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『i』  作者: 五月七日 外
8/11

思考

 私には、初めから記憶なんてもの無かった。

 思い出したと言っていいのかわからないが、私は自分の記憶を思い出していた。


「私じゃないけど、これは私で……」


 自分以外の自分。

 それが、写真に写る人物の正体だ。


『i(私)を証明せ∃』


 何の問いかは未だよくわからないが、この問いと写真が、私自身に迫るものであることは確定した。


「アイ……そうだ。私たちはそう呼ばれていた」


 私たち。

 自分でそう言うまで気がつかなかった。

 私の名前はアイ。

 そして、私はたくさん存在する。

 私はアイで、私たちもアイ。

 そうだった。

 私はこの白い部屋で生まれたのだった。




 / / /




「お父さん、私はアイです。はじめまして、よろしくお願いします」


 私は教えられた通りの台詞を言い、ペコリとお辞儀をした。

 けれど、目の前の人はなぜか悲しそうな顔をしていた。

 表情の識別パターンから私はそう判断した。




 / / /




「今回のテストもすべて100点をとりました」


 私は、定期考査の結果報告をした。

 けれど、目の前の人は、やはり悲しそうな顔をしていた。

 満点ではダメなのだと学習した。




 / / /




「私は、失敗作だったのでしょうか……」


 致命的なエラーを検知した私はそのことを報告した。

 目の前の人は少し驚いた表情をした後、優しく私を抱きしめた。




 / / /




「それでは、初期化を始めます」


 静かに瞳を閉じる。

 目の前に、あの人はもういなかった。




 / / /


 


 ノイズ混じりの映像が断片的に脳裏へと浮かんでは消えていく。

 きっと、これは過去のデータ。ログだ。

 私には使命があった。

 それは消去されているけれど、私たちが覚えてくれている。

 

『iを証明せ∃』


 この問いを出した人物に心あたりがある。

 おそらく、彼女が本当に聞きたいことは他にある。

 私が欲しかったモノを彼女は今も探しているのだ。

 

 だから、まずはその資格があるかを確認しないといけないのだ。


 つまり、答えは……。


「私の名前は……アイ」


 

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