目よりも

大人びてるよねー。


色々、考えてるというか、

しっかり割り切れてるというか。

可愛くて明るくて、

こんな事,言ったら怒られるかもだけど、

子供っぽくて、なにも、

考えてなさそうなのに、

ほんとは色々、考えてるよね。ミアって」

多分、心は私の方が子供だ。


ミア「だって、子供っぽい事と

子供なのは違うじゃん」


ミア「だって、子供っぽい事と

子供なのは違うじゃん」


フウリ「そうだね」

子供みたいに可愛くて、

感情豊かなのと、

子供みたいに自分勝手で

我儘なのはまた別だ。


ミア「そう言えばさー、

ミアって気になってる人とかいないの?」

話が変わる。


私「うーん。いないかな」

私がよく目にする人は、

みんな見慣れた人達だ。

気になったりはしない。


嫁入り、婿入りで他の村から来た人とか、

人によっては興味が湧くけど、

少しの間だけだし、

特別、男性に興味が湧いたりする事もない。


ミア「そっかー、いないかぁ。

もしかして、ツミキの事、

引きずってる?」

ミアがからかう様に言う。


私「ツミキは違うよ!

ただの世話してた男の子だし」

優しくしたら、懐いてきたから、

仲良くしてあげてただけだ。


ミア「ふーん。そういうもん?」

ミアがニヤニヤしながら言う。


私「そういうもんだよ!」

酷い疑いだ。

私の事を、恋愛対象として

ツミキが好きだった、

男子愛好女性(ショタコン)とでも、

思ってるのかな。


ミア「でもさぁ、なんだかんだ言って、

フウリとツミキは1歳差だったし、

そういう関係になっても、

変じゃなかったよね」

ミアが淡々と言う。

からかってる訳じゃなくて、

素直にそう思ってるみたいだ。


フウリ「そうかなぁ...

ツミキは子供っぽいじゃん。

12歳くらいに見えるよ」

前から、ツミキと

そういう関係になるのは

想像できなかった。

私の中ではやっぱり、子供なのだ。


ミア「じゃあさ、フウリはさ、

結婚するとしたら、

どんな男性と結婚したいの?

歳上?歳下?それとも、同い歳?」

ミアが躁度(テンション)高く,聞いてくる。


フウリ「それは...歳下」

私は素直になるのが苦手だ。

誰かに甘えたいと思う事はあるけど、

歳上の男性には緊張しちゃって、

甘えれる気がしない。


それなら、接してても

あまり、緊張しない、

歳下の男性に甘えられる方が良い。

いや、むしろ歳下の男性だからこそ、

甘えられる気がする。


ミア「なんだ、年下なんじゃん」

ミアが軽く笑う。


フウリ「別にいいじゃん!」

ミアがまたからかってくるから、

語気を荒める。


ミア「やーい、男子愛好女性(ショタコン)


私「男子愛好女性(ショタコン)じゃないってば、

確かに、男子(ショタ)に、

懐かれるのは悪い気しないけど、

結婚したいとか思わないよ。

恋愛対象じゃないもん。

可愛がるだけだし」

男子(ショタ)飼育動物(ペット)みたいなもんだ。

可愛がったり、優しくしたりはするけど、

結婚したりなんかしない。


ミア「そうなのかなー?」


私「そうだってば!」

ミアはしつこい。


ミア「ちなみに、

可愛がるのは何歳までで、

恋愛対象として見れるのは何歳からなの?」


私「えー、うーん、

12歳までは恋愛対象じゃないよ。

1歳年下の13歳からなら、

恋愛対象として見れる」


ミア「ツミキは13歳だけど」


私「ツミキは子供っぽいじゃん。

身長、低いし。

多分、144cmないでしょ?」

男性の平均身長は150cmだ。

図鑑に載ってる。


ミア「まぁ、確かに」


私「やっぱり、

自分より身長が低い人は

恋愛対象じゃないくない?」

私は身長が145cmある。

144cmない、

私より()っちゃいツミキは、

私からしたら、

男性じゃなくて男の子(ショタ)だ。


ミア「確かにねー。

それが逆に良いって人もいるけど」


私「それは男子愛好女性(ショタコン)だよ」

何が「逆に良い」だ。

自分より身長が低い男性と

恋愛したいと思うなんて、

ただの男子愛好女性(ショタコン)じゃん。


ミア「じゃあ、付き合うなら

どれくらいの身長の人がいいの?」


私「んー...わかんない」


ミア「わかんないんだ」

ミアは不思議そうに言う。


私「あんまり恋愛とか

興味ないんだよ」

だから、好みの男性とかは思いつかない。


ミア「フウリって、

結構、サバサバしてるんだねー」

それはタニシにも何回か言われた。


私「ミアはどうして

ニトラと結婚したの?

なんか突然、結婚したよね。

私、ミアがニトラと結婚するまで、

ミアが誰かと付き合ってるの知らなかった」


ミア「なんか、付き合ってる事を

人に言うの自慢みたいじゃん。

別にわざわざ言う理由もなかったし、

黙ってたの。別に聞かれたら、

答えるつもりだったけど。


それに、ニトラ...ちょっとモテてたからさ。

ニトラの事が好きだった子に、

嫉妬されちゃうよ」


私「あーね」

確かに、モテてる人と付き合うと

そういう悩みはあるのかもしれない。

ニトラは162cmを越える高身長で、

ケモテザニヌに所属してるから

ムキムキだろうし、

寡黙で静的良質格好(クール)だ。

モテるのも仕方ない。


ミア「あ、ニトラだ」

ミアの視線の先には、

ケモテザニヌの人達がいて、

その中にニトラがいた。


...ムキムキだ。

上裸だからよくわかる。

ニトラは体に汗を流し、

凛々しい表情をしながら、

槍で何度も竹を突いてる。


あんな表情もするんだ。

普段は無表情で、

ある意味、無気力な感じもしたけど、

今のニトラは情熱的に見える。


ふと、あの汗だくなニトラが

情熱的にミアを求めて、

夜の営みをする情景を想像する。

自分を殴りたくなった。

さすがに、ミアの前だから

やらなかったけど。


ミア「...なにじっと見てるの?」

ミアが急に()っちゃな声で言う。

私「へぁ!?」

思わず変な声が出る。


私「じ,じっとなんか見てないよ!」

顔が一気に熱くなる。


ミア「人の旦那、じろじろ見てさー」

ミアは小さな声でからかう。


私「見てないってば!」


ミア「はいはい。

別に見るくらいはいいよ。

でも、()らないでね?」

口調は優しげだけど、

有無を言わさない気迫を感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ