ねーねー、この世にあるすべてのモノってさー、生きてるんじゃないのー?
哲学が嫌いな人には嫌な話かもしれません。
十歳位の少女が、本を読んでいた。重たそうな図鑑を、目を輝かせて読んでいる。その本のとある一ページを、食らい付くように見つめていた。
ばたん
彼女は閉じた本を胸に抱え、姉の元へと向かった。とてもうれしそうな、きらきらとした目で。
「ねー、おねぇ!」
「なんだよ?」
けだるそうな姉に、彼女は笑顔で問いかけた。
「あのさー、この世にあるすべてのものって生きてるのぉ?」
「はぁ?」
「だってさー、人のからだの中に金属あるんだよー、だったらさ、金属って生きてるんじゃない?
なんかね、キカイも生き物もおなじモノでできてるんだって。だったらさ、こーゆー机とかも生きてるってことじゃない?」
「んなわけないだろ?」
「えー、なんでだよー?」
「知るか」
妹の話に興味を失った姉は、適当にしか返事を返さなかった。
「ぶーぶー、ねぇのバカー」
そう言い残した彼女は、母の元へと向かった。
「ねーねー、おかーさーん」
洗い物をしていた母は、そのまま洗い物を続けながら娘に返事を返した。
「なぁに?」
「あのさー、この世にあるすべてのモノって生きてんのー?」
「……はい?」
娘の妙な発言に、母の手が一瞬止まった。
「だってさー、人もこのへんのモノもおなじものでできてんだよー。だったらさー、この世にあるすべてのモノは生きてんじゃないのー?」
「生きてるわけないでしょ」
「なんでだよー」
「そんな事より、ちゃんと宿題やった?」
「んー、まだ」
「早くやりなさい」
「はぁーい」
母に怒られたので、彼女は本を持って部屋へと戻った。宿題のドリルを開いて宿題を始めるのだが、ものの数秒で飽きて、机を叩きだした。心の中で不満を言い散らかす。
何でだれもまじめに答えてくれないんだよー。
そういや、つくえが生きてるとしたら、私すごいつくえ引っぱたいてるんだよなー。
わるいことなのかなー?
そう思い、彼女は机を叩くのをやめた。代わりにその表面をなで、その質感を味わう。滑らかなその触感は、磨かれた木の物だ。
たしか「植物は生きているんですよ」って誰かがいってたよなー。
つくえって植物だよね。でもさー、つくえは生きてないっていうんだよね。
おんなじ植物なのに、何でだろ?
傍らに置かれていた図鑑を再び開き、先ほど凝視していたページをまた見始めた。そのページの項目は“生命ってなんだろう?”元素の存在を元に、宇宙にある物質は同じ物質である、と言った内容をわかりやすく綴った、短い文章がそこにあった。それを眺めつつ、彼女は再び問いかける。
ねー、なんで? 何で生きてないっていうの? 中身はおんなじじゃん、だったら生きてるんじゃないの?
水も土も木も鉄も、人も、おんなじものでできてるなら、みんな生きてるんじゃないの? なんの差があるの?
ねぇ……、何が生きてて、何が生きてないの?
ねーねー、誰かおしえてよ。
ねーねー
ねーねー……
彼女の心の中の問いに、答えるものはいなかった。
今こんな質問はしませんよ、誰にも。
変な目で見られますよ!
ちなみにまだ忙しいです、ちゃんとした連載は期待しないでください。すみません。