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試作ワープゲート


 レオナ達は先程のガラスケースで囲まれていない触れ合えるスペースに来ていた。ミゼリが言うには全てボタンを押す事で動作すると言っていたのでレオナは適当にボタンを押した。


 すると、優しい風が髪を撫で始める。


「ロードこれ凄くない?」


 はしゃぐ声にロードは近き何で笑っているのか確認した。レオナの前には二つの器具が並んでおりプリズムがそのまま机に固定されていた。


 もう片方はプリズムに機械がくっついていた。どちらのボタンを押しても同じように風を感じる……プリズムと接続された機械がくるくると回り手で仰ぐように風が生まれていた。


「これは魔石から風を生み出すか機械を動かす違いがあります!」


 ミゼリが隣で説明してくれた。


「魔力を動力にするか風に変換する違いがあるんだけど風を生み出す結果は同じです!」

「でも、これって機械を使わないで魔石だけの方が持ち運びも考えたら良くない?」


 レオナの疑問にミゼリは目を輝かせた。


「お姉ちゃん良く見てますね! そうなんです。ただ風を送るだけなら魔石を持つほうが簡単なのですー。でも、風の勢いとか向きとか違いますよね?」


 そう言われてレオナは魔石と機械に手を当てた。魔石の全体に流れる風と機械の一方向に流れる風の違いは向きだけでは無く力も違った。


「魔石の方が弱いかな?」

「そうです。しかも魔力の消費量も全く違います。動力にするほうが少ない魔力で済むんです!」

「なるほどぉー。そういう違いがあるんだね」


 何をやるのかで消費量が変わる。より効率的かつ楽に動く物を作るのが難しいとミゼリは言った。


 そんな風に驚いていたレオナと少し離れてメアリが分かりやすい物を見つける。


「お嬢様。こちらに見慣れたものがありますよ」


 メアリの声にレオナが気づいて見ると照明が置いてあった。火を使わずに辺りを照らす器具はオフィキナリスの街中で見ることが出来る。


「ロードも部屋にあったでしょ? 夜も明るいから本だって読めるわよ」

「あぁ、そういえばまだ読んでなかったな。これも此処で作ってたのか」


 ロードがお風呂に入る前に暗闇の部屋でボタンを押して明かりをつけたり消したりして遊んでみた事は誰にも言っていない。


「これは面白いですよ。ちょっとだけ複雑です! この魔石でまずは発光させるんです。色を変えるのとは違って少しだけ難しいんですよ! そして、ガラスで覆って生み出した光を拡散させるんです。このガラスにも溶かした魔石を薄く塗って光を拡散させる機能をつけてあげれば小さな光でお部屋が明るくなります」


 ミゼリは笑いながら続ける。


「失敗もしてるんですよ。ガラスに薄く塗った光を拡散させる機能を外側にも適用させたら光がぴかぴかで眩しいんです。部屋中に光が反射しまくってきらきらのぴかぴかで眩しくて駄目だったんです」

「わぁ~、成功している物しか知らなかったけど失敗も沢山あるんだね」

「難しいんですよっ。ミゼリが作ってたものも爆発して後少しで火事になってました」


 楽しそうに笑って過去の失敗を思い出すミゼリとは違いレオナは心配してしまった。


「ミゼリちゃん絶対に大人の人と作業をするんだよ? 危ないわ」

「はーい。クロユリ所長が良く見てくれるから大丈夫です!」


 手軽に触れ合える場所を抜けると次は大掛かりな機構をミゼリはお披露目した。


「見てください。あっ……いえ。大丈夫のはずです。確かお姉さんはオフィキナリスですよね復旧率は高いはずです。こちらがお風呂になります!」


 ミゼリはそう言ってスケスケのお風呂を前に両手をあげた。誰かが使用している訳ではなくレオナの国民が使っているであろう普通のお風呂場を全面ガラスで再現している。


「なんか昨日使ったお風呂とは違うな。狭い」


 ロードは昨日の記憶を思い出していた。浴場は広く足も伸ばして入れるお風呂とは違い一人で入るくらいしかないスペースに違和感を覚えている。


「ロード。一応、お城のお風呂だから少しは違いがあるのよ。国民が使ってるお風呂はこんな感じよ」

「そういうことか」


 一般的な家庭のお風呂だとロードは納得した。


「このお風呂ですが、お水もお湯もでますよね? そこをガラスで見えるようにして仕組みを分かりやすくしてます。皆さんは慣れているかもしれませんが遠い国だとアリシアのお風呂を見たこと無い人も沢山いるのです! そういう国の人がみて自分のところに取り入れる宣伝を展示会でしてたりするらしいのですよ」


 ミゼリの説明を聞いた後にメアリが口を開いた。


「お嬢様。アリシアとのやり取りを先に始めたのはオフィキナリスでございます。隣国であるジェネラルは遅れて導入しているはずです。なので、我が国の普通は他国では違うと思ったほうが無難ですね」

「そうなのね。私はジェネラルには行ったことが無いからあっちがどうなってるのか知らなかった。ルナ姉さまが確かジェネラルから帰ってくる予定よね? 今度聞いてみようかしら」


 アリシアの経済はお風呂一つみて分かるように今までの生活向上に繋がる便利な機能を提供することで回している。そして、その仕組をミゼリは精一杯の説明を始めた。


「ボタンひとつで温かいお水が出るのです。水道が繋がっていて……ほら。ここの魔石で温めています。温度の設定はここのつまみで変えるんですよ。あとそれにも魔石が使われていて細かく調節出来るの。あ、見てください。ここのお水が通るところも凄いんですよ! 設定した温度と実際のお水を比べて高すぎても低すぎても止まっちゃうの。だから、最適な温度で流れます」


 目をキラキラして説明するミゼリにレオナ達はついて行けなかった。遮るのも気を遣い透明のお風呂を指差すミゼリを見守った。


「ミ、ミゼリちゃんありがとう」

「はい! アリシアの人たちは凄いです。ミゼリも練習で一つ作ったんですよ!」


 クロユリ所長が言ったミゼリは天才という言葉をレオナは思い出した。


「ミゼリちゃん。大人顔負けなんだね」

「そんなことないです……ミゼリはまだまだなの。でもね、おっきくなったらもっと凄いの作るから楽しみにしててね」


 笑顔なミゼリにつられてレオナも笑っていた。物を作る楽しさをレオナも理解している……そのものづくりがアリシアにとっても経済に繋がってて羨ましいとさえ思った。レオナが作った本と比べたら影響力が全く違う。


 その後も四人は色々な作品を見て展覧会場から外に出た。レオナは最後にクロユリ所長へ挨拶へ向かい軽く雑談を終えて帰りの馬車を手配してもらった。その待ち時間でミゼリが見せたいものがあると言って研究室へと手を引かれた。


 ミゼリは専用の部屋を与えられており日頃から自由に魔石を触っている。様々な色の魔石がある中で一際大きなプリズムが机の上に置いてあった。ミゼリの背丈より小さいが白と黒の二つをレオナへ見せてくれた。


「このプリズム見ててね」


 ミゼリはそう言ってレオナが見ても良くわからない機械を動作した。よく見るとプリズムが大きなアーチ状の枠に繋がっている。くぐり抜けきれる大きさの空間に白い靄が溢れた。もう一つの枠には黒い靄が浮き出ている。


「この白い方をくぐるとー」


 そう言って軽い足取りでアーチへミゼリは歩みを進めて白い靄を通り過ぎると――黒い靄から姿を現した。


「凄いでしょー!」


 アーチは数メートル離れていて目の前で起きた現象を説明するなら一瞬で移動している。この技術を応用すれば家の扉一枚で何処の部屋にも行ける想像をレオナはしていた。いつでもロードの屋敷へお邪魔することも出来る!


「ミゼリちゃん凄い!」


 この技術の凄さをレオナは理解していたがロードにはピンと来てなかった。


「白から黒に移動するってことだよな?」

「そうよ。ほら、ロードも白いのに入ってみて」


 レオナが背中を押してロードを白い靄に押し込むと黒い靄から出てきた。


「変な気分だな。でも、移動するだけだろう?」


 素直な感想を述べたロードにミゼリは悪戯に笑いながら説明した。


「お兄ちゃん。オフィキナリスからアリシアまでどれくらい移動に時間を使いましたか?」

「数時間……二時間だったか?」

「ですよねー。もしもですよ? もしもオフィキナリスでコレをくぐったらアリシアに到着するとしたら一瞬です!」

「なるほど。そいつは凄いな……移動の手間が省けるってことか」


 ロードも凄い事だと認識し始めていた。


「でもまだ実験段階なのですよ。仮にワープゲートってミゼリは呼んでるの! まだ白から黒に移動出来ても逆が出来ないのです。だから、この二つを混ぜて上手いこと行き来できるようにしたいの。あと、結構高い魔石だからお金も必要で……使う魔力も多いから適した魔石探しもしてるのです」


 レオナはこの技術が確率した未来を想像した。他の国では魔物が現れるけれどオフィキナリスでは殆ど目撃例が無い。だったら、オフィキナリスに住んで他国に仕事へ向かう事もあるんじゃないかと考えた。もしもそうなるならオフィキナリスはもっと大きな国へと姿を変えるだろう。


「魔石ってのはどうやって手に入れるの?」


 この技術を完成させるために必要不可欠な魔石がレオナは気になっていた。


「えーっと。今は主にジェネラルっていうお国から仕入れています。ガルド炭鉱ってところから魔石が見つかってるの。丁度、地下二階が出来たから新しい魔石が見つからないか楽しみ!」

「そうなんだねー。早く見つかったらいいね」


 他国の事を殆ど知らないレオナはジェネラルが採掘にも力を入れている事を初めて知った。オフィキナリスでも魔石が取れればアリシアの技術発展に貢献出来る可能性も考える。


「今度ね。クロユリ所長とジェネラルに行くの! そこで……ドワーフ? っていう種族の人たちが居て鍛冶屋さんなんだけど魔石に詳しいみたいだから沢山お話を聞くんだ―。クロユリ所長がドランって人とミゼリは仲良くなれるって言ってたから楽しみ!」

「良いお友達になれたらいいねー」


 遠足を楽しみにする子供のようにはしゃいでいたミゼリがレオナは可愛くて仕方がなかった。


「あ、来たみたい」

「はーい。ミゼリちゃん。今日はありがとう」

「うん! お姉ちゃん達もまた遊びに来てねー」


 ミゼリと別れを告げて馬車に乗りオフィキナリスへの帰路へつく。会場を見て疲れたのかレオナが船を漕ぎ始めロードとメアリはそれを見守っていた。

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