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スーザンドの魔導教室  作者: 生涯半端
最初の月
9/17

授業開始の鐘の音


 昨日とは打って変わり、

 妙な緊張感と牽制が見て取れる。


 普通授業か実習授業か。

 誰がどれを選択し、割合はどれほどか。

 魔法が扱えるようになるのは本当か。


 24時間では決め切れない。

 そして大半の生徒が普通授業を選ぶ。

 普通から実習への移動は、

 一時期を除き可能だからだ。


 実習授業はたったの三人だけ。

 否、三人もいた。



「スパルタ実習授業! 気合入れていきましょう!!!」



 やたらと声のデカい女子生徒。


 【ラッキー・ストラ】

 ヘアバンドをしているから以後はヘアバンと呼ぶ。

 元気もあり、体力もある。

 スタートラインは三人の中で一番前にいる。



「よ、ヨロシクお願いします!」



 クラス挨拶の際、発言した男子生徒

 

 【カイ・キク】

 勇気ある行動に一号君と呼ぶことにする。

 線が細いが、コレは出の問題。

 学校の食事を取れば改善は容易。



「先生、実習授業参加者は我々だけのようです。早く授業をしましょう」



 早く授業に移りたい女子生徒。


 【パーソン・ロジェ。】

 癖のある髪型、癖っ毛と暫定的に名付ける。

 魔法を学びたい姿勢は好印象。

 何より彼女の(うるわ)しい見た目に反し、

 その目は野生的で尚好印象。



「さて、実習授業参加者はこれだけなんだな? ……ヨシ、ならば我々は実習授業の場所に移動するわけなんだが、、その前に」



 適当な魔法の球を空中に浮かせた。

 火でも水でもない、ただの魔力の塊。



「先生、この魔法を使用した意味について質問します」


「「理由は分身魔法にある。分身魔法は前にも説明した通り、完全な俺をもう一人その場に生み出す魔法だ。完璧すぎるが故に、次に何をするか、何を言うかまで完全に同じなわけだ。今だって、一文字も狂わずに話せているだろ? これを解消するためには、どちらか一方に外的要因を発生させる必要がある。つまりはっ」」



 魔法の球がスーザンドの横っ腹に直撃する。

 時限式で発射されるよう設定してあった。

 威力は押さえていたが、防御魔法を解除していたために非常に痛がっている。



「これで差分化ができた。攻撃を受けなかった方の俺が実習授業を受け持ち」


「受けた方の俺が、普通授業を受け持つ。うぉ……」



 他にもやりようはいくらでもあった。

 小粋(こいき)なジョークのつもりで披露したのだが、

 あまりウケはよくない。



「それじゃあもう一人の俺、普通授業をよろしく」



 教卓と窓のある壁の間。

 剥がし忘れた紙が貼られているだけの壁。


 不必要なスペースに、

 常設の転移魔法を設置した。

 ただの転移陣だと誰彼構(だれかれかま)わずに入れてしまう。

 防止策として

 仰々(ぎょうぎょう)しい扉も設置しておく。

 扉には実習授業の生徒しか入れないルール付きでだ。



「よし、行くぞ」


「(また易々(やすやす)と物質魔法を。やはりこの先生に教えを()う事が一番の近道……!)」


「行くって……もしかしてこの扉、何処かに繋がっているんですか。学校内の施設の何処かに」


「行けばわかるさ。そのために、実習授業を選んだんだろ」



 三人の背中を押し、扉の中へと押し込む。


 その時の残留組の視線はとても情熱的だった。

 少しでも何が起きているかを知ろうと凝視する者。

 周りに悟られまいと、ちらちらと様子を(うかが)う者。


 彼らも学びたいのだ。

 だが一歩踏み出す勇気がないだけで。



「それじゃあ、我々は実習授業に移ります。途中参加したい場合は、休み時間中にどっちかのスーザンドを捕まえてください。ではでは、頑張って勉学に(はげ)んでください」



 片割れのスーザンドが扉へと消えた。

 残った生徒達は、

 しばらくの間、扉から意識を離せずにいた。



「……えーっと、では普通授業用の教科書を配ります。その際、無料で筆記用具やノートなど授業で使う品も配布しますので、無くさないようにしてください」



 この時、スーザンドは思いついた。



「(実習授業を受け持つ方のスーザンドが俺。普通授業を受け持つ方のスーザンドを私としよう。より差分化出来る。後で共有しておこう)」



 分身体を解除すれば

 自動的に記憶は共有可能。


 しかしスーザンドは面倒臭がった。

 1年間毎日解除しては

 分身体を生み出すのは非効率的。


 それならば1年間、分離しておいていい。

 自分のことだから、何も困り事はない。


 そう考えた。



「センセー、あの扉の先ではなにをやってるんデスカー」



 ノートを配っている最中、

 金髪の女子生徒が話しかけて来る。


 【ワラウ・クルロア】

 彼女は見た目がわかりやすい。

 髪が金髪でわかりやすいが、

 あだ名が髪ばかりでは面白みに欠ける為保留。



「それは実習授業を受けた人しかわかりません」


「なんで教えてくれないんですカー?」


「教える必要がないからです。普通授業に関連する事を、実習授業では一切行いません。知るだけ無駄ってやつです」


「ちぇー」



 普通授業の内容。


 一般魔法学の基礎知識の習得

 魔法の成り立ちや偉人の名前

 ほどよい魔法運動や実験


 平たく言えば、

 普通の学校の魔法版だ。


 それよりも彼女。

 クルロアの質問の最中、

 クラス全員の意識が二人に注がれた。


 自習授業の内容が知れるかもしれない。

 だから聞き耳を立てていたのだろう。


 そこまで興味があるなら

 何故、実習授業に入らなかったのか。

 理由は実習授業は途中参加こそ認めているが、

 その逆は認めていないからだ。


 つまりは実習を辞めて、

 普通授業へと移ることができない。

 授業開始前に説明したが、それで様子見する生徒も増えたのは事実。



「(半端に知識だけを教えて投げ出されると、後の人生が転落しかねないからな。私の生徒となった以上は、胸糞悪い死も半端な魔導士にすることもゴメンだ。)さて、では最初の授業は魔法学の基礎、基礎属性について話していこうか」


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