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49.両親のお迎え

それからはバタバタだった。

急いで朝食を食べ終え、部屋を片付けているうちに、両親が到着してしまった。


客間で両親同士が歓談している間、真理は大急ぎで荷物をまとめ終え、やっと客間に出向いた。


すでに昼食のお寿司が並んでおり、全員で真理を待っていた状態だった。

高田も下座で呆れたように真理を見上げている。


「ご、ごめんなさい!!」


「もう! 真理ったら何やってるのよ。本当に申し訳ございません。いつもこんな調子でご迷惑ばかりかけていたのでしょう?」


真理の母は、隣に座った真理の頭を押さえて下げさせた。


「いいえ! もう、真理ちゃんがいてくれて本当に楽しかったんですよ! ねえ、お父さん? 翔?」


「そうそう! 迷惑だなんて! 楽しかったですよ! ねえ、真理ちゃん。またすぐ遊びにおいで!」


高田の母に振られて父も楽しそうに答えた。

真理はチラリと高田を見ると、高田はそっぽを向いていた。


(・・・)


真理は俯き、目の前の特上寿司をじっと見つめた。


(最後の晩餐・・・)


結局、高田にお詫びもお礼もできていない。

それさえもさせてもらえずに、この関係は終わってしまうのか・・・。


込み上げる寂しさを堪えつつ、真理は寿司を口にした。





「では、本当にありがとうございました。すぐにでも、またご連絡差し上げますので」

「今度は是非我が家にお越しください」


真理の両親がペコペコ頭を下げている後ろで、高田と真理は荷物を車のトランクに入れていた。


「ありがとう・・・」


全部の荷物を入れ終わった後、真理は小声でお礼を言った。


(ああ、本当にこれで終わっちゃったな・・・)


トランクを閉めたら、もう車に乗る。

そうしたら、さようならだ。もう赤の他人様だ。


じんわりと寂しさ湧き上がる。

それを振り払うように、無理やり笑顔を作ると、


「高田君、今までありがとうね。これからはもう接点無くなるけど・・・。それなりに楽しかったわ」


高田に向かって出来るだけ明るい声で言った。

トランクを閉めようと、ドアに両手を添えていた高田は、不満そうな顔をして真理を見た。


「何勝手なこと言ってるの? 図々しいな」


「え・・・?」


「まだ、『お詫び』も『お礼』もされてないけど」


「・・・!」


「まさか、逃げる気?」


高田はジロリと真理を睨んだ。


「え、えっと・・・、ううん! まさか!」


真理はパチパチと瞬きして高田を見たが、すぐに首を振った。


「だって、何にも言ってこなかったから・・・」


モゴモゴと言い訳する真理を見て、高田は意地悪そうにニッと口角を上げると、


「なんせ、二つもあるからね。じっくり考えるよ」


そう言ってトランクを閉めた。

そして澄ました顔をして、自分の両親のもとに戻っていった。


最後にもう一度、真理家族は高田家族に深々と頭を下げてから車に乗り込んだ。


「真理ちゃん! また絶対遊びに来てね! いつでもお弁当作ってあげるからね!」


高田の母は後部座席の車の窓を覗き込んで、真理に手を振った。


「はい! また来ます!」


真理も満面の笑みで手を振った。

どうしてか、後ろめたさが無い。

もう来ることないはずのに。嘘を付いているのに。


でも、なぜか顔がほころぶ。


―――まだ終わってない。


『お詫び』と『お礼』がまだある限り、高田との関係はまだ終わらない。


真理は両親の後ろに立つ高田をチラリと見た。

高田は黙って立っているだけだ。だが、じっと真理を見ている。

真理と目が合っても逸らさなかった。


真理の心臓がトクンと鳴った。

頬がほわッと赤くなるのが自分でも分かった。


と同時に車は発進した。

真理は急いで窓から顔を出し、高田家族が見えなくなるまで手を振った。





「あ~あ、帰っちゃった・・・」


真理家族が乗った車が見えなくなるまで手を振っていた高田の母は、寂しそうに手を下ろした。


「まあまあ、母さん。すぐに遊びに来てくれるだろう。翔とも仲良くなったことだし」


父は励ますように母の肩をポンポンと叩いた。


「なあ? 翔?」


「・・・さあね」


高田は小さく呟くと、踵を返して玄関に向かった。


「そうよ、そうね! 早くまた家に連れてきてね、翔!」


母は気を取り直して、父と一緒に息子の後を追うように玄関に向かった。


「それにしても、お弁当作りが無くなってつまらないわ・・・。お父さん、お弁当にする?」


「え゛・・・」


「だって、翔も食堂で食べるってお弁当止めちゃったし・・・」


「で、でも、ほら、父さん、昼に顧客との打ち合わせが多いからさ~。そういう時は、どうしても外で食事になっちゃうからな~」


言い訳する父をジトっと見つめる母親に、高田は振り向いた。


「ああ、母さん。また月曜日から弁当持ってくよ」


「え?」


「購買は・・・、いや、食堂はもう飽きたから。でも、普通(・・)の弁当にしてくれよ。普通(・・)の」


そう言うと、玄関の扉を開けて家に入って行った。


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