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妹が彼氏を連れてきたのかもしれない


王都オフィキナリスに着いたロードは先導するレオナの後を追っていた。


「本屋くらいしかいったことないな」

「へぇー、他の国と比べてこの国は技術が進んでて割と凄いのよ?」


 レオナはそう行って公園の水飲み場に駆けてボタンを押すと水が流れる。


「井戸でわざわざ汲む必要もないの。便利で国民の生活水準も上がってて移住する人は右肩上がりなの。それに、他国より魔物が現れない地域で安全みたいよ?」


 ロードは水を一口飲んだ。


「俺は水が嫌いらしい」

「えー、美味しいのに」


 ロードは城へ向かって行く道中の売店や人々を見てレオナに尋ねた。


「みんなはこの時間に何をしてるんだ?」

「んー。お買い物とかご飯の帰り?」

「あぁ、食べて帰るのか」

「何を気にしてるの?」


 レオナが生活しているオフィキナリスの光景は日常で違和感は無かった。普段この国を歩かないロードが感じている事に興味を持つ。


「なんか変な感じだ。言葉にするのが難しいな……」

「意味がわからないわね」

「あぁ俺も分からん。だけどそう感じたんだ。俺は本屋くらいにしか行かないけど、大通りは明るい感じがしたけど全てがそうじゃない」


 公園を後にして二人は歩き進めた。ロードの言葉を聞いてレオナも周りを見ながら何かを考えて言った。


「んー、やっぱり人が多く通る道は光が多いのよ。人が少ない道とか木が多かったら光で照らす事も少ないはずよ。一応、魔力を使って明るくするからね?」

「……そうだな。そういう話なら城の中は明るそうだ」

「えぇ、中は広いし明かりも多いわね。使用人も沢山いるし警備の人だって多いわ」

「まぁ、俺とは関係のない世界だと思うから遠目に見るさ」


 ロードの言葉を聞いてレオナは自分の素性を話していない事に気づいた。今向かってるのは自分の家である城になる。真っ直ぐと歩いている道はもちろん城へ続いていた。


「……」


 先程とは違い表情が暗くなったレオナを見てロードが尋ねた。


「どうした?」

「あはは。えっとー、そうね。説明するより見たほうが早いわ。黙って私についてきなさい!」


 レオナの言葉に従ってロードは無言でついていった。城の前には様々な服装をした人達が居たがすんなりと二人は中に入っていく。レオナはロードのリアクションを期待していたが何も無くそのままレオナの後ろを着いてきていた。


 城の敷地内だけではなく扉を越えて中に入り使用人の視線を感じる中でロードはとうとう口を開く。


「黙っていたがそろそろいいか? 城ってやつは自由に入れるもんなんだな」


 レオナは城内を見渡しているロードに対して小さく吹き出しながら伝えることにした。


「私は一応ね。第三王女のレオナ・オフィキナリスだったりするの」


 突然の暴露にロードはいつもの調子で返す。


「知らなかったな」

「ってそれだけ?」

「あんたが王女だろうが俺には関係ない」

「そ、そぉ」


 思っていた反応とは違ったのでレオナの方が驚いていた。そんなやりとりをしていると使用人――レオナ専属メイドのメアリが顔を出す。


「お夕飯にはまだまだお時間がありますよ。短い家出でしたね」

「そうね。お昼も食べてないわ。何か無いかしら? あと、こちらの方に客室の用意をお願い」

「では、こちらに案内させていただきます」


 メアリの案内にしたがって客室へと向かった。自分の仕事をしている使用人とすれ違った時に好奇な目線を浴びて客室へと到着する。


「こちらをその……」


 メアリは言葉に詰まってロードを見た。


「なんだ?」

「いえ、そのお名前を伺ってもよろしいですか?」

「ロードだ」

「では、こちらをロードさんはご自由にお使いください」


 整理整頓の行き届いた部屋を見てロードは自分の寝室より広いなと零して中央にある椅子へと腰を下ろした。


「メアリ。何かつまめる物を持ってきて」

「少々お待ち下さい」


 そう言ってメアリは去っていった。


「この部屋は自由に使ってもらっていいわ」

「ありがたい。でも、どうしてそこまでしてくれるんだ?」


 至極単純の問にレオナは困ってしまった。一年ぶりにあった知り合いに宿を与える理由を用意していない。ましてや親密な仲でも無く少しだけ話しをしただけだった。


 そこでレオナは苦し紛れの言葉を紡ぐ。


「困ってたんでしょう? 家が不便になったみたいだし。私はそれを助けただけよ。その……要らないお節介だったかしら?」

「いや、助かるよ。城に入る事もオレ一人じゃありえなかったしな。そうだ、あんたも何か困った事があったら俺に言ってくれ。出来ることならなんでも手伝ってやろう」

「分かったわ。けど、手伝えるようなものってあるかしら……」


 メアリが居なくなって数分後に軽い足音を鳴らして誰かが客室の前で立ち止まった。


「レオナなんで客室にいるのって……誰?」


 扉を開けて中に入ったステラがロードを見て固まった。


「俺はロードだ。あんたは?」


 先程の経験を活かしてロードは自分の名前を告げた。


「あんたって……私はステラ。レオナの姉よ」

「ステラお姉さまはどうしてここに?」


 ステラはロードの態度が気になったのか普段レオナに見せない顔をした後に大人の対応をした。そして、レオナの疑問に答える。


「メアリに聞いたらレオナが此処に居るって聞いて……お客さんが居るなんて話は聞いてなかったの。少し驚いたわ」

「ロードが困っててお部屋を用意したの。ステラお姉さまこそ大丈夫?」


 レオナは今朝忙しそうにしていた姉を心配したがステラにとって今はそれどころじゃなかった。


「困ってるって言ってたけど……二人はどういう関係なのかしら?」


 レオナは今まで異性を城へ招いたことはない。基本的にこの客室は他国の遣いを泊める等の用途で使っている。キングが倒れている今は全面的に他国とのやり取りを取りまとめているステラが話しを聞いていないということは、そういう客人では無いと察していた。


 それを考慮して考えられる可能性はレオナのボーイフレンド。ステラの想いとしては自由にレオナは過ごして欲しいという前提があるが、少し相談があっても良いと考えていた。


「えっと……その……」


 レオナは言葉に詰まりロードとの関係を答える事ができない。その様子を見てロードが変わりに答えた。


「ただの知り合いだ。俺が起きたら家に来たんだよ」

「家にレオナが来た? いつからなの?」

「昨日……いや、一年前って言ったほうがいいか」


 そう言ってロードがレオナを見て頷いていた。


 知らぬ間に男性の家へ妹が通うという情報にステラは混乱していた。いずれ妹も……自分も何処か素敵な方とお付き合いするとは思っていたが色々な事が重なりすぎて処理が追いついていない。


 ステラは吟味するような視線でロードを観察しているとメアリが現れる。


「お持ちしました。先程すれ違ったステラさまもいらっしゃると思い、全員分を用意いたしました」


 食事を持ってきたメアリがテーブルへ並べて午後のお茶会が始まった。

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