公域M2 花々絡釣と花虫
トウァ「ふーん。
そう言えば、性別を持ってて、
性別を使った繁殖方法を
持ってるのって人間くらいじゃない?」
人間以外の生物で性別を
持っている生物に心当たりがない。
アリシア「確かにそうだね。
公域Mの生物だと、
軟葉と花虫は分裂して増えて、
黒夢は排泄物と子供が同じだし」
トウァ「え、黒夢って
排泄物と子供が同じなんだ」
そんな繁殖方法もあるのか。
アリシア「うん。
排泄物の栄養で子供を作った結果だね」
トウァ「へー、そういう事か。
花虫はどういう風に分裂するの?
黒夢とか軟葉と違って、
花虫は非対称な形してるけど」
花虫は短く切り取った腸に
2組の羽を付けた様な生物だ。
アリシア「前後だよ。
花虫の体って高い伸縮性があるから、
体を圧縮できて、普通の大きさなのに
2匹分の量を持ってる時があるんだけど、
その時に、前後に分裂して、
それぞれ、圧縮していた体を伸ばしたら、
通常の花虫になるの」
トウァ「なるほどー。
てか、花虫ってさ、どっちが口なの?」
花虫はどっちが口で、
どっちが肛門なのかよくわからない。
アリシア「どっちもだよ。
どっちからでも入れられるし、
どっちからでも出せるの」
トウァ「そうなんだ。
なんか、人間より小さい生物って、
色々と単純なんだね。
時々、真ん丸の花虫がいるけどさ、
あれは何?どうしちゃったの?」
地面にはたまに、真ん丸の花虫が
死んでるみたいに転がってる。
アリシア「あれは食事中なんだよ。
卵種を食べてるの。
卵種は花虫と
同じくらいの大きさだから、
食べて体内に入れたら、
体重が重くなって、
消化し終わるまで飛べなくなるんだよ」
トウァ「卵種って絡釣の?」
確かに、卵種を丸呑みしたら、
あんな感じに真ん丸とした形になりそうだ。
アリシア「そうそう。絡釣っていうか、
花々絡釣だけどね。
ほら、あれとか」
アリシアがそう言って指差した先には、
花々絡釣があった。
トウァ「あー、花々絡釣か。
花々絡釣は卵種がたくさんあるから、
花虫もそれを食べて生きていけるんだろうね。
卵種が1つしかない、
ただの絡釣だけがいる
公域Sだと花虫はいないし」
花々絡釣は
絡根と棘帯根が長くて、
卵種が多い事以外は、絡釣と同じ生物だ。
アリシア「うん。そうだね。
大きい公域には、
小さい公域にいた生き物の、
より大きく複雑に
進化した生き物がいるんだよ。
例えば、花々絡釣は絡釣が元で、
殻土夢は土夢が元でしょ?
で、大きく複雑な生き物がいると、
その生き物を利用して、
生きようとする生き物が生まれるの。
花虫は花々絡釣の卵種を食べて生きて、
黒夢は殻土夢を食べて生きて、
軟葉は更にその黒夢を食べて生きてるの」
トウァ「へー。
大きい公域の生態系って
そういう風にできてるんだね」
アリシア「そうそう。
生態系は自ら栄養を集めれる生物、
1次生物が中心で、
1次生物が高度化すると、
1次生物を利用して生きる
2次生物も高度化するし、
2次生物が高度化すれば、
3次生物が生まれたり、高度化するの」
成程、そういう仕組みで、
生物は生まれたり、
高度な形態になるのか。
トウァ「高度化って、進化ではないの?」
進化と高度化は別なのかな。
アリシア「進化と高度化は別だよ。
進化は退化を含むけど、
高度化は退化や低度化を含まないから。
例えば、複雑で大きな生き物も、
資源の少ない場所に連れてきたら、
その生き物の子孫は、
単純で小さな生き物に進化する。
でも、これは高度化ではないでしょ?
進化はよく進歩と
混同されてるけど別物だからね」
トウァ「確かにそうだね」
アリシア「進化はあくまで、
変化の一種に過ぎないからね」
トウァ「そう言えば、
この花虫はさ、どうやって飛んでるの?
羽を動かして宙に浮く事が
できるのはわかるけど、
どうやって方向転換とかしてるんだろ」
アリシア「方向転換は...前後だけかな。
左右に方向を変化させる事はできないよ。
花虫って前羽と後羽があって、
それぞれ左右2つの羽からできてるけど、
その左右2つの羽は別々に動かせないの。
別々に動かせたら、左の羽を弱く動かして、
右に向いたりできるけど、
それはできないんだよ。
でも、前羽と後羽は別々に動かせるから、
前に動いたり、後ろに動いたりはできるの」
トウァ「って事は、
花虫は生まれてから一生、
1つの直線の上で過ごすって事だよね。
おもしろ。
でも、なんで左の羽と
右の羽を別々に動かせないの?
神経系の問題?」
左羽を動かす神経と
右羽を動かす神経が同じせいで、
どっちかだけを動かす事が
できない感じなのだろうか。
アリシア「違うよ。構造上の問題。
花虫の羽には針骨って言う、
針金みたいな骨が付いてるんだけど、
左の羽と右の羽から伸びた針骨は、
体の中で1本にV字で繋がってるの」
アリシア「で、そのV字の針骨を
閉じたり開いたりして、羽を動かすから、
羽を左右で別々に動かせないんだよ」
トウァ「そういう事かー。
左の羽と右の羽は1組なんだね。
じゃあ、針骨は
どうやって動かしてるの?」
アリシア「針骨を糸腱って
名前の、輪っか状の紐が囲んでて、
糸腱を囲う、その輪っかが
締まったり緩んだりして、針骨が動くんだよ」
アリシア「で、糸腱は消化管を
囲む様にあって、体が下に収縮すると、
糸腱が下に引っ張られて、輪っかが締まるの」
トウァ「へー、そっかー。
やっぱりアリシアは
生き物について詳しいんだね」
トウァ「へー、そっか。
やっぱり、アリシアは
生き物について詳しいんだね」
アリシア「幼育院でいつも
リサラさんが話してくれたからね。
リサラさんがよくしてくれた生き物の話に、
いつも私が「どうしてそうなの?」
って色々、聞いて、答えれない時は、
「明日までに、調べてくるね」
って言って、調べて来てくれたんだ」
トウァ「そっかー」
アリシア「でさ、1回、
リサラさん、変な事、言ったんだよね。
「ほんとに、アリシアは知りたがりやだね。
まるで、あの猫の人みたい」って」
トウァ「猫の人?
アリシアは騙幸人と
そうでない人類種から生まれたと思うけど、
その騙幸人じゃない方の
人類種の事を言ってるのかな?
多分、その人類種は
支強人だと思うkrふぉ、
その支強人が
猫の人って呼ばれてるのかな?
まぁ、確かに、
アリシアの騙幸人じゃない形質、
支強人の形質だと思う、
獣耳とかは
絵本に出てくる猫っぽいけど」
アリシア「うん。猫の人かー、
猫って実際にいるのかな?」
アリシアはニマニマしながら言う。
猫が好きなのかもしれない。
トウァ「どうなんだろね。
そう言えば、絵本に出てくる、
毛で覆われた生き物って
公域じゃ見かけないよね。
だとすると、もしも、
毛で覆われた生き物がいるとしたら、
アリシアじゃない何処かかな?」
自分達にとってアリシアは世界で、
アリシア以外の何処かというのは
よくわからない。
世界機構では、アリシアとは、
世界の中央にある、
上民が住んでいるこの街の事で、
アリシア以外の場所とは、
世界の中心以外の、
中民と下民と
公域にいる様な生物が暮らしている
場所だと教えられて来たけど、
そもそも上民、中民、下民といった区別、
人種序列が虚構なら、
アリシアの外はあるのか、
アリシアの外とはどんななのかは
全くわからない。
だから、今の自分達にとって、
アリシア=世界 なのだ。
アリシア「アリシアの外に、
猫みたいな可愛い生き物がいる世界が
あったらいいね」
アリシアはほのぼのとした表情で言う。
アリシアだって猫みたいに
可愛いじゃないか。
トウァ「そう言えば、
愚働人からは、そういう絵本だけで
出てくる生き物は気持ち悪い物として
教えられてたよね」
アリシア「あれ、そうなの?」
アリシアは首を傾げる。
トウァ「あー、
アリシアはずっと個室にいたから、
夜のお話、聞いた事がなかったんだっけ。
夜のお話だと、絵本に出てくる生き物は
変に人間みたいで
気持ち悪いって事にされてたよ。
四肢の数が同じで、
顔の要素が同じだし、
公域にいる生き物に比べたら、
遥かに人間みたいでしょ?」
アリシア「確かに...。
もしかしたらさ、人間って、
そう言う絵本で出てくる
生き物から進化したのかな?
だって、この獣耳とか、
まんま絵本に出てくる生き物の
獣耳じゃん。
そしたら、やっぱり、
アリシアの外には、
絵本で出てくる様な生き物が
暮らしてる世界があって、
そこに支強人がいるのかな?」
アリシアは熱く語る。
トウァ「うん。そうかもね」
アリシア「だとしたら、
私はそこに行きたいな」
トウァ「うん。自分もだよ。
猫とか可愛い生き物を飼いながら、
アリシアとのんびり生活できたら、
幸せだと思う」
アリシア「うん」
参考画像
絡釣と花々絡釣の比較
花虫の羽ばたき方




