異なりの生物 柱肉蟲
軟葉と硬塊が入った籠を
回収箱の所に置く。
後で子蝟胃夢の餌やりに使うからだ。
さて、次は...柱肉蟲の餌やりをしよう。
柱肉蟲の餌は
硬塊と死生物を粉々にして混ぜた物を
子蝟胃夢の体液で混ぜた物だ。
生野菜料理に見えなくもないけど
その実、吐瀉物に似てる。
死生物は川を流れてる細いあれで
名前の由来は
[昔は川を流れる死体だったが、
ある時から動くようになった]
という言い伝えから来ている。
意識を戻す。
柱肉蟲の餌は
回収箱の左隣にある高さ1.5mの
車輪付き円柱型容器に入っている。
この車輪付き円柱型容器の下には
容器の重さを測っている装置があって、
容器に餌が入っていない時,
地面から伸びた筒から
この容器に先程,言った餌が
排出されるのだ。
容器の側面に手を当てる。
そして、手を当てたまま足を後ろに置き、
体を地面と平行に近くする。
前が容器で何も見えないけど
毎日,往復してきた道だし、
横の景色を見ながら行けば大体わかる。
グッ。足に力を入れ、
それに耐えるように腕に力を入れる。
すると、ノロノロと円柱型容器が動き出す。
容器の車輪は前後左右に4つあり、
直径が22cmもあるから
強く押し過ぎて倒れる心配はない。
にしても重いな。
餌が入ってる時の容器は
605kg以上ありそうだ。
車輪が付いてなかったら絶対に運べない。
逆に車輪が付いてるだけで
こんなに重い物を運べるのが面白い。
多分、軽く移動させるだけなら
この2倍の重さでもいける。
でも、回収箱から柱肉蟲までの距離は
55m以上あるし、普通に疲れるな。
11mくらい進む度に
腰を下ろして休憩する。
柱肉蟲の餌やりは毎日1回だけど
1番,めんどくさい作業だ。
~柱肉蟲がいる場所に着いた。
3分くらいかかった気がする。
目の前の長く太い円柱型の生物は
長さが16m,高さが2mにもなる。
巨大だ。
柱肉蟲は巨大だから生きる為に
あんなにたくさんの餌を
食べるんじゃなくて
大きくなる為にたくさん食べる。
食べて消化して大きくなる時,以外,
死んでるんだし。
行動しない間は生命活動を停止するのは
とても合理的で興味深い。
容器を倒して、
餌をぶち撒ける。前は見ない。
柱肉蟲の姿は見ちゃいけない。
柱肉蟲は悍ましい。
その無機質で岩の様な
ザラザラとした灰色の肌には、
点々と黒く短く硬い
陰毛の様な毛が生えている。
気持ち悪く悍ましいから
近付きたくないけど
放っておいて餓死されるのはもっと嫌だ。
だから、仕方なく、
毎日の餌やりを続けてる。
ほんと、試しに飼うなんていう
1年前の浅はかな行動を
今でも恨んでいる。
自分は変に興味が強い。
試しにしてみて、
試しにしてみた事を
よく後悔している。
後悔するとわかってても
したくなっちゃうものだ。
餌を容器から全て出し、
空になった容器を起こして、
逃げる様にその場を立ち去る。
柱肉蟲には顔がある。
その顔はとても悍ましい。
あれを見たのは1年前だったっけか。
それは臓器が露出した様な
ヒダヒダした顔をしていた。
その顔を初めて見た時、
そこに埋め込まれたみたいにある
小さな目玉がクルッと動いて
自分を見つめてきた。
その瞬間、恐怖が背中を走って、
その顔から目が離せなくなって、
正気を失いそうになった。
本当に怖かった。
実はその時ちょっと泣いたし。
1年前に見たきりだけど、
今でもよく寝る前に思い出して怖くなる。
柱肉蟲の餌は水分豊富だけど
柱肉蟲は乾燥してる。
食べた物に含まれる水分を
そのまま排出するからだ。
柱肉蟲は乾燥代謝を行う生物で
体液がなく血液がない。
栄養はどの様にして
体を循環するのかと言うと
化学反応の連鎖反応らしい。
詳しい仕組みは知らない。
そして、柱肉蟲は成長が
完了すると1匹1g,
19487171匹くらいに分裂する。
その際、その分裂して小さくなった
柱肉蟲を収穫するらしい。
まだした事はないけど。
ただ、自分が飼ってる柱肉蟲は
成長具合から見るに
もうすぐそうなると思う。
見てみたい気もするけど
見たくない気もする。
興味の強い自分は
どうせ見て,見てから
後悔するんだろうけど。
そういえば、前の昼食に出た
爪くらいの長さの
蚯蚓みたいな何かが美味しかった。
あれって何だったんだろ。
さて、尿意がしてきたな。
そう言えば、朝から排泄をしてなかった。
そろそろ、排泄に行くか。
あと、立体放射器も浴びるかな。
回収箱の所から家に軽く走って行く。
家は学校と同じ灰色の石製だ。
縦横2m,高さ1.75mの直方体で
生活するのに必要な設備や
物が全て詰め込まれてる。
この機能的な家が全ての庭の角にあるのだ。
家の前に着き、扉を軽い力で
軽く押して開け、家に入る。
厠は家に入って左側にあって、
扉は家の扉と同じ押戸。
靴を立ったまま脱いで厠に入る。
厠は狭くて息が詰まるな。
便器の上に立って思う。
厠は1㎡の密室で、
扉を閉めると閉所性の恐怖を感じる。
天井の高さも1.75mしかないし、
自分とか大人なら大丈夫だけど
高人なら天井に
頭をぶつけちゃうだろうな。
そして、ここは厠であると同時に
水浴び室でもあって、
天井に立体放射器が埋め込まれてる。
いちいち、嫌な想像をしちゃう自分は
扉が開かなくなって、
立体放射器から水が延々と出たら
ここは水没して自分は
窒息死するんじゃないかとか、
いつも,ありえない想像をして、
ちょっと怖くなる。
さて、しよう。
なんか...自分は考え事をすると
体の動きが止まる癖があるな。
なに、厠に来て突っ立ってんだろ。
足服を下ろして男性器を出す。
足服はしっかり下ろした方が良い。
足服をしっかり下ろさないと
男性器に足服から
上向きに圧力がかかるんだけど
そのまま排尿すると
尿が出し切れなくて、
足服を上げて
男性器に上向きの圧力が
なくなった途端,
ジョバっと残尿が出ちゃうのだ。
シャー。尿が出る。
足と便器の表面は近いから
あんまり勢いよく放尿すると
足にかかっちゃうから気を付ける。
男性器は手で握んなくても
立つ場所で狙う場所を
調節できるから問題ない。
まぁ、最初に皮を剝く
必要があるけど。
...ん...ふぅ...出し切った。
仕事に戻ろう。
足服を上げて厠から出る。
ちなみに、厠の床は軽石でできてて、
裸足で勢い良く歩いたりすると
足の裏が削れて出血する。
普通に怖い。
...って、立体放射器,浴びるんだった。
自分はいつも頭の中で喋ってて、
今している事に意識が向いてないから
間違いが多い。
足服と上下着を脱ぎ捨てて、
厠に戻る。
そして、壁に埋め込まれてる
立体放射器の
突出度式切り替え機をポンっと押す。
すると、水が勢い良く上から降って来て
無数の細い棒に突かれてる感触がする。
温度は微妙で、
体温よりちょっと高い37℃らしい。
また、この立体放射器は
突出度式切り替え機を押してから
55秒,流れる。
微妙に長い時間だ。
この時間はいつも
どうでもいい事を考えてる。
そう言えば、大人の着る服は何で
全員.同じなんだろ。
黒い上下着に黒い
柔らかく薄い生地の足服。
大きさも色も全員,同じだ。
高人や幼人は人によって服が違うのに
大人だけは全員,同じなのだ。
そのせいで身長が低い人はブカブカだし、
身長が高い人はキッツキツだ。
自分はちょっとブカブカな方かな。
それに、大人の着る服は
妙に透けるから性的なんだよな。
気にしてるのは自分だけみたいだけど
人の体が見えて不快だ。
...そう言えば、今日,会った
彼女の服は他の人の服と違った。
あのミネリア式帽子は
普通の服には付いてない。
普通じゃない服を持ってるって事は
彼女は高人から
特別な扱いを受けているのだろうか。
それは彼女が特別だから?
特別...そこに重大な謎がありそうだ。
ここ1年,自分が
悩んできた事に繋がる事が
あるのかもしれない。
立体放射器が止まる。
厠から出て前の棚に掛けてある
体表水分拭き取り布を
手に取って体と髪を拭く。
髪は水が垂れない程度まで拭いたら
後は自然乾燥に任せてる。
11秒程で体と髪を拭き終わり
脱ぎ捨てた服を再び着る。
新しい服に着替えるのは
3日に1回くらいだ。
参考画像 服の透け具合