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幸せな朝

アリシア「トウァ,起きてー、朝だよー」

可愛い声が聞こえた。

フワフワしてて美味しそうな声だ。


うつらうつら、目を開けると、

右隣にアリシアが寝床(ベッド)の上で

床に足を下ろして座っていた。


アリシア「起きた?」

アリシアは笑顔で自分に言う。

機嫌は直してくれたんだろうか?

昨夜、自分がさんざん、

アリシアの獣耳(ケモミミ)をイジって、

かなり不機嫌にしちゃったから

心配だった。


トウァ「もう、怒ってない?」


アリシア「え?あぁ、

別にそんなに怒ってないよ」

アリシアはあっさりと言う。

自分が気にし過ぎていたみたいだ。


トウァ「そっか、なら良かった」

自然と笑みがこぼれる。安心した。


ふと、アリシアの表情がストンと落ち、

アリシアが困った様子で言う。

アリシア「ねぇ、トウァ。

トウァのご飯って、トウァの家だよね」


トウァ「あー、そうだね。

まあ、学校,行って、帰ったら食べるよ」

今から自分の家に行って、

朝ごはんを食べ、

そこから学校に行くのは

時間的に無理だ。


アリシア「昨日、ここに呼び出したのは

私だし、私の食べていいよ?」

アリシアは申し訳なさそうに言う。

アリシアが自分なんかに

申し訳なく感じなくていいのに。


トウァ「いや、いいよ。

アリシア、食べなよ」

アリシアに我慢させたくない。

こんな可愛い動物の餌を

取り上げるなんて自分にはできない。


アリシア「んー、じゃあ、一緒に食べよ?」


トウァ「...そうだね。そうしよっか」


食事が運ばれてくる場所には、

青魚 (という名前の肉厚な海草)と、

消しカスパン (虫の巣の事。

青緑の部分は綿状の卵。

白い粒々は虫の(フン)

白い綿(スポンジ)状の所には、

その虫がいる)があった。

挿絵(By みてみん)

そして、その横には

アリシアが()いだと思う、

水の入った、飲みかけの飲み皿(コップ)がある。


丁度いい。自分はいつも口呼吸だから、

寝て起きると、

喉が痛いくらいに渇いている。

トウァ「ねぇ、アリシア。

それ飲んでいい?」

飲み皿(コップ)を指さして聞く。


アリシア「うん。いいよ」

ひんやりした飲み皿(コップ)を持って、

水を飲む。


水が喉を通ると共に、

喉の違和感がすっと引いていく。

美味しい。満たされた。


ふと、この飲み皿(コップ)

アリシアが使ったと思うと、

アリシアの唇がハムっと挟まれた所に、

自分の唇を挟んだかもしれないと思うと、

変な気分になる。気にし過ぎか。

アリシアも別にその事を

気にしてる様子はないし。


アリシア「じゃ、食べよっか」

アリシアは左手で、青魚を1枚、

肉裂(フォーク)で刺して食べて

自分にその肉裂(フォーク)を手渡す。


そんな、アリシアの

食べている姿を見ていると、

肉裂(フォーク)の先っちょが

アリシアの口の中から、

唇から出てきたところを意識する。


そして、肉裂(フォーク)をまじまじと見ながら、

唇に当たる肉裂(フォーク)の感触を

変に意識しながら

肉裂(フォーク)を口の中に入れる。


そして、その自分の食事風景を、

自分と同じ様に見ていたアリシアは、

自分の口の中に入って、

出てきた肉裂(フォーク)を手渡されて、

困った様子になる。


アリシア「え、これ、その、

トウァの口の中に入って、

それで出てきてさ...その...」


トウァ「嫌?」

アリシアは、自分の唇に触れて、

口の中に入った食器は

使いたくないのかもしれない。

そうだとしたら、なんか悲しい。


アリシア「嫌とかじゃないけど、

恥ずかしく...ない?」


そう言えば、人永時真伝に

[私達,騙幸人は人類種の中で珍しく、

性に羞恥を感じる]と書いてた。

これがそうか。


トウァ「じゃあ、どうする?

食器,他にないし」

ちょっとニマニマしながら言う。

期待してるのだ。


アリシア「...うー、

じゃあ、恥ずかしいけど、我慢するよ。

トウァは大丈夫なんだよね?」


トウァ「うん。さっき、食べた時、

意識しちゃったけど、嫌ではないよ」


アリシア「そっか」

アリシアが青魚を肉裂(フォーク)で刺して、

そそくさと口の中に入れる。

意識しないようにだろうか。


アリシアが口から肉裂(フォーク)を出して、

自分に手渡す。

でも、結局、恥ずかしそうにしてる。


そして、

「口から肉裂(フォーク)を出して」なんて、

変なところを注目している自分は、

やっぱり意識してしまっている。


アリシア「ねぇ、

あんま食べてるとこ見ないでよ、

余計,恥ずかしいから」


トウァ「何か、見てみたいんだもん」

人が食事をしている所は、

あまり見た事がないからか、

見入ってしまう。


幼育院では、食事は個室でしてたし。

大人(おぅと)になってからも、

食事は家でするから、

人が食事をしているのを見た事がない。

だから、人が食事をしてるのを

見るのが新鮮だ。


いや、アリシアが

何かしているのを見る事自体、

楽しいというだけかもしれない。


青魚を、肉裂(フォーク)で刺して、

口のところまで持ってく。


そして、あえて、

口の前で1秒くらい、

手を止めてから見せつける様に、

口を(おっ)きく開けて、

口の中に肉裂(フォーク)をゆっくり入れる。

自分には見ないでと言ってたのに、

アリシアはちゃっかり

それをじっと見ている。


そして、そんな肉裂(フォーク)を手渡す。


アリシア「ねぇ、

わざとやってるの?ねぇ」

アリシアは恥ずかしそうな表情で

口を尖らせて言う。


トウァ「なんかさ、

アリシアが恥ずかしがってるの、

見るの楽しいんだよ」


アリシアの反応が面白くて、

ついつい、からかったり、

ちょっかいをかけたくなる。


アリシア「酷いよ。

昨日もすっごいしつこく、

私の獣耳(ケモミミ),イジってきたじゃん。

ダメって何回も言ってるのに、

全然やめてくれてなかったし」


アリシアは獣耳(ケモミミ)

パタパタさせながら、

怒ってる感じで言う。


怒っている時は、

獣耳をパタパタするみたいだ。

可愛い。


トウァ「また、したいなぁ」

悪びれる事もなく言う。


アリシア「もうさせてあげないし、

次したら許さないから」

アリシアはきっぱりと言う。


トウァ「えー、昨日、

すっごく楽しかったのに。


アリシア、自分の肩に手ぇ乗っけて、

獣耳(ケモミミ)ビクビクさせながら、

赤い顔ですっごく

可愛い声出してたよ。

あれ、また聞きたいなぁ」

昨日は本当に楽しかった。

あんなアリシアが見れたし、

獣耳(ケモミミ)も思う存分,楽しめた。

アリシアの事を好き放題、

いじめるのは楽しい。


アリシア「...それは言わないでよ」

アリシアは恥ずかしそうに

小さな声で言う。


トウァ「ああゆう感じのアリシア、

好きだよ」

素直に、思った事を伝える。


アリシア「......好きとか可愛いとか、

言って恥ずかしくないの?」

右に座るアリシアは

自分に顔を向けず、

目だけこちらに向けて言う。


...自分は変な事を、

言っているのだろうか。

よくわからない。


トウァ「...そう言われると、

恥ずかしい気がしてきた」

自分はアリシアが好きだけど、

それを言うのは恥ずかしい事なのか。


でも、アリシアには

自分がどんな事を考えて、

何を思っているのか、

全部,理解して欲しい。

そうすれば、独りじゃなくなるから。


アリシア「言われる方も

恥ずかしいんだよ。

...ちょっと、嬉しいけど」

嬉しいなら、喜んでくれるなら、

たくさん、好きって、

可愛いって言いたいけど、

あんまりアリシアを

恥ずかしがらせて、

困らせないようにしよう。


いや...困らせたくもあるか。



~それから、食事を終え、

アリシアと一緒に学校に向かってる。

アリシア「ねぇ、トウァの家って

何処にあるの?」


トウァ「んー、覚えてないなぁ。

でも、アリシアの家から、

1kmくらい離れたところだよ」


アリシア「そっか。

ねぇ、今日、学校、終わったら、

トウァの家,行っていい?」


トウァ「うん、いいよ」

前だったら、そんな誰もしていない事、

この世界で決まっていない、

例外をするのは怖かった。


でも、アリシアがいるなら、

何も怖くない。


この世界がなくなっても、

アリシアとさえいられれば、

それでいいのだから。


アリシアが世界なのだから。


アリシア「じゃあ、

今日は一緒に帰ろうね。

それと、トウァ。

公域SLに行く話どうする?」

アリシアとはロメス・ヘルムが埋めた

大量の書物を探しに公域SLに

行く事になっている。


トウァ「んー。まず、ご飯、

持って行かなきゃだよね。

労働で収穫してる物とか食べれそうだし、

それ持って行けば良さそう」

人永時真伝に、騙幸(カタサ)人は、

食料などの原材料を作る役目があるって

書いてたから、労働で収穫して、

回収箱に入れていた物は、

食べられる気がする。


アリシア「うん。そうだね。

さすがに90日分もってけないから、

ある程度は公域とかで

現地調達しなきゃだけど」

そう言えば、公域SLに着くまでに

62日~93日かかると言ってた。


アリシア「私,前からよく、

植物とか、食べたりしてるんだよ。


いつも朝と昼に配られる食事って、

回収箱に入れられた物を、

何かしら加工して作られてるから、

回収箱に入れてる物って、

そのままじゃ食べれなかったり、

美味しくなかったりするのが多いけど、

そのままでも、美味しく食べられる物も、

いくつか知ってるの。


今日,トウァの家に行ったら、教えるね」

アリシアは笑顔で言う。

自分も最近、他の人の様に、

いや、アリシアの様に、

笑顔でいられている気がする。

アリシアのおかげだ。

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