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公域L1 舌丸

公域Lに1歩、足を踏み入れる。

やっと、公域Lに着いた。


トウァ「やっぱり、

公域Lの地面って柔らかいね」


アリシア「そうだね。

土って柔らかいよね」

公域Lの地面は茶色い土でできてる。

挿絵(By みてみん)

土は珍しくて、大抵の地面は、

軽石が削れてできた砂が、

川の水と共に踏み固められた物だ。


身近に見る土の地面は

学校にある中庭くらいだろう。


トウァ「ここでなら、

寝ても、体が痛くなさそうだよね。


まぁ、空き家で寝るんだけど」


アリシア「うん。

10時半になったら、空き家で寝よ」

空き家でアリシアと寝るのが、

この日常で1番の楽しみだ。


トウァ「10時半までには

公域Lから出れるんだよね?」


アリシア「うん。

公域Lは縦11kmだから、

3時間もしないうちに着くと思う。


今は7時だから10時前には

公域Lから出られると思うよ」


トウァ「そっか。

てかさ、土って何でできてるんだろ。

リサラさんに教えて

もらった事とかある?」

柔らかくて茶色い土。

これは何処から来たんだろう。


アリシア「生き物の死骸だよ」


トウァ「死骸?」

よくわからなくて聞き返す。


アリシア「うん。死骸。

死骸がだんだん土になるんだって。


前に食べ物は放っておくと

腐っちゃうって言ったでしょ?

死骸が腐り切ると土になるらしいの」


トウァ「へー。でも、じゃあ、

なんで、公域Sと公域Mは土がないの?」


アリシア「公域Sと公域Mにいる生き物は

死んじゃっても腐らない

生き物だからだよ。


死んじゃった時、腐るか腐らないかは、

その生き物の成分が何かで決まるんだけど、

公域Sにいる絡釣(からづり)土夢(どぉむ)

腐らない成分で体ができてるんだよ」


トウァ「そっか。

体を構成する成分によっては

腐らない生き物もいるんだ。


てか、死んだら腐るのって、

死んだら体の成分が変化するからかな?」


アリシア「かもね。てかさ、トウァ」


トウァ「なに?」

アリシアがニヤついてる。


アリシア「あれ。可愛くない?」

アリシアが何かを指さしたので、

その指の先を見る。


トウァ「あぁ、舌丸か。

確かに、可愛いよね。


全身、黄緑色で丸っこいし」


アリシア「でしょー?

体も結構、柔らかいんだよ」

挿絵(By みてみん)

トウァ「触った事あるの?」


アリシア「あるよ。

前に公域Lに行った時、触った。


幼育院にいる頃から舌丸の事は知ってて、

ずっと会いたかったから、

初めて実際に見た時は感動したなぁ。

トウァも触ってみれば?」


トウァ「そうしよっかな」

アリシアが指さした舌丸に近付く。


...ちょっと、ドキドキするな。

舌丸は近付いてきた自分に気付き、

歩みを止め、その2つの目で

じーっと自分を見つめる。


見られると緊張する。

前に公域Lに行った時は、

初めて見る、自分と同じくらい

大きな生き物の存在感に緊張した。


公域Sは植物しかいないし、

公域Mも黒夢(クロム)とかの

虫までしかいなくて、

動物は公域Lで初めて見た。


やっぱり、公域Lの生物は

生き物って感じがすごい。

植物や虫はただの物体って感じの、

非生物感があるけど、

花丸みたいに目があって、

自分と同じくらいの大きさだと、

生物感があって、存在感も強い。

というか、生物感と人間感は同じか。


ソーっと、舌丸の体に手を伸ばす。

胴体の上部分にソッと手を当てる。


トウァ「あ、柔らかい。

なんだろ...ラヴダーナッツみたい。

押したら結構、凹む」


アリシア「うん。見た目も感触も

ラヴダーナッツみたいだよね」


舌丸は自身を触る自分を

じっと見つめてる。

観察してるみたいだ。


近くで見て思うのは、

舌丸の体はすべすべだ。

色が均一で凸凹(でこぼこ)してない。

人だったら、ほくろとか毛穴とかあって、

金属でできた物みたいな

滑らかさは持ってないけど、

舌丸は金属の板みたいに滑らかだ。

黄緑色で綺麗に

塗り潰されたみたいな体をしてる。

 

アリシアが自分の触る舌丸を撫でる。

アリシア「なんかさ、

単純な感じが可愛いんだよね。


触ったら気になって、

こっちをじっと見て、

卵樹絡釣(らんじゅからづり)があったら、

卵種を舌で取ろうとしたり、

なんか、表情もさ、

何も考えてない感じがするし、

そういう所が可愛いんだよ」


トウァ「あー、確かにそうだね。

口がいつも開いてて、

ポカーンてしてる表情だもん」

軽く笑う。


アリシア「歩き方も面白いよね。

2本足だから、歩き方が変わってる。


足を出したり、引っ込めたりして

地面を蹴って、ピョンピョン移動してる」

挿絵(By みてみん)

バッ

アリシアが言い終わると同時に

舌丸が跳んだ。

舌丸の高さが少し

低くなったなと思ったら、

急に跳んだのだ。


トウァ「びっくりしたー。

結構、跳ぶんだね」

自分の走り幅跳びと

同じくらいの距離を跳んでた。


アリシア「3.72mも飛ぶからね」

自分の走り幅跳びよりも

11cmくらい短いのか。

それを助走なしで連続で

ピヨンピョン跳べるのってすごいな。


トウァ「跳ぶ距離も凄かったけど、

速度(スピード)もすごかったよね。


高く跳んで、遠くに

跳んでるんじゃなくて、

速い速度で跳ぶ事で、

遠くに跳んでるって感じ」


アリシア「そうだね。

舌丸の跳躍は22.25°の角度に

26km/hで跳んでるから。


移動速度はそれより少し遅くて

24.3km/h」


トウァ「22.25°って事は...

直角の1/4かー。

やっぱり、結構、低い軌道で

跳躍(ジャンプ)してるんだね。


で、26km/hで跳ぶんだね。

人間だとどれくらいなのか、

よくわかんないけど、

さっき、舌丸が跳んだ時、

結構、速かったよね」


アリシア「人間だと

垂直跳びの初速は12.55km/hだから

舌丸は人間の2倍だよ」


トウァ「2倍かー。

確かに、人間が跳躍(ジャンプ)する時は、

あんな勢いよく、バッて飛ばないしね。


ていうか、人の垂直跳びの速さなんて

よく知ってたね。

それもリサラさんに教えてもらったの?」


アリシア「そうだよ。

舌丸がどれくらい速く跳ぶのか

教えてもらった時に、

「じゃあ、人はどうなの?」

って私が聞いて、さすがに

わかんなかったみたいだけど、

帰った後、調べてくれてさ、

次、部屋に来た時に教えてくれたの」


トウァ「そっかー。

どうやって調べたんだろ」


アリシア「物道則に詳しい友達と

一緒に計算したって言ってたよ」


トウァ「へー、そうなんだ。

それで、跳ぶ速度は26km/hだけど、

移動速度はどれくらいだっけ?

忘れちゃった」


アリシア「24.3km/hだね。

跳ぶ角度がほぼ、地面と平行だから

移動する速度と跳ぶ速度は

あんま変わらないんだよ」


トウァ「確かにそうだね。

仮に地面と平行に跳んだら、

移動速度と跳ぶ速度が同じになるし。


移動速度が24.3kmってさ、

人と比べたら速いのかな?」


アリシア「んー、一概には言えないかな。

人も11秒くらいなら、

その速度で走れると思うけど、

舌丸はその速度で延々と走れるし」


トウァ「延々と?」


アリシア「うん。栄養が尽きるまで。

舌丸には疲労とか筋肉痛がないんだよ」


トウァ「そうなんだ。

ちょっと、羨ましいかも」


アリシア「そうだね」

もう1週間以上、旅を続けてるけど、

それでも、毎日、

歩き終わった後は足が疲れてる。

まだ、その距離を歩くのに

慣れてないのだ。

いや、これ以上は慣れないのか。


アリシア「あ、舌丸が

卵種を取ろうとしてるよ」

アリシアがさっきの舌丸を

指さしながら笑顔で自分に言う。


トウァ「ほんとだ。

舌、出して、卵種を取ろうとしてるね。


にしても、舌丸の舌って長いね。

77cmくらいあるんだっけ?

それにビュンビュン、

空を切るくらい速く動いてる」


アリシア「そうだね。

舌丸のベロって55km/hで動くし、

ベロの重さは931gもあるから、

ぶつかったら痛そうだよね。


舌丸が私達にベロを

ぶつけようとしてくる事はないけどさ」


トウァ「確かに、痛そうだね。

舌丸の舌ってトゲトゲしてるし」

挿絵(By みてみん)

アリシア「あのトゲトゲって、

実は自己相似(フラクタル)図形なんだよ。


トゲトゲにトゲトゲが生えてて、

そのトゲトゲにもトゲトゲが生えてる。

何処まで続いてるのかは

私も知らないけど」


トウァ「そうなんだ。

なんで、そんな面白い形してるんだろ」

それにどんな意味があるんだろ。


アリシア「そうした方が、

ただ単にトゲトゲしてるよりも

トゲがたくさん、卵種に触れるし、

トゲが刺さった時、

抜きずらくなるんだよ」


トウァ「そっか。そんな効果があるんだ。

てか、中々、卵種、取れないね」

舌丸の舌は卵種に当たりはするけど、

掴んで、取る事はできてない。


アリシア「泡卵(ほうらん)が速く動いてるからね」

泡卵とは卵種(らんしゅ)の集合体の事だ。

この泡卵を持つ絡釣の事を

卵樹絡釣(らんじゅからづり)と言う。

挿絵(By みてみん)

泡卵は幹ごと高速で、

地面と平行な円を描く様に

クルクル回っているから、

舌丸は中々、卵種を舌で掴めない。


トウァ「泡卵って

どれくらいの速さなんだろ」

ぶつかったら怪我を

するくらいには速そうだ。


アリシア「44km/hだよ。

それに重さが86kgもあるから、

ぶつかったら、吹っ飛ばされて、

怪我しちゃうと思う」


トウァ「舌丸の舌は55km/hだから、

それよりかは遅いんだ。

まぁ、捕まえる側が捕まえられる側よりも

遅いのは当たり前だけどね」


アリシア「うん」


トウァ「でもさ、卵種って成熟したら、

地面に落ちるんだよね?


それなら、地面に落ちたやつを

食べればよくない?

あんな、速く動いてるのを

無理して食べる意味ってなんだろ」


アリシア「卵樹絡釣(らんじゅからづり)の卵種は

地面に落ちたら、というか、

地面に向かって投げ出されたら、

すぐに幹と根を形成して

食べれなくなるんだよ。

幹とか硬いでしょ?」


トウァ「そうだね。

まぁ、泡卵が周ってて危なそうだから、

近付いて幹を触った事はないけど。

金属特有の色合い、金属光沢があるから、

硬そうだなとは思ってた」


アリシア「触った事なかったんだ。

はいはいして行けば、

泡卵には当たらないよ。


周ってる泡卵の、

地面に一番、近い卵種は

地面から1.1mの所にあるし」


トウァ「そっかー。

じゃあ、ちょっと、行ってみよっかな。

アリシアも行こ」




参考画像

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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