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無期懲役


 メアリはパンを軽く焼いて野菜や卵を挟んだ手軽に食べられるサンドイッチを用意した。


 そして、ティーカップを皆の席に置いて紅茶を入れる。この紅茶に使用している茶葉はジェネラルという国へ第二王女のルナが依頼で向かいお土産として持ち帰った物だった。


 メアリは重い空気を無視して召し上がれとレオナに伝えて側に立っていた。


「ふぅ……それでロードさんはどちらに住んでいたの?」


 ステラはロードの素性を聞き出す為に住んでいる場所を尋ねた。王都オフィキナリスは城を中心に街が広がっている。もしも、空から見下ろす事ができるならば丸い形に広がっていた。中心区には王族と貴族が主に住んでおり北区は農業を中心とした区域となっている。区域によってどういう生活を中心にしているのかある程度の予想が出来た。


 しかし、ロードは想定外の答えを出す。


「確か……西の」


 ステラはロードが言い終わる前に西という言葉から商業施設が並んでいる風景を想像した。西区はものづくりをするために大きな建物も多い。


 衣装や家を作る材料の加工場がステラの頭には浮かんだ。そういうところで目の前の男が働いている想像は出来なかったが、物作り関係となればレオナと繋がりが生まれても不自然じゃない。


「森だな。西の外れにある森がなんて呼ばれているか知らないがその森に屋敷があってそこに住んでた」

「オフィキナリスの外で生活していたってこと?」

「そうだな。王都には滅多に顔を出さない」


 ステラの顔を見てあの態度を取った事に対して納得行く答えだった。王女の顔を知らなくても説明は着くので今度はどういう仕事をしているのかステラは気になった。森で木材を仕入れて材料を卸したり自分の手でテーブル等を手掛けている職人の可能性を考える。


「では、お仕事は何をしているのかな?」


 レオナは二人のやり取りを見ながら姉もロードに興味があるんだと思いつつ見守っていた。大人しくメアリが用意してくれたサンドイッチをパクパクと食べている。


「仕事……? 俺は特に何もしてないぞ。趣味として本を読んでるくらいだ」


 丁度ステラは紅茶を口に含んでいた事もあってロードの言葉で咳き込んだ。


「ステラお姉さま!? 大丈夫?」

「ごほっ……えぇ、大丈夫よレオナ。いや……大丈夫じゃないわよ。何もしてないって大問題じゃない? ロードさんはおいくつなのかしら?」

「年齢か? もう覚えてないな。生まれてどれくらい経ったって意味なら数百年か? 王都オフィキナリスが出来るまでは本当に暇だったな」


 ステラは頭を抱えた。


「レオナちょっと来なさい」

「うん」


 ステラは立ち上がりレオナの手を引いて客室の外に出た。ロードは手持ち無沙汰となったので食事を始める。


「あの人ってどうなの?」

「何か凄いよね」


 ステラが曖昧な質問をしたせいもあるが、レオナからも曖昧な表現で帰ってきてしまった。数百年生きた人の話を聞いたこともない。つまり、この場で冗談を言っているとしかステラには思えなかった。


 仕事もしていない。話も通じない……そういう男を連れてきたレオナに対してステラは悩んだ。


「百歩譲って……えぇ、レオナの交友関係は自由で良いと思うわ。それで客室を与えているってことは、暫く住むのよね? 期間はどれくらい?」

「えっとー……考えてない」


 無期限で一年前に軽く会った男を城へ……ステラはレオナの話を聴いてこのままじゃ駄目だと危機感を抱いて一つ提案した。


「とりあえずレオナ。冒険者ギルドでステータスプレートを貰ってきなさい。ルナみたいにレオナが冒険者を雇っていて客室を貸しているという方が皆にも説明がつきやすいわ」


 客人扱いなので、食事の用意をする使用人も納得いくだろうとステラは判断した。そして、出来るならちゃんと働く方が良いと冒険者を提案した。


 他国の冒険者はダンジョン攻略や魔物討伐をメインに仕事を請け負っているがオフィキナリスでは警備やお手伝いが基本となる。北区の畑仕事に人手が必要なら冒険者へ依頼を出す事も多々あった。


「この後に冒険者ギルドへ言ってみることにする」

「絶対にメアリも連れて行きなさい」

「メアリって今日の午後は忙しくなかった?」

「レオナを最優先にするから心配しないで」


 ステラがそう言って扉を開けた。ロードはむしゃむしゃと野菜を齧っている。


「ん? どうかしたか?」


 ステラの視線が気になったロードは問いかけた。


「何でも無いわ。メアリは午後レオナについて行きなさい。私はこれで仕事に戻る」


 まだ手を付けてない皿を抱えてステラは部屋を出ていった。朝の事を謝ろうとしていたが上手く行かず妹の見る目を疑っている。メアリを監視に置いて暫く放置するとステラは決めた。


 一方、客室に取り残された三人は顔を見合わせている。


「紅茶のおかわりをお願い。あとこの後は冒険者ギルドに行ってロードを冒険者として登録するわよ」

「俺が冒険者になるのか……」


「そう、とりあえず身分を保証して貰いましょう。森で一人暮らししているよりも、オフィキナリスの冒険者って言ったほうがスムーズに行くでしょ」

「あんたがそう言うならいいよ。なろうか」


 ステラの言動からメアリは自分が監視役ですかと察っする。


 ロードと名乗るこの男がレオナさまに変な気を起こしたらどうすればいいのか少しだけ考えてると……簡単に答えが出た。


 悪者なら殺してしまいましょう。元冒険者のメアリは暗殺が得意だったので過去を思い出していた。


「メアリ何か良いことあったの? にやついてるわね」

「いえ。何でも無いですよ。お片付けをしますので、その後に冒険者ギルドへ行きましょうか」


 メアリが片付けを始めた。


 ステラに警戒されているロードは野菜よりもお肉が食べたいと考えていた。

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