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ミリア2

トウァ「話、また、ズレちゃったね。

アリシアと話してると、

色んな話題が思いついて、

どんどん本題から外れちゃう。

それからミリアとは、仲良くなったの?」


アリシア「うん。私が、

「仲良くなったら、

このミネリア式帽子(フード)に付いてる

三角の物が何か教えてあげる」って

言ったの本気にしちゃったみたいでさ。


5分休憩の時間はいつも、

ミリアから話しかけてきて、

お喋りしてたし、

学校への行き返りも、一緒だった。


私と違って、ミアは明るくて元気で、

たまに私が驚く様な事したりしてさ、

...一緒にいて楽しかったな」

アリシアはまたちょっと

寂しそうな表情をする。


トウァ「自分もアリシアと

一緒にいるの楽しいよ。

ずっと、一緒にいようね」

これは自分の願望でもある。


アリシア「うん。そうだね」

アリシアが自分の手を握る力を強める。

それが嬉しい。


トウァ「それから、ミリアには、

獣耳(ケモミミ)、見せたの?」

仲良くなったら獣耳(ケモミミ)

見せるという約束はいつ、

果たされたんだろうか。


アリシア「...うん」

アリシアが小さい声で言う。

やっぱり、獣耳(ケモミミ)を見せた時の事は

あまり、思い出したくないみたいだ。


アリシア「獣耳(ケモミミ)、見せたら、

ちょっと怖がってさ、

それでも最初は、私に気を遣って、

いつも通りに、振る舞おうと

してたんだけど...

人永時真伝も見せたら、

取り乱しちゃってさ、

それで、「嘘つき」って言われちゃったの。


そのまま、ミリアは、

家を飛び出しちゃって、

それから...ミリアとは話してないんだ」

家を飛び出したという事は、

家に呼びだして見せたという事か。


トウァ「そうだったんだ」

アリシアの獣耳(ケモミミ)を見て、

怖がっちゃう人もいるんだ。

自分は可愛いと思ったけど。


アリシア「人永時真伝まで、

その日に見せない方が良かったよね。


私の獣耳(ケモミミ)、見て、

混乱しちゃってるのに、

あんなの教えられたら、

誰だって取り乱しちゃうよ」

アリシアは自虐的な口調で言う。


トウァ「うん」

確かにそうだろう。

見せたのには理由があったのかな。


アリシアは人の心を

よくわかっていて、気遣いや気配りが、

ちゃんとできそうだけど。


アリシア「...私もさ、

混乱してたんだよね」


トウァ「どういう事?」


アリシア「人永時真伝はさ、

ミリアに獣耳(ケモミミ)を見せる、

1ヶ月くらい前に、

ベッドの裏から見つけて

読んだんだけどさ、読んで後悔した。


だって、私だけが知っちゃったんだよ?


私だけが、この世界の

秘密を知っちゃって、

そしたら、知らない振りして、

知らなかった時と同じ様に、

生きてくなんて無理じゃん。


ミリアに話す時まで、

1ヶ月間、ずっと誰かに言いたくて

仕方なかったんだよ」

アリシアは訴えかける様な

悲痛な声で言う。


アリシアがミリアに、

人永時真伝の事を言いたくなる

気持ちはよくわかる。


自分も、自分だけ他の人と

違う事を考えてたのが、

この世界を疑ってたのが嫌だった。


自分だけが他の人とは

違う事を考えてて、

それを誰にも話せないのが辛かった。


もしも自分が、

人永時真伝で、1人だけ、

この世界の真実を知ってしまったら、

おかしくなってたかもしれない。


あんな重大な事、

自分だけ知っているだなんて

耐えられない。


多分、機会さえあれば、

すぐにでも、誰かに言っちゃうだろう。

それが、その人を道連れに

する様な事だったとしても。


それに、偽りを信じている事が

幸せだとは思えない。

大切な人にだけは真実を

教えてあげたいと思うものじゃないか。

アリシアは悪くない。


トウァ「それだったら、仕方ないよ。

ミリアに人永時真伝の事、話して、

混乱させちゃったのは」

アリシアは返事をせず、黙っている。


アリシアとしては、そう簡単に、

仕方なかったって、

割り切れないんだろうな。


アリシアは優しいから、

誰かを傷つけた時は、

自分を許せないのかもしれない。


アリシアの経験した事や、

生い立ちを知っていくと、

自分が前に悩んでた事が

浅い事に感じてきた。


アリシアの今までの人生は、

自分だったら、耐えられないくらい、

辛い物だ。


だから、せめて、これからは、

アリシアが辛い想いをしないようにしたい。


もしも、自分と出会ってからすらも

辛い想いをし続けたら、

アリシアの人生は

辛いだけの物になっちゃう。

それだけは嫌だ。


トウァ「アリシアって...

今まで大変な事がたくさんあったんだね。


なんか、自分って、アリシアに

頼ってばっかで、

いつも甘えちゃってるからさ、

たまには頼ってね。

アリシアの為なら何でもするから」


アリシア「うん。

トウァがそう言ってくれるだけで、

トウァが一緒にいてくれるだけで、

十分、嬉しいよ。


1人なのが、ずっと嫌だったから。

私だけの秘密があるのが、

ずっと嫌だったから。


私の話を聞いて、

私の傍にいてくれるだけで、

それだけで十分だよ」


トウァ「自分もそうだよ。

アリシアが一緒に

いてくれるだけで幸せなんだよ」


トウァ「そう言えばさ、

ミリアとは、それから、

話したりできなかったの?」


何日か経てば、

ミリアも落ち着いて、

アリシアと話し合う事ができそうだけど。


アリシア「話したくても、話せなかったの。


私がミリアに、

人永時真伝の事を話した日は、

私の誕生日の前日で、その次の日には、

私は1学年上になって、

ミリアとは教室が変わっちゃったから。


誕生日が来たら、ミリアと教室が

変わっちゃうかもしれないって事は

わかってたからさ、

獣耳(ケモミミ)の事と人永時真伝の事は

誕生日よりも前に、

話しておきたかったんだけど、

中々、言い出せなかったんだよね。


ずるずる時間だけが経って、

誕生日の前日になっちゃって、

やっと、意を決して、言ったの。

本当に、言うの緊張したんだよ。


人永時真伝の事と

私の獣耳(ケモミミ)の事を話すには、

ミアに、私の家に、

来てもらわなきゃいけないけど、

家に来て欲しいって言うだけでも、

勇気、出さなきゃできないのに、

人永時真伝に書いてる事まで言うんだよ...。


誕生日の前日は、もう、何処にも

逃げ場がない感じがして、辛かった」


トウァ「それでも、

アリシアは言ったんでしょ?


なら、アリシアは偉いよ。

大事な人に、大事な事をちゃんと

伝えれたんだから、それで良かったんだよ」


アリシア「ん...うん」

アリシアは納得していない様な

表情をしながら言う。


自分だったら、逃げ出して、

ミリアに言う事を諦めてただろう。

それをアリシアは言ったんだから、

アリシアは偉い。


結果は悪かったけど、

それはアリシアのせいじゃない。


トウァ「てかさ、

2年生になってから、4年生になるまでに、

同じ学級(クラス)になる事はなかったの?」

2年生になってから、4年生になるまで、

2回、学級(クラス)が変わるから

1回くらい同じ学級(クラス)

なったりしそうだけど。


同じ学年の学級(クラス)は2つだけだし。


アリシア「なかったね。

運が悪かったみたい。


一応、話す機会は、

教室以外でもあったんだよね。

登下校の時、ミリアを見る事は

よくあったの。


でも、話し...かけられなくてさ。

話しかけたいのに、

話しかけられないまま

1週間くらい経っちゃって、

そしたら、ミリアは、

私以外の人と、楽しそうに話しながら、

登下校するようになってさ、

そんなの...もう、話しかけられないじゃん。

話しかけたら迷惑じゃん。


だって...もう、私以外に

友達がいて...私はいらな...」

アリシアが涙を流す。

きっと、すごく寂しかったんだと思う。

初めてできた友達が、

自分から離れちゃうのは。


アリシアにはミリアしかいなかったのに。


立ち止まってアリシアを抱き締める。

獣耳(ケモミミ)がほっぺたを掠める。


普段、意識してなかったけど、

アリシアの体は自分よりも細い。

トウァ「自分にはアリシアが必要だよ。

自分は、アリシアがいないと

生きてけないくらい、

アリシアの事が好きなんだよ。

ずっと...傍にいて」


アリシア「...うん。ありがと」

アリシアの顔を見ると、

アリシアは笑ってくれていた。


トウァ「ねぇ、アリシアは、

自分が必要?」


アリシア「当たり前じゃん」

アリシアが笑う。

アリシアの笑顔が好きだ。


アリシアからそっと離れて、

アリシアの手を引いて、

再び歩き出す。


ガッ

よろめく。

足元を見ると硬塊(こぅかい)があった。


アリシア「大丈夫?」


トウァ「うん」

硬塊(こぅかい)はその名の通り硬い塊だ。

見た目は茶色の塊で、

大きい公域で見られる土、その塊みたいだ。


アリシア「硬塊(こぅかい)って

よくわかんないよね」

アリシアが自分の足元に転がっている

硬塊(こぅかい)を見て言う。


トウァ「そうだね。

いつからここにあって、

どう生まれたんだろ」

硬塊(こぅかい)は公域Sにある限り、

繁殖や成長など、

あらゆる生命活動を行わない。


ある意味、死んでると言えるけど、

ある栄養が与えられれば、

再び生命活動を再開するという点を

考えると生きているとも言える。


硬塊(こぅかい)には色々と疑問がある。

公域Sにある硬塊(こぅかい)は、

独りでに増える事がないのだから、

硬塊(コゥカイ)はどこかから来た筈だけど、

どこから来たのか?

そして、いつから、公域Sにあるのか?


アリシア「どっかから持って来たのかな?

高人(こぅと)の人達とかが」


トウァ「んー、わざわざ、

公域Sにばらまいて、

それを騙幸(カタサ)人に収穫させて、

庭で育てさせる必要あるかな?


庭で育てさせたいなら、

直接、渡すか、交換する品物に

しとけばいいじゃん」


アリシア「だよね」

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