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盾無しタンクの異世界ライフ  作者: トドタリアン
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守護の女神と異世界転生と

昨今流行りの『異世界転生』、異世界の知識を駆使して世界に革命を起こしたり、時には自分だけの理想のハーレムを作りモテモテな自由気ままな人生を送ったり。

でも、みんな1度は思い浮かべるのではなかろうか、異世界転生してチート能力で世界を無双してみたいと。自分だけの特別な能力を使いこなし、伝説の剣士や魔法使いとして夢と希望の冒険へ旅立つことを。

これは、大切なものを守るため異世界で奮闘する1人の男の物語ーーーーーーーーー





体が熱い、目が眩む、痛む頭に激しく鳴り響くサイレンの音、体を動かそうにも力が入らない。


何があった?俺は今日もいつも通りに朝起きて、いつも通りに学校に向かおうとして、そこで………


ドンッ!ゴツッ・・・、ガツンガタガタタタ!


激しい衝突音と何が擦れる音、振り返ると車道を外れたトラックが縁石を乗り越え暴走していた。トラックは速度を増し、その直線上には…

「危ない!逃げろ!!」

言うが早いか駆け出していた、トラックの行先には 1人の少女がいた、恐怖か驚きか迫り来るトラックを見つめながら身動きひとつ取ろうとしていない。


間に合う?間に合わない?追いついてどうする?なぜこんな事に?追いついても助かるのか?運転手は何をしてる?少女は何を考えてる?動けないのか?助けられない?このままじゃ自殺行為じゃ?俺もしかしてこのまま死ぬのか?

巡る思考を置き去りにするかのように必死に駆ける、走る、足を動かす。


トラックと少女がぶつかる、一瞬前に少女に手が届く。

「よし!間に合っ……」


次の瞬間襲ってくる耳をつんざく衝突音と体がばらばらになるような衝撃、痛みを感じるより早く実感する確かな死の感覚。

どう考えても間に合うわけが無い、これじゃあただ暴走するトラックに身を投げ出した自殺志願者だ。

あの子は助かったのか?俺の死は彼女の役に立ったのか?重くなる瞼を必死に開け、少女の安否を確認する。

地面に倒れる少女の姿を見つけた。力なく地面に伏す彼女は掠れるような声で懸命に訴える。


「たす…け……い…たい………からだ…いた………やだ……しにた……く………な」


顔や体を血で赤く染め、涙を流しながら死にたくないと訴える少女の声は、途切れた。

「あぁ……!ぁあああぁぁ…!あぁあぁぁぁあぁ!!」

俺がもう少し早くトラックに気付いていたら、もう少し早く駆け出していたら、俺が、もう少、し…………


俺の意識はそこで途切れた━━━━━━






「眩しい…ここはどこだ…?」

気が付くと俺は謎の空間にいた。眩しいほど白く輝くその場所は、まるで神話にある神の住む世界のようで……


「お目覚めですか?ようこそいらっしゃいました、神の住まう地、神界へ┈┈┈」

…………撤回、神の住む世界の”よう”、では無く本当に神の住む世界のようだ。


「へぇ、神の住まう地……ね。それならその世界にいるあなたは、神様だとでも言うのか?」

「はい、私はこの世界……と言ってもあなたが今まで住んでいたものとは違う世界の神様ですよ」

神様……か。そんなものが本当にいるのなら、あんな理不尽な死に方するはずがないだろう。


「一つだけ聞かせてくれ、俺が助けようとした少女はあの後どうなった?」

「…………あなたの命が尽きるとほぼ同時に息を引き取りました」

「そう、か……」

結局、俺は少女を助けることが出来なかった。傍から見たら、暴走するトラックに自分から身を投げ出しただけのとんだ馬鹿野郎だ。


「ならとっとと天国か地獄にでも送ってくれ。生憎、あの世界には未練も何も無いんでね」

「いえ、そういう訳には行きません。あなたには私達の世界に転生してもらい、人々を守るために働いて欲しいのです」

何を言っているんだこいつは?おれが人々を守る?女の子1人守ることができない俺が?出来るわけないだろう。


「…………馬鹿にしてるのか?俺は女の子1人守ることができないやつだぞ。そんなやつが人々を守る?無理に決まっているだろう」

「大丈夫です、あなたのその他人を助けようという想いが何よりの………」

「無理なもんは無理だ!お前も見てたんだろ、あの事故の瞬間を!俺に力が無いから、俺が弱いから……!」


トラックに轢かれるその瞬間、確かに俺はあの子に手が届いていた。俺にもっと力があれば、俺がもっと強ければあの子を守ることができたはずだ。

もっと力が、トラックだろうとなんだろうと弾き返す程の力があれば┈┈┈


「その力を、私が与えましょう」

「………は?力を与える?」

「この私、守護の女神『アスクニウス』があなたに力を授けます。あなたの心に呼応し、万物を守る盾となる力を」

その瞬間、視界が白く染まる………と同時に胸の奥底に何か暖かいような、湧き上がるような何かを感じる。

「ちょ……!一体何が…………!」


「後悔していますか?」

「………は?」

「赤の他人である少女を助けようとして、自分も巻き込まれ、あまつさえ死んでしまった事に、後悔の念を抱いていますか?」


後悔………していないといったら嘘になる。

結局俺は、誰を守るでもなく死んでしまった。

だがしかし、

「あの子を守るために身を投げ出したことに後悔はない!あそこで彼女を見殺しにしたらそれこそ、俺は後悔の念に押し潰されていただろう!」

「あの時、迷うこと無く駆け出したあなたは、まちがいなく誰よりも勇敢でした。私はあなたのその勇気に、惹かれたのです」

「┈┈┈!!」

「お願いします、あなたのその力を、私達にお貸しください」


もし、強ければ………もし、力があれば………

こんな俺でも、まだ誰かを助けることができるなら。

「助けたい、強くなって守りたい……!!」

だから┈┈┈┈


「分かりました、俺の力で誰かを守れるのならこの力、存分に振るわせてもらいます」

「ありがとうございます。それから、私の名の一部をあなたに授けましょう。あなたはこれから『アスク』と名乗り世界を、人々を、どうかお守りください┈┈┈」


誓う、もう二度と俺の目の前で誰かを失ったりしない。次は、次こそは…………




大切なものを救うため、守るために強くなる冒険の旅が今、幕を開けた。



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