表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

ひとりにしないで

 五歳位の少女が、一人で立っていた。彼女は華やかなデパートで、じっと立っていた。


 はぐれたのだ、母親と。


 母親が商品を見て立ちどまっている間、彼女はそのまま立ち止まらず自分の見たいを物を見に行ったのだ。母親は彼女がどこかへ行ってしまった事に気づかず、そのまま商品を見ていた。


 どちらも互いが離れた事に気づかず、離れてしまった。


 彼女は、迷子だ。


 彼女はじっと立っている、母親が見つけてくれるのを待っているのだ。無闇矢鱈と動かない方が、見つかり易いのだと知っていたから、じっとしていた。


 周囲を生きかう人は、彼女が迷子だとは気づかない。人待ち顔で不機嫌そうに立っている彼女は、迷子には見えない。


 彼女はひたすら耐えていた、孤独と言う名の苦痛に。周囲にいくら人間がいようと関係ない、彼女にとってそれが人でなければ、彼女は独りぼっちだ。


 長い時が過ぎた、にじむ涙を堪える。泣けば人間がよってくる、それは嫌だった。そんなものにいちいち応答するのは億劫だった。うつむき、ひたすら人を待つ。


 そして、彼女は自分の名が呼ばれるのを聞いた。


 母親にかけより、抱きつく。堪えていた涙が零れ落ち、感情のまま喚き散らす。


 「ひとりにしないで、っていったでしょう!」


 あまりに理不尽なその言葉、命令とも願いとも取れるそれ。


 それが彼女の望みの全てである。


 余談ですが、私はよく迷子になります。

 足音があまりしない上に、人の死角をつくような動きをするから。原因を人に聞いたらそう言われました。

 そんなつもり無いんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ