商品目録
アリシアが寝床の上に置いた、
商品目録を開く。
商品目録は、
生物の部、用具の部、機械の部の、
3つの部に分かれてて、
生物の部は植物の章と動物の章、
用具の部は入れ物の章、
加工用具の章、収穫用具の章、
機械の部は機械付き入れ物の章、
加工機械の章、収穫機械の章で
構成されている。
今、欲しいのは入れ物だ。
トウァ「ちなみに、アリシアは今、
どれくらい、情報的品物媒体、
貯まってるの?」
アリシア「228096P。
あんまり品物と交換してなかったから、
貯まってるの」
普通の人と比べたら、
まぁまぁ、貯まっている方だ。
それなりに労働もしてたんだろう。
トウァ「それだけあれば、
入れ物くらい、
余裕で買えそうだね」
用具の部は、
生物の部や機械の部よりも安い。
そして、用具の部の中でも
入れ物の章の品物は特に安いのだ。
アリシア「入れ物もいいけど、
機械付き入れ物もあるよ?」
トウァ「なにそれ?」
機械付き入れ物...聞いた事はあるけど、
詳しくは知らない。
機械付きってどういう事だろうか。
アリシア「これとか」
アリシアは機械付き入れ物の章を開いて、
車輪付き自動走行円柱型容器を指さす。
柱肉蟲の餌を運ぶのに使ってた、
車輪付き円柱型容器の、
自動走行版みたいだ。
トウァ「あー、なるほど。
でも、見たところ、
どの持ち運びする為の、
機械付き入れ物も、
機械たる所以は車輪にあるみたいだし、
機械付き入れ物はいらないかな。
車輪が付いてる、
押したり引いたりして動かす物は
走って逃げる時に邪魔だし」
走るよりも速く動いて、
荒い道も走れたらいいんだけど、
それはありえないだろう。
持ち運び用じゃないのだと、
常に動力を供給する事で、
加熱、保温、冷凍をする、
機械入れ物もあるけれど、
そういう機能は、
持ち運び用の機械入れ物には、
搭載できないみたいだ。
アリシア「そうだね。
じゃあ、普通の入れ物、見よっか」
アリシアが頁をめくる。
それを見てたら、
アリシアの手が綺麗なのに気付いた。
心臓がトクンとなる。
撫でられて気持ちいいわけだ。
アリシアがもっと好きになる。
なんとなく、アリシアの手の上に、
自分の手を乗っけてみる。
アリシア「フフッ、なに?」
アリシアは商品目録から目を離し、
自分の目を見て、軽く笑いながら言う。
トウァ「なんとなく」
アリシア「なにさ」
アリシアは軽く笑って言う。
こんな日々が続く事を、
アリシアを見つめながら願う。
アリシアは視線を商品目録に戻して言う。
アリシア「これとかどう?」
大きな、紐付きの袋だ。
トウァ「いいんじゃない?
肩に掛けれていいと思う。
その中に、食べ物を入れた、
紐の付いてない袋を、
詰め込めば良さそうだね」
アリシア「うん。そうだね。
じゃあ、次は食べ物を用意したり、
食べ物を集める為の道具を見よっか」
トウァ「うん」
アリシア「あ、これ必要だね」
アリシアは「小型塩水濾過器」を、
指さして言う。加工機械だ。
トウァ「高いね...103680Pする。
紐の付いてる、大きい袋は432Pだけど」
アリシア「小型だからね。
大型なら安いけど、
持ち運び用じゃないし」
トウァ「塩水濾過って、
川の塩水を真水にするって事でしょ?」
アリシア「そうそう。
だから、これは必須だよ。
水がなきゃ生きてけないもん」
トウァ「...そなの?」
初めて聞いた。
まぁ、確かにそんな気はする。
アリシア「あ、トウァには
まだ見せてなかったね。
人永時真伝を書いた、
ロメス・ヘルムさんは、
もう1冊、本を書いてるの」
トウァ「あれ、そうだったの。
早く言ってくれればいいのに」
そんな大事な事なのに、
言うのが遅い気がする。
アリシア「...トウァのせいだよ。
ほんとは今日、
食べれる物を教えるついでに、
その本の内容も、
教えようかと思ってたのに、
トウァが酷い事して、
それどころじゃなくして、
その挙句、寝ちゃったんじゃん」
アリシアは小さな声で、
ジト目で自分の目を見て言う。
トウァ「...ごめん」
アリシア「......はい、これ」
アリシアが唐突に寝床の下から、
赤い板を取り出して、
寝床の上にポンっと置く。
アリシア「......はい、これ」
アリシアが唐突に寝床の下から、
赤い板を取り出して、
寝床の上にポンっと置く。
人永時真伝と似た様な板だ。
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アリシア「人永時食伝って言うの」
トウァ「人永時食伝...」
鸚鵡返しに言う。
アリシア「この本には、何を食べて、
何をどう保存すればいいかが書いてるの。
内容は私が全部、覚えてるから、
トウァは別に読まなくていいよ。
実際に食料を保存する時に教えるから」
トウァ「わかった」
アリシア「じゃ、何、買うかの話に戻ろ」
トウァ「うん」
アリシア「加工機械は...
塩水濾過器くらいでいいかな。
中に入れた物を温めたり
冷やしたりする機械入れ物もあるけど、
別に必要じゃないし」
トウァ「んー、ちなみに、
そのままじゃ食べられないけど、
加工したら食べれる物ってあるのかな?」
人永時食伝を読んだアリシアなら
色々知ってそうだ。
アリシア「あるよ。
死生物とか、
加熱しないと食べれない」
トウァ「なら、これとかどう?
塩発電式加熱器」
アリシア「それ...川に丸1日くらい
ずっと漬けとかなきゃ、
使えるくらい、充電できないよ。
私達、歩いて移動するし、寝る時間、
充電するだけじゃ、
必要なだけ貯まらないから、
充電する時間位置ないと思う」
トウァ「そっかー」
アリシア「死生物を加熱するなら、
この油燃式発火加熱器とかいいよ。
ミルクの油分で加熱できるの」
初めて見る機械だ。
この機械は、塩発電式加熱器みたいに
塩で発電した電気で
熱を起こすんじゃなくて、
この機械は油で火を起こして、
その火で食べ物を加熱するらしい。
トウァ「ミルクはそのまま使えるの?
それとも別の機械で
ミルクから油分を抽出するの?」
アリシア「別の機械から抽出するよ。
...これだね。ミルク用油分抽出機」
トウァ「油燃式発火加熱器は、
82944P、
ミルク用油分抽出機は
62208P、
塩水濾過器が103680Pで、
今のところ買う品物は
248832Pか」
必要な情報的品物媒体を計算する。
アリシア「トウァは何P持ってるの?」
トウァ「131769」
情報的品物媒体は品物と交換せずに
全部、貯めてるけど、
労働をてきとうにしてるから、
そんなに貯まっていない。
アリシア「私は228096Pだから、
買えるのは359865pまでだね」
トウァ「うん。それだけあれば、
必要な物は余裕で買えそう」
アリシア「次は...収穫用具と収穫機械かな。
持ってく物だけを
食べるんじゃなくて、
現地で食べ物を収穫して
食べなきゃだし」
トウァ「外でも使える、
携帯できる収穫道具かぁ、釣竿とか?」
アリシア「そうだね。
あれは大きいから、
折ったりして、いくつかに分けるかな。
あとは...寝る時、
地面に敷く物も欲しい」
トウァ「んー、敷く物かー。
袋を地面に敷くとか?」
アリシア「そうしよっか。
買うのはこれくらいでいいかな。
じゃあ、回収箱の所に行って、注文しよ」
トウァ「うん
あ、その前に厠、行ってくる」
アリシア「わかった。
私もトウァの次にしよっかな」
寝床から降りて、
右にある厠に入る。
なんか、不思議な気分だ。
扉を閉じちゃえば、
自分家の厠と
何も変わらない。
ここを出たら、
自分家なんじゃないか、
アリシアとの出会いは、
実は夢だったんじゃないかなんて、
想像して不安になる。
だから、呼んでみる。
トウァ「アリシアー」
アリシア「なにー?」
よかった。ちゃんといた。
トウァ「なんでもない」
アリシア「ん?うん」
......厠から出る。
アリシアと目が合った。
アリシアがなんか、
変な表情をして目を逸らす。
アリシア「トウァ、先、行ってて
私、排泄したら、行くから」
意図がよくわからない。
トウァ「...ここで待つけど?」
アリシア「いや、先、行って」
アリシアはきっぱりと言う。
トウァ「んー、わかった」
よくわかんないけど、
とりあえず、家から出る。
で、すぐに家に戻る。
ソーっと扉を開けて、
家の中に入り、
右にある棚の扉を開ける。
この中に入って隠れちゃおう。
そして、アリシアが
厠から出てきたら、驚かすのだ。
ニヤニヤしながら棚の中に入って、
ソッと扉を閉める。
...静かだ。
中は暗いし、ちょっと怖いな。
......ドンッ!!
...え?え?なになに?
心臓が飛び出るかと思った。
急に自分のいるこの棚が、
叩かれたのだ。
誰が叩いたんだろ?怖い。
トウァ「...アリシア?」
小さい声で言う。
あ、これじゃ、聞こえないか。
棚の扉が開かれる。
あ、アリシアだ。
アリシア「庭に行っててって
言ったじゃん」
アリシアはムッとした表情で言う。
トウァ「あ...うん
びっくりした。
でも、何で、ここにいるってわかったの?」
アリシア「私、この獣耳あるから、
耳が良いんだよ。
トウァがそーっと家の扉、開けて、
棚の扉、開けた音とか、
全部、聞こえてたんだからね」
トウァ「...そっかー」
なんだ、耳、良かったんだ。
アリシア「ほら、早く庭、行って
私、まだ排泄してないから」
トウァ「...別にここで待ってて良くない?
なんで、先に庭に行かせたいの?」
気になる。隠さないで欲しい。
アリシア「...だって、聞こえるじゃん。」
トウァ「え?」
何がだろう。
アリシア「...おしっこの音とか、
聞こえるんだよ。
トウァの音、聞こえちゃったし、
トウァが家にいたら、
私がしてる音、聞こえるじゃん」
アリシアは口を尖らして言う。
トウァ「あー、確かに
でも...気にする?
気にし過ぎじゃない?
これから、家で過ごす時とか、
アリシアが厠に行く度に、
家を出なきゃいけないのって、
めんどくさいんだけど」
アリシア「う、まぁ、そうだけど...
えぇ...」
アリシアは迷ってる様子を見せる。
トウァ「早く行ってきなよ。
別に自分は気にしないから」
アリシア「うん」
アリシアは根負けして厠に行く。
そんなに聞こえるんだろうか。
自分の場合は立ってしたから、
大きい音が鳴ったけど、
アリシアは座ってするだろうし、
そんなに音しない気がする。
......アリシアが戻って来た。
アリシア「じゃ、行こっか」
アリシアは微妙な表情をしてる。
トウァ「聞こえるもんなんだね」
アリシア「言わなくていいよ!」
アリシアはそう乱暴に言った。




