表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/66

12.新生活スタート

一週間に渡る真理の猛抗議も空しく、次の日曜日の早朝に両親は北海道に飛び立ってしまい、昼過ぎには、真理は大荷物を持って高田邸の前にブスっとした顔で立っていた。

その隣には、同じく、いやそれ以上にブスっとした顔の高田が、真理の荷物の半分を持って立っている。

高田は無理やり『荷物持ち』と称して真理の家までタクシーで迎えに行かされたのだ。


「言っておくけど、私、頑張って抵抗したからね? 来たくて来たわけじゃないから!」


高田家の門を前に、真理は高田に向かって念を押した。


「それでも、結果、来るはめになってるんだから意味無いね。君も大概役立たずじゃないか」


高田は真理を一瞥すると、はぁ~と長い溜息を付いた。


(うぎぎ~~っ!)


先週の自分の暴言をそのまま返されたが、真理は言い返せない。

歯を食いしばりながら高田を睨みつけた。


「とにかく、中へどうぞ」


高田は、そんな真理など目も向けず、わざとらしく丁寧に門を開けると、真理に先に入るように促した。

真理はフンっと顔を背けると、ドシドシと歩きながら玄関に向かった。


高田夫妻からは熱烈な歓迎を受け、例の真理の部屋へ通されると、


「すでに胃が痛いんだけど・・・」


自分の荷物をドカッと置くと、ベッドに座り込んだ。


高田夫妻の親切ぶりに、何故かとても後ろめたくなる。

自分は彼らの息子と何の関係も持つ気はないのだ。

なぜなら、自分には想い人がいるのだから。


何故に自分がこんなにも背徳感を覚えなければいけないのだ・・・。


(私が悪いわけじゃないのに・・・)


「胃薬いるなら持ってくるけど」


高田は真理の荷物を部屋に放るように置くと、顔も向けずにそう言った。

その口調からは労わりのイの字も感じない。


「高田君は、後ろめたくないの? おじ様もおば様もあんなに喜んじゃってるけど・・・」


「なんで俺が後ろめたく感じなきゃいけないだよ? 本来逆だろ? 嫌がっている俺たちに対して後ろめたく思うのは向こうのはずだ」


「・・・そ、そうか・・・」


「それなのに、あんなに浮かれて・・・。アホなんだよ。放っとけよ、まともに相手していると本当に胃に穴が空くぞ」


高田は肩を竦めた。


「じゃあ、先週も言ったけど、くれぐれも俺の生活を邪魔しないように頼むよ。出来るだけ関わらないでくれ」


「な・・・!」


憤慨しかけている真理を無視して、高田はさっさと自分の部屋に行ってしまった。


(く~~、相変わらず気に入らない!)


真理はもう誰もいない部屋の入口を睨みつけた。


「大丈夫よ、真理! 元気出せ! 二ヶ月なんてあっという間よ! 目を瞑っているうちに過ぎるわ!」


むしゃくしゃする胸をトントンと叩き、真理は自分を宥めるように言い聞かせた。





「行ってらっしゃい! 翔、ちゃんと真理ちゃんを学校まで案内するのよ」


翌朝、高田の母親ににこやかに見送られ、真理と高田は一緒に家を出た。


「ちょっと、高田君、歩くの早いんだけど!」


スタスタと歩く高田を、真理はほぼ小走り状態で付いて行く。


「毎日、一緒に登校するのはごめんだから、駅までの道は一回で覚えてくれよ」


高田は振り返りもせずに、面倒臭そうに言った。

真理はその言葉に苛立ちながらも、高田の横に並んだ。


「分かったから、もう少しゆっくり歩いてよ」


「・・・悪いけど、離れて歩いてくれる? 人に見られたくないんだけど」


「は?」


「だから、一緒に登校しているところを人に見られたくないだよ。意外といるから、この界隈にも同じ高校の生徒が」


高田は真理をチラリと見た。


「噂になったら迷惑なんだよね。適当な距離を保って後ろから付いてきてくれる?」


「ぐっ・・・」


あまりの言い草に、真理は思わず言葉を詰まらせて立ち止まってしまった。

高田はそんな真理の事などお構いなしに、スタスタと歩いて行く。


(コノヤロー・・・)


真理は歯ぎしりしながら高田を追いかけると、ぴったりと隣に並んだ。


「だから、横に並ぶなよ」


高田は苛立ち気に真理を睨みつけた。


「迷惑かけられたくなかったら、私に協力してよ! 川田君の事!」


真理はフンっと鼻息荒く、そっぽを向いた。


「ふーん・・・、俺と仲良く登校していることを川田君に知られてもいいんだ?」


「あ・・・」


「しかも、同じ家から通ってるって」


「・・・」


「噂になることは俺だけじゃなく、君にもメリット無いんじゃないの?」


「チッ・・・」


真理はスススーッと高田から離れた。


(くそ~、融通の利かない奴め!)


真理は高田の後頭部を睨め付けながら、数歩後を付いて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ